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虚構の久内 vs リアルのカヤノン
月曜。
午後の講義が終わった後、久内さんとカヤノンと僕の3人は、学食隣のカフェスペースで ”朝顔の露” を舐めるように読んだ。そしてスマホで、"motto" の投稿小説もちらちら見ながら分析する。本の方は、"motto" の投稿小説と似通ったタイトルの文章と、後は2編の、やはり歌のような短い文章で構成されていた。挿絵を入れても50ページほどの薄い本なので、同人誌集のような趣もある。
「ねえ。"motto" の小説をレビューしてみたら反応ないかな?」
「え。何て書くの。”盗作ですか?” とでも書くの?」
「そんな訳ないじゃない。素直にレビューするんだよ。だって、矢部っちはほんとに感動したんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、レビューしなよ」
「ちょっと待ってよ。矢部ちゃんもカヤノンも行動がまるでミステリ小説だよ。もっと現実的に行こうよ」
一番虚構っぽい存在の久内さんからこんなことを言われた。カチン、ときたカヤノンが応酬する。
「現実的って、どうすんのよ」
「行くんだよ」
「どこへ?」
「矢部ちゃんち」
「は?」
反応したのは僕だけだった。




