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第二章  伊原賢一という男について

 その後、伊原賢一の亡骸は、司法解剖が行われてから実家のある三重県へと送られていった。通夜と告別式は実家の方で行われることになった。

 その告別式に何故か瑞希が参列することとなった。瑞希の話を要約すると、そもそも後輩の広田が参列することになっていたが、広田が見知らぬ土地に一人で行くのが心許ないということになり、瑞希が付き添っていくことになった。

 実を言うと俺も誘われたのだが、丁重に断った。あんまりああいう場には行きたくはない。それに、俺は俺でやりたいことがあった。

 羽音駅で喪服姿の二人(現地で着替えればいいのに、既に着込んでいる)を見送ってから、俺は俺の行動を起こすことにした。

 それは伊原賢一という男についての調査であった。


 最初はスルーしようと思っていた。しかし「あること」がきっかけで、俺の好奇心にスイッチが入ってしまった。

 まず俺は伊原賢一という男を知ることにした。

 色々な学生、先生方の協力を得ることができ、一応の人物像が浮かび上がってきた。

 まず伊原賢一は俺と同じ二回生だが、一年浪人しているそうである。つまり歳は俺より一つ上。またこの大学には奨学金制度を利用して入学しており、講義の後はバイトに勤しんでいるようである。サークルはボランティアクラブに所属しているようだが、殆んど顔を見せておらず、幽霊部員扱いだそうである。見た目はちょっと軽そうな感じに見えるそうだが、実際はいたって普通、どこにでもいそうな学生のようであった。

 ただこれはあくまで大学内での話……。

 夕方のワイドショーで、伊原賢一についての時間が割かれていた。そこには、大学内での評判とは全く違う人物像が浮かび上がっていた。

 大学外での伊原賢一の評判は、必ずしも良いとは言えないものであった。高校時代からガラの悪い連中とよくツルんでいたようで、また女性関係の評判は悪く、三角関係のトラブルは何度か起こしているようであった。

 家族は実家にいる母と同じ大学に通う妹の二人。父は何年か前に病死しているそうである。伊原賢一の妹、伊原薫は大学一回生。現役で入っているから兄とは二つ違いということになる。兄とは違い非常に真面目な性格で友人も多いそうである。二人で一緒にいる姿も目撃されており、兄妹仲は良いという話である。しかしそんな兄が死んでしまったのだ。伊原薫の心中察するに余りある。

 警察の方は、伊原賢一の交友関係について重点的にあたっているようである。また夜のニュースで、伊原賢一がつい最近、三角関係のトラブルがあったと報じられており、犯人逮捕は時間の問題という感じであった。


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