第3話 そうだ、ダンジョンに行こう!
自分のクラスのドアを開けた鉄閃は、無遠慮に向けられる視線に辟易としていた。
教室に入った瞬間から、教室内の全員が鉄閃に目を向けている。
好奇の視線、疑問の視線、憤慨しているような視線等様々な視線が鉄閃に注がれている。
もう少しで10時になろうというとき、誰かが教室に入ってきた。
それは風紀委員会委員長の城風 千だった。
「あっ、鉄閃君!」
彼は鉄閃を見つけると、親しげに片手を挙げて近づいてきた。
「鉄閃君もAクラスだったんだね」
「えぇ、まぁ」
千が鉄閃に話しかけたことで、向けられていた視線が余計にひどくなったような気がしないでもないが、それについてはもう諦めている鉄閃だった。
千があれこれと鉄閃に聞いていると、教師が入ってきた。
「うーす、じゃあホームルーム始めんぞー」
だらしない格好をした気だるげな親父が入ってきた。
「知ってるやつらのが多いだろうが、知らない約1名のために自己紹介してやる。お前らの担任の、葉山 駿平だ。ま、宜しくな」
そこから始まった恒例のクラスメイトの自己紹介。
は、割愛しよう。
ただ、千が皆の前で鉄閃との模擬戦のことを口走ったとだけ伝えておこう。
その結果。
「ねぇねぇ鉄閃君、千と模擬戦するってホント?!」
「え、えぇまぁ」
「へぇー、すごいんだねー」
「なぁなぁ、そんなに強いのか? お前って」
「どうでしょう、やってみないとなんとも」
とか、普通に話しかけてくる者や
「けっ、どうせ負けんだろーよ」
「ですよね」
とか、突っ掛かってくるようなことを言う者など様々だった。
(めんどくせぇぇ!)
(お前が武器なんぞ振り回すから悪い)
(しょうがないだろ、体動かしたかったんだから)
(場所を考えろ、場所を)
(ぐぬぬぬぬ)
(はぁ……ったく)
ヴァールトに愚痴るも、暖簾に腕押し。
全く、相手にされなかった。
(もう帰るし!)
(勝手にしろ)
今日は授業といった授業も無いため、早々と帰ろうとすると、千からお呼びだしが掛かった。
「鉄閃君、一緒にダンジョン潜らない?」
「え……」
「よし、そうしよう!」
そうしてズルズルと校内にある迷宮に、千によって引きずられて行ったのだった。
† † †
世界各地にある魔法師学園の各学園の校内には1つだけ、迷宮がある。
学生の自主的な訓練のためだ。
そのため、出てくる魔物も弱い。
そもそも、迷宮とはなんぞや。
迷宮と言うのは、世界各地に突如として現れる洞窟のようなものであり、中には魔物となぜか宝箱が置いてある。
その宝箱には、傷薬や武器防具や様々な道具類が入っている。
そして、迷宮の最奥にはダンジョンボスが居て、それを倒せばクリアとなり、その構造を変える。
迷宮を破壊するには、最奥にあるダンジョンコアを破壊すれば迷宮は壊れる。
迷宮内に居る魔物は、ダンジョンコアによって呼び出されるため、基本無限的に出てくる。
「じゃ、行こっか。あれ、防具は?」
「このパーカーです」
「へー、そのドクロパーカーすごいんだね」
「ソーデスネー」
「あれ、なんか棒読み?」
「ナンデモアリマセーン」
「そう?」
「ハーイ」
「じゃ、行くよ」
「ハァァァァ……」
深い深い溜め息を吐いて、ズンズンと進んでいく千の後をトボトボと付いていく鉄閃であった。