第2話 クラスへ
「君さ、僕と模擬戦してみない? 大々的に宣伝してさ」
「はぁ?」
あまりにも唐突な先輩の言葉に驚きを隠せない鉄閃。
「まぁ、やりたくないならしょうがないよね。君が勝手に訓練場に入った事は処罰しないといけないけど」
「処罰……?」
「そ、こう見えても僕、風紀委員会委員長なんだよね」
「チッ」
何でこんなところに風紀委員長が居るんだという疑問と脅してきやがったなコイツ、という2つの感情からつい舌打ちが出てしまった。
「舌打ちしないでよ、君が僕と戦ってくれればいいんだからさ」
「分かりました、分かりましたよ。たたかえばいいんでしょう、戦えば」
「うん!」
鉄閃が諦めて頷けば、彼は実に嬉しそうな笑顔で頷いた。
「僕は、風紀委員会委員長の城風 千だよ。宜しくね」
「壱崎 鉄閃です」
「じゃあ、もう入学式も終わったみたいだし、自分のクラスに行きなよ」
「そうさせてもらいます」
入学早々に一波乱ありそうだな、と思いながら鉄閃は自分のクラスへと向かうため、クラス分けの紙が張り出されている本校舎の一階職員室前へと向かった。
† † †
魔法師学園は、魔術師学科と戦士学科の2つに分かれている。
魔術師学科は、魔法を主体に戦う者を育成する学科で、戦士学科は主に武器を使って戦う者を育成する学科だ。
そもそも、魔物や魔族には普通の攻撃は効かない。
魔力を用いた攻撃しか通用しないのだ。
だから、物理で攻撃する際には剣や槍を魔力でコーティングしないといけない。
銃弾も魔力でコーティングすれば通用するが、コーティングしている間中、魔力の最大値が減った状態となるために、銃弾の1発1発をコーティングしておくわけにもいかない。
その点、鉄閃の銃剣は魔力を弾丸状にして打ち出すため、効率がいい。
鉄閃は、自分が本来的に持つ魔力とヴァールトが持つ魔力の両方を使うことが出来るため、通常の人よりも魔力量が格段に多い。
それも魔力弾を射つことを可能にする要因だ。
魔力は自然に回復していく。
しかし武器をコーティングしていれば、最大値が減った状態となるために満タンまで回復することはない。
その点に於ても魔力弾は有能だ。
コーティングしているわけではないので、自然に魔力が回復していくからだ。
まぁ、刀身の部分はコーティングしていないといけないのだが。
閑話休題。
鉄閃が所属するのは戦士学科。
鉄閃が使える召喚魔法は、使い方も分かっているし他に使える魔法も無い。
まぁ、あるにはあるのだがアメリカに居るときに散々訓練してシューベルトにもお墨付きを貰っているから構わないだろう。
魔法師学園・池袋校の戦士学科は、25人ずつA~Fまでの6クラスに分けられている。
Aに近ければ近いほど有能とされている。
因みに鉄閃は、Aクラスだ。
シューベルトが推薦したらしい。
Aクラスには1年生は鉄閃一人しか居ない。
「はぁ、めんどくさそうだな……」
確実にめんどくさいことになりそうなことが分かっている鉄閃は、重い溜め息を吐いて教室を開ける。