透明人間の正体 4
事件解決から一時間後の午後九時。警視庁で東の取り調べを行った。供述によれば共犯者は存在するがそれが誰なのかは分からないようだった。そして一番の収穫は、東があのサイトのユーザーだということだった。早速彼のパスワードを入力したがアクセスすることはできなかった。
東の取り調べが行われていた頃大野は北条に会いに来た。
「すみません。無茶ぶりして」
「まあ。あの会社のシステムへのハッキングなんて無茶ぶりよく考えましたね」
「パソコンに詳しいという噂を合田警部から聞きましたので使わせてもらいました」
北条は思い出した。
「そうでした。あの会社のセキュリティーシステムをハッキングした奴は凄いです。気をつけたほうがいいでしょう。僕の腕でも一分しかハッキングできませんでしたから」
日付が変わった。八月九日午前零時。北条は例のサイトにアクセスした。画面をスクロールして面白い書き込みをチェックした彼はある書き込みを見つけて削除した。ちょうどその時メールが届いた。
『レポートはまだか』
北条はあらかじめ書いたレポートにある文章をつけたした。
『ハッキングの腕前は折り紙つき。合格』
そのレポートを送信した。その後今朝届いた黒い封筒を開けた。
『聖戦。十月十三日』
北条はその手紙を読み笑った。ちょうどその時携帯が鳴る。
「ラグエル。レポートは届いただろう」
『はい。劇場型犯罪の捜査。改め適性試験の試験官。お疲れさんです。では業務連絡です。一度しか言いません。あなたの場合聖戦は参加自由。以上です』
「それより交換条件は守ってくれよ」
『はい。だから参加自由なのですよ』
電話は切れた。北条は改めて手紙を読む。
その手紙は新たなる劇場型犯罪の始まりだった。始まるのは二カ月先。無情にも事件開始までの時間は過ぎていく。この事件を止めることは誰にも出来ない。




