透明人間の正体 3
その後東はパスワードを木原に伝えた。
「一五七六」
木原は急いでパスワードを入力する。タイマーを見ると残り時間は一分だった。
そして爆弾は解除された。
大野は東に質問する。
「あなたは倉庫にあった織田信長の肖像画の埃を掃ったのではないのですか。」
東は頷いた。
「犯行直前に掃いました。あの倉庫に肖像画があったとは思いませんでした。父の遺品からは見つかりませんでしたから。それにしても安土城が築城された年をパスワードにするなんて皮肉だな。父は織田信長が好きだったから仕方ないか」
「では椎名社長はなぜ肖像画を捨てなかったのでしょうか」
「知りませんよ」
大野は推理を話す。
「これは私の推理です。根拠はありません。椎名社長は忘れることができなかったのでしょう。あなたの父親の存在を。そしてあなたの父親を超える社長になった時に肖像画を飾ろうとしていたのかもしれません」
木原は大野の推理に付け加える。
「開かずの間の正体は椎名社長の戒めの心だった。だから捨てることは出来なかった。真相は本人しか知らないことですが」
東は何度も呟く。
「私は無駄な犯罪をしてしまった。真相を知っていれば大事件は起こらなかった」
まもなくドアが開き警察が到着した。東は警察に出頭した。その後に捜査でコーヒーの缶から辻の指紋と毒物反応が検出された。書類送検もスムーズに終わるだろう。こうして長い三時間は幕を閉じた。時刻は午後八時である。




