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大野達朗警部補の初仕事
登場人物
稲葉拡 株式会社センタースペード専務
川上早紀 株式会社センタースペード部長補佐
東佳織 平社員
辻正夫 警備員
佐野勇作 警備員
加藤一成 株式会社センタースペード元次長 半年前リストラされる
椎名博文 株式会社センタースペード社長
海原三郎 北海道警捜査一課警部
八月八日。その日木原と大野はある殺人事件の遺留品を返却するために株式会社センタースペードを訪れた。大野にとってこの仕事は警視庁に異動して初めての仕事だ。
木原は受付で自分の身分を名乗る。
「警視庁の木原です。社長の椎名さんに会わせてください。裁判が終わったので遺留品を返却しなければならないのです」
「しばらくお待ちください」
受付の女性は内線をかけた。そしてメモを取り始めた。
「社長は札幌に出張です。ただ社長代理の稲葉さんならいますが」
「ではその稲葉さんでも構いません」
もしも明日に出直していればこの二人の刑事はこれから起きる大事件に巻き込まれることはなかった。大野達郎警部補最初の事件は水面下で進行している。二人はこのことを知る由もない。




