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「2005年、渋谷。JKサーファーの1日」

作者: 元黒い子
掲載日:2026/05/14

2005年の渋谷、バイト店員の渡辺 春香が学校行事で遅れ、アマチュア契約先のサーフショップに小走りで歩き出す。


・2003年(中2)に「NSA全日本サーフィン選手権大会 ジュニアクラス」優勝。2004年の高校入学と同時にROXYのアマ契約が決まる。現在は店内の看板娘兼ライダーとして活動中。


・肌:日サロでは出せない、潮風と太陽による自然な質感。

・メイク:キャンメイクのブロンズシャドウ + マジョリカマジョルカの「ラッシュエキスパンダー」。リップはメンソレータムのウォーターリップ(ピーチ)。

・髪型・カラー:ミルクティーブラウン。外側は後ろひとつ結び、内側のサイドと後ろは2ブロックで刈り込み。海水によるダメージさえも「サーファーの勲章」として活かす。

・その他特徴:Baby-G(白)。爪は短く整え、OPIのヌードカラー。

・トップス:白シャツをゆるく着る。袖は軽くまくる。

・インナー:ROXYのスポブラ柄キャミをチラ見せ。

・羽織り:紺ブレを肩掛け(夏は持たない)。

・ボトム:スカートは腰履きで膝上。

・靴・ソックス:VANSスリッポン(白)またはAIR WALK。ソックスは紺ハイソを“やや下げ目”にして抜け感を作る。

・スクバ+ショッパー:OUTDOORの黒リュック + ROXYショッパー。ショッパーにはムラスポのステッカー。

・その他:教室では“黒い子”としてすぐ見つかる圧倒的な焼肌。

2005年、夜の渋谷駅。

文化祭の準備で学校を出るのが遅くなり、バイトの出勤時間はすでに10分過ぎていた。


「うわっ……マジやば」


白のBaby-Gを見た瞬間、胸がヒュッと冷える。駅前では外国人のアクセサリー露店が並び、

甘い香水と排気ガスが混ざった“渋谷の夜”の匂いが漂っていた。


Q-FRONT前の信号待ち。視界には桃色に発光するHMVの巨大看板、三千里薬局の青いネオン。

(ああ、今日も渋谷だな)と、少しだけ気持ちが落ち着く。


信号が変わり、AIR WALKのソールを鳴らしながら道玄坂を駆け上がった。


店内に一歩足を踏み入れた瞬間、外の排気ガスの匂いはすっと消え、

代わりにサーフボードの樹脂とSEX WAXの甘いココナッツの香りが鼻をくすぐる。


大音量のユーロビートが床を震わせる。

(ああ、この感じ。帰ってきた)と胸の奥が少しだけ緩む。


「遅いぞ、春香! ライダーが遅刻してどうすんだよ〜」


奥から先輩が笑いながら手を振る。“店長怒ってるぞ”というお決まりのジェスチャー。


「ごめんなさーい!」


両手を合わせて控室へ滑り込む。

AIR WALKを脱ぎ、深〇高校の白シャツを脱ぎ、ムラスポ指定のポロシャツに着替える。


お気に入りのROXYショッパーとOUTDOORの黒リュックをロッカーに押し込み、ガシャリと扉を閉めた。


タイムカードを差し込むと、ガチャン、と鋭い音が響く。


控室のドアを開け、フロアの大音量に負けない声で宣言する。


「春香、入りまーす!」


店長は「仕方ないな」という顔で、2Fを親指でクイッと指す。


春香は軽く頭を下げ、木製の階段を上がってサーフボードコーナーへ向かった。


2Fには、日焼けしたロン毛のサーファー、初心者っぽい子、セックスワックスの匂いを嗅いで笑うギャルたち。


ふと壁を見ると、自分のライディング写真が大きく引き伸ばされて貼られている。

右下にはムラスポのロゴ。レジ横には「ROXY/サーフ担当:渡辺春香」。


(……やっぱ恥ずかしい)

誇らしさと照れが胸の奥で同時に揺れた。



同じ年くらいの女性客が、ROXYのボードコーナーをじっと見つめていた。

何か聞かれればいつでも答える準備はあるが、自分からガツガツ行くタイプではない。

(海で育ったし、必要な時に必要なだけ話すのが一番)

それが春香のスタイルだった。


「声かけてみなよ」

「いや、緊張するって」

「本物、強くね?」


そんなヒソヒソ声が聞こえ、視線を向けるとアルバのショッパーを手にする制服姿の二人組。

自分より一、二個下だろう。メイクもまだ慣れていない幼い顔が可愛らしい。


「あ、あの……サーフィンを始めたいんですけど、ボードって何を買えばいいのか……」


春香は自然と笑みがこぼれた。

(ああ、こういう子たち好きだな。素直で、やる気あって)


「アハハ、初心者だよね? だったらウチの『THREE WEATHER』か、

今見てるROXYのファンボードにしときなよ。

長さがあって浮くから絶対そっちが楽だし、値段も手頃だし」


そう言いながら、自分のライディングポスターの横に置かれた

LOSTのボードを指さす。


「ちなみにこれは私が乗ってる『LOSTのRNFラウンドノーズフィッシュ』。

小波でもマジで動くから神ボードだけど、これショートだからね。

初心者がいきなり買ってもペラペラで波に立てなくて心折れるよ?

まずはファンボードで立てるようになってから、こういうのにステップアップするのが一番!」


笑いながら説明していると、ふと自分が初めてボードを買った日のことが蘇る。

(あの時も、店員さんにめっちゃ助けられたな……)


「あと個人的な話だけど、ワックスじゃなくてフロントにもデッキパッド付けた方がいいかも。

ワックスだと車とか部屋が汚れるし、夏はドロドロに溶けるしね。

ただ、フロントにデッキ貼るとパドリングの時に顎が擦れたりするから、そこは好み」


「ナベー、こっち頼む!」


先輩に呼ばれ、「はーい!」と返事してレジへ向かう。

すると、さっきの二人組がスクバを抱えてついてきた。


「あ、あの……サインお願いしてもいいですか?」


差し出されたのは黒ポスカと、半年前の『Fine』。

ページを開くと、ムラスポのボードを抱えて笑う自分が載っている。


(……うわ、これ。まだ慣れないわ)


「うん、いいよ。何かわからないことあれば聞いてね。

週末以外は基本シフト入ってるし」


照れを隠すようにハキハキと答えながら、

見開きの余白に慣れた手つきでサインを書く。

キャップをパチンと閉めて雑誌を返すと、

二人は顔を火照らせて「ありがとうございます!」と頭を下げた。


1Fレジのヘルプを終え、階段を上ってウェアコーナーへ戻ると、

さっきとは別の女子高生グループがROXYの蛍光色の水着を眺めていた。


春香が戻ってきたのに気づいたのか、

一人が友達の肘をツンツンと突き、こちらをチラチラ見てくる。


(Fineの影響力、ほんと凄い……)


すると、先ほどアドバイスした子が小走りでやってきた。


「あの、ウェットスーツの下って普通は何を着るんですか?」


春香は柔らかく笑う。


「あ、普通に水着の子が多いよ。

特に冬用のフルスーツは生地が引っかかって足が入りにくいから、

ビニール袋に足を突っ込んで滑らせるように履いたりする。

あっちにROXYの水着あるから、一緒に見に行こっか?

最近は三角ビキニとかもいっぱい出てて可愛いよ」



客の波も落ち着き、フロアでTシャツを畳んでいると、

2Fレジの先輩が声をかけてきた。


「先週の千葉どうだった? 蒲田の子だっけ? 一緒に行くって言ってたよね」


「ああ、蒲田のThe Surfの七海ちゃんね。

波は落ち着いててあんまりだったけど、チームに参加させてもらって仲良くなったよ」


そう言いながら、ロッカーからauのW21CAを取り出す。

液晶をくるりと回転させて先輩に見せると、

二人で笑顔でハングファイブを決めている写真が鮮明に映し出された。


「うわ、楽しそうじゃん。いいね〜」

先輩がニヤニヤしながら肘で軽く突いてくる。


閉店準備が進み、ガシャガシャとシャッターを下ろす音が響く。

金属の振動が夜の渋谷に溶けていく。


「この後、みんなでご飯行こうって店長が言ってるけど、どうする?」


「了〜。親にご飯いらないって言っとく」


春香は控室に戻り、タイムカードをガチャンと押す。

ムラスポのポロシャツから深〇高校の制服へ着替え、

AIR WALKの紐を結び直し、スクバを肩にかけた。


シャッター前には店長と先輩たちが集まっている。


「だけどさ、春香は今日制服だし、あまり遅くまではいられないね」

先輩が少し気遣うように言う。


「なんか……悪いことに誘ってる気がするな」

店長がニヤニヤしながら冗談を重ねる。


「アハハ! 女同士で何言ってんすかw」

春香は笑い飛ばし、みんなで店を後にした。


---


食事を終え、店の外に出る。


「いやー、食ったな……デザートしか入らんw」

「まだ食えるんかいw」


「店長、ごちそうさまでした〜」

「ゴチっす」


店長はポケットからガムを取り出し、

「ナベ、はいガム。帰り気を付けて帰るんだよ」

と渡してくる。


「はい。この時間どこもやってないし」


春香は改めて頭を下げ、駅へ向かおうとした。


その瞬間、すれ違いざまの二人組のサラリーマンが、

制服姿の春香をニヤついた目で見下ろしながら声をかけてきた。


「お嬢ちゃん、それギャルって言うんでしょ?」


(……うわ、めんど)


胸の奥が一瞬だけざわつく。


男たちの不躾な声が響いた瞬間、

店長が鋭く一歩踏み出した。


「あ、やっぱりナベ送ってくわ」


店長は春香を庇うように前に立ち、

そのままタクシー乗り場へ歩き出す。


春香は小さく息を吐きながら後ろを振り返る。

(……助かった。制服で夜の渋谷はやっぱ怖い)


店頭に残ったバイト仲間の一人が、ぽつりと呟く。


「なーんか、ウチらと扱い違くない?」


ショップライダーとして特別に気遣われる春香の立場は、

同じバイトの目には少し複雑に映るのだろう。


文句の混じった声は、週末の夜の雑音に紛れて消えていった。


金曜の夜、22時前の渋谷駅周辺は、

タクシーが次々と人を降ろし、凄まじい人混みで溢れ返っていた。



翌週の月曜朝、授業前の深〇高校2年B組。


「春香〜いる?」


教室の入り口から顔を出したのは、隣のクラスの麻美。

春香の影響で今年からサーフィンを始めた、中学からの友人だ。


「これ返すわ」


差し出されたのは、サーフムービーDVD『YOUNG GUNS II』。


「あれ? もう見たの?」


春香が訊くと、麻美は苦笑いしながら肩をすくめた。


「いやさ、一応見たんだけど……自信無くすわ。

そういえばムラスポってボードのリペア出来んだっけ?」


「ん? 出来るけど、どうしたの?」


「ボード落として、穴空いた……買ったばっかなのに」


「は? アル・メリックだっけ? どれくらい?」


麻美は親指の爪を立てて見せる。


「親指の爪くらい。穴っていうか凹んで、中のスチロール出てる……高かったのに」


春香は思わず吹き出した。


「ケリーも泣くよw

でも、そのくらいならリペアキットで直せるよ。何なら直してあげようか?」


麻美はホッとしたように息を吐く。


「まぁ綺麗なボードの方が初心者って感じで違和感あるしさー。

リペア跡が出来て、日焼けして黄ばんで来たら……麻美も上手くなってるよ」


「気休めとして受けとくわ……ウチは格好から入るタイプw」


「偉そうに言うなw

もともと麻美はボディボードやってたんだし、すぐ上手くなるよ。グーフィーだっけ確か?」


春香はスクバを机に置きながら続ける。


「来週の週末、藤沢のチームと合流するから麻美も行く?」


麻美は胸に手を当て、わざとらしく頭を下げた。


「お邪魔します、渡辺プロ」


「やめーやw」


教室に笑い声が広がる。


---


放課後、渋谷駅に到着。


駅を降りると、ムラスポのショッパーを持った若い子がチラホラ歩いている。


(もう夏だし、水着でも買ったのかな)


センター街へ向かう途中、Q-FRONT前にはマンバが数人たむろし、アルバのミラーを開いて熱心にポスカで化粧直しをしていた。


街頭スピーカーからはORANGE RANGEの重低音がガンガンに響き、路面のいたるところに踏み固められた黒いガムの跡が点々と広がっている。


SLYやmoussyのショッパーを肩にかけたギャル、タイトなチノパンに尖った靴を履いたお兄系とすれ違いながら、春香はロッテリア → HMV → ファッキン(ファーストキッチン) → マック前を通過する。


ふと上を見上げると、マックの2階の窓際から、白銀メッシュのすさまじいボリュームの盛り髪をした黒肌の子がこちらを見下ろしていた。


彼女は隣の友達を肘で突き、ネイルの長い指で明確に春香を指さしている。


(……相変わらず、この辺は視線がトゲトゲしてんな)


足早にその場をすり抜けようとすると、先週アドバイスした女の子二人が、歩道の向こうから嬉しそうに手を振ってきた。


春香が軽く頭を下げると、周りの友人らしき子たちがヒソヒソと声を上げる。


「ん? あの人誰? 知り合い?」

「なんか芸能人っぽくない?」(……マジでFineの影響力すごい)


---


道玄坂を上がり、ムラスポのショーケースを見ると、

ROXYを前面に押し出した夏仕様のディスプレイに変わっていた。


マネキンにはトロピカル柄の水着、ロゴ入りビーチバッグ、サンダル、ラッシュガード。


(あ、週末にPOP届いてたやつだ)


「おはようございまーす」


自動ドアをくぐると、店長が顔を出した。


「ナベ、早いじゃん。今日は遅刻しなかったねw」


春香は苦笑しながら、エアウォークのつま先を軽く鳴らした。



「――これから、私の大好きな夏が始まる。」


初投稿なのでお手柔らかに

当時を思い出しながらちまちま書いてるのですが、どこか現実のものと整合性がないところあるかもです。

あの頃を少しでも思い出してくれた人がいたのなら私の勝ち!

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