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経理課のお姉さん

作者: ブレインズ
掲載日:2025/12/06

「あのぉ・・・佐藤さん?」

経理課の鈴木さんが、恐る恐る、といった感じで声を掛けてきた。

「はい、なんでしょう?」

「この出張の交通費なんですが」

「ああ、先週のやつですね」

「はい。それが、いつもより少ない様なのですが、・・あの・・もしかしてお間違えでは?」


鈴木さんは、確か三十台半ばのはず。清楚な感じだが、ちょっと地味目。ブラウスのボタンを第一ボタンまできっちり留めて、色気もあまりないのだけれど、何故か気になっている。胸はソコソコあるけど(笑)この会社の先輩だし、26歳の俺相手に、そんなにオドオドしなくてもいいのに、とちょっと思った。


「ああ、それですか。その日は祝日の次の日でしたでしょ?」

「あ・・はい」

「それで、前の日、夕方まで寝ていたのですよ」

「はあ・・夕方ですか」

何を言ってんだ、この男は?と思っているかな?

「はい。そうしたら、今度は夜眠れなくなっちゃって。それで、その出張の日は、寝ないで始発電車で移動したんですよ。どうせ、電車の中で眠れるからって」

「そうなんですね・・・朝早くからお疲れ様です」

「いえいえ・・・それで、いつもは、特急電車の始発駅から乗っているのですが、その日は、特急の途中駅から乗ったんですよ。それで、特急料金が少し安くなったんです」

「まあ、そうだったんですね、それで・・・。なるほど、判りました。お忙しいところ、お手数おかけしてすいませんでした」

「いえいえ、なんでもありません。それより、鈴木さん、すごいですね」

「何がですか?」

「交通費の清算なんて、沢山あるでしょう?一つ一つチェックなさっている、ということですよね?」

「そんな・・チェックするのは当たり前ですよ」

「そうだとしても、多いならともかく、少ないのまでチェックするなんて。鈴木さん、お仕事が丁寧ですね」

「そんなことありません」

ちょっと俯いて、照れたようにはにかむ鈴木さん。

「丁寧な仕事。俺も、見習わなくっちゃ、いけないですね。頑張ります」

「いえいえ、佐藤さんは十分頑張っていますよ。偉い人達がよく褒めていますよ」

「そうですか?でも、もっと頑張ります」

「はい・・頑張ってください。それじゃ、お忙しいところ、ありがとうございました」

「鈴木さんこそ、お忙しいところ、お手数お掛けしました。次からは、清算伝票にメモ書きする様にしますね」

「いえいえ、そこまでして頂かなくでも結構です」

「いえ、間違いがあってはいけませんから。気を付けます」

「そうですか?・・それでは、お手数をお掛けしますがお願いします」

「はい。ご心配をお掛けしてすいませんでした」

「とんでもありません。こちらこそ、お手数をお掛けしました。ありがとうございました」

深々と頭を下げて、自席に戻る鈴木さん。後ろ姿も清楚で、素敵な人だな、と思った。心惹かれた。


 ----------------------------------- 


とある金曜日。この日は、仕事が順調に片付き、定時で上がることになった。

「お先に失礼します」

周りの人達に挨拶して、オフィスを出ると、エレベーターホールに鈴木さんがいた。

「鈴木さん、お疲れ様です」

声を掛けるとちょっと驚いた様にこちらを振り返る。

「ああ・・佐藤さんもお疲れ様です。今日はもう上がりですか?」

「はい、今日は仕事が順調にいきました」

「それは・・良かったですね」

「はい、良い気分で楽しい三連休です。たっぷり寝ます」

鈴木さん、俺の冗談でちょっと笑った。

「そうですね、佐藤さん、普段、頑張り過ぎのところがあるから、ゆっくり休んでくださいね」

「はぁい、ゆっくりします」

楽しく話ながら、オフィスビルを出て駅まで歩く。

「そういえば、俺は、○○線の□□ですが、鈴木さんは、どちら方面ですか?」

「私も同じ方向です」

ちょっといたずらっぽく笑う鈴木さん。なんだろうね。

「佐藤さん、交通費の清算伝票に書いてありますよね」

鈴木さんが種明かし。

「ああ!そうですね。鈴木さんは、社員皆の最寄り駅を知っているのですね?」

「はい・・でも、佐藤さんは・・・気にしているから・・・」

「ん?なんですか?」

最後の方が聞き取れなくて聞き返した。

「何でもありません」

「そうですか・・・」

鈴木さん、何か気になる事を言った様だけど・・・



電車に乗ってからも、色々な話をした。鈴木さん、訥々と話すけれど、普段、接することが少ない人達の話とか、中々、楽しい時間が過ごせた。あまり楽しかったので、もっと鈴木さんと一緒の時間を過ごしたい、と思い、思い切って食事に誘ってみた。

「あの、鈴木さん、俺、途中駅の△△で一旦降りて、駅ナカのレストランで晩御飯食べて帰る予定なんです」

「まあ、そうなんですね」

「はい、なかなか美味しいお店があるので。休みの前の夜ご飯は、いつもそうしているのですよ」

「そうですか」

「はい。宜しかったら御一緒しませんか?奢りますよ」

「まあ、嬉しい。男性と食事なんて久しぶり」

パッと笑顔がはじけた。ドキンとした。誘って良かった。


食事の間も色々話して楽しかった。話の端々から、今現在、付き合っている人はいないらしい。それなら、俺が彼氏になろう。このまま、一緒に朝を迎えたい。素直にそう思った。

「鈴木さん、うちに来ませんか?」

そろそろ会計、といったタイミングで、ダメ元で声を掛ける。

「えっ!・・・・佐藤さんのおうち・・・・・でも・・・うーん・・・・はい、良いですよ」

「ありがとうございます。では、そろそろ行きましょうか?」

「あ、はぃ」

赤くなって小さな声で応えてくれる鈴木さん。


レストランを出た後、そっと鈴木さんの手を取る。

「ずっと前から素敵な人だなって、思っていて。このまま、別れたくないなって、思いました」

「嬉しい・・・・あの・・・実は私も佐藤さんのこと、ずっと気になっていて」

「そうなんですか?」

「ええ、偉い人達がいつも褒めているし、どんな人かなぁ、って気にしていて・・・・」

「俺も嬉しいです。俺達、両想いだったんですね」

「はい。でも、私、佐藤さんより年上だし、かなわぬ夢かな、って思っていました。今日は誘ってくれて、本当に嬉しかったです」

「恋愛に年齢は関係無いと思います。俺も、素敵な鈴木さんだから、彼氏さんがいるのかな?と半分あきらめていましたから」

「嬉しい・・・佐藤さんて、私のタイプなんです」

「俺も、鈴木さんがタイプです」

「もう・・こんなに嬉しくさせて」

俺の腕をギュッと抱く鈴木さん。柔らかいものが腕に当たって気持ちいい。


 ----------------------------------- 


 ・・・・・・


 ----------------------------------- 


目覚めれば、俺の胸でスヤスヤ眠る鈴木さん。寝顔が可愛い。大事にしよう、と心から思った。


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