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第8話 一時の平穏

 4月21日、何でも無いただの平日。

 正樹は1人家で昼飯の納豆そうめんを食べながら、机の上に置いてある原稿用紙を見つめていた。

 それは何故か。

 停学をくらって、反省文書いているからだ。


 停学期間は1ヶ月。

 罪状は器物破損、校内での暴力行為、グリッドの無断使用。

 それ以外に学校で重い罪ってあるのかってぐらい勢揃いした罪状。

 退学になってもおかしくないレベルの罪状だったけど、何故か1ヶ月の停学で済んだのだ。


 美音、凪、そして隼人のせいでえらい目にあったと、自分のことは棚に上げ、3人を責める文章しか考えつかず、筆が止まっていたのだ。


 入学2日目で1ヶ月の停学休みになるとか。

 いったい、何してんだろ。


 くわえ箸で天井を見つめながら、今から書く内容である凪との戦いの後の話を思い出す。


◆◆◆◆◆


 美音は昼休みに起きた出来事について詳しく話す。


 美音が1年生の頃から、ホーグリップ学園には『楓美音親衛隊部』という男子生徒のみで結成された非正規の部活動が存在する。

 親衛隊員の主な活動は美音を陰ながら見守り、支えること。

 美音様はみんなの美音様、というのが親衛隊達が掲げる理念で、美音に近づく男は陰ながら排除していたようだ。

 美音の友達である凪とと因縁があるようで、昔から凪と親衛隊は犬猿の仲だったたらしい。


 そんな美音親衛隊が今回排除しようとしていたのが正樹だったのだ。

 美音と登校し、一緒に飯を食べる男。

 そんな者は親衛隊からすれば殺害対象でしかなかったのだ。


 だけど正樹は美音の弟。

 力ずくで排除というのは美音に嫌われると思い、直接美音に相談するためゴミ処理場に呼び出した。


 親衛隊から「弟と離れて欲しい、くっつき過ぎ」と指摘された美音。それを聞いた美音は


「今まで邪魔して来なかったから放ったらかしてたけど、正樹との時間を邪魔するなら親衛隊なんていらないわよ!!」


 そう言って親衛隊を突き放した。


 1年間美音を想い、見守って来たという自負のある親衛隊は逆ギレして、美音に手を出そうとした。

 そこに犬猿の仲である凪がたまたま通りかかり、割って入ったのだという。


 倒れてた男子生徒達は、美音に手を出そうとしたのを見た凪が蹴散らしたもの。

 美音の破れたスカートと額の血は凪がやったものではない。

 倒れた男子生徒にスカートを掴まれた際に、振り払おうとしたら破れてしまい、離された勢いで壁に頭を激突して怪我しただけ。

 美音の怪我を凪が見ようとしたところに参上したのが正樹なのだ。


「ってことだから、悪いのはコイツら。正樹の勘違いでした、ってあいたたた」


 心配して損したと思い、ちょっとムカついた正樹は美音の横っ腹をつねる。


「途中で言ってくれれば気づいたのに」

「いや、正樹怒って話聞くようなカンジじゃなかったわよ」

「それでもさ、グリッドまで出す必要なかっただろ?」

「凪のことだから楽しくなっちゃたんでしょ。でもドラゴンまで出して、コイツ! うちの可愛い正樹が焦げ焦げになったらどうするつもりだったのよ!!」


 美音は倒れ込む凪に蹴りを連発する。

 だが気を失っているのか、凪は一向に動かない。


「えっと....このドラゴンどうするんだ?」


 正樹と美音は取り残されたドラゴンを見上げる。

 すると、屋上から何かが降ってくるのが見えた。


「『断頭ギロチン』!」


 大きな黒い剣がドラゴンの首をはね、その勢いのまま剣は地面に突き刺さる。

 地面はひび割れ、周りの木々は倒れて行く。

 正樹はやばいと思い、凪と美音を抱え、最後の力でその場から離脱するため飛び上がる。


 空中に飛ぶ正樹は、砂埃すなぼこりの中で手を振る人影が見えた。


「何してくれんだよ隼人!」

「助けに来たぞー、正樹ー」


 隼人は剣を空に突き上げ、ドラゴンの首取ったどーと叫んでいた。


◆◆◆◆◆


「……って、よく考えたら器物破損は隼人のせいじゃないか!」


 筆を進める正樹は反省文の結末まで書き終え、机にペンを叩きつける。


 1ヶ月の休みとなると他の生徒とで、進行度にかなり開きが出てくるだろう。

 それに問題を起こした生徒だとバレていれば、友達もできず、勉強を教えて貰うことも出来ない。

 学園に戻ってもいいこと無いだろとうなだれていたタイミングで


「正樹様、お友達がお見えになっていますよ」


 信者であるスティーブンが隼人を連れて来たのだ。


「今反省文書き終わったのか?」

「誰のせいで書かされてると思ってるんだ!」

「えっ、俺のせいか?」

「そうだろ! 終わったなって時にさっそうと登場したかと思ったら、地面割るって。器物破損はお前だろ!」


 飄々《ひょうひょう》と現れやがって。よく来れたな。

 正樹は隼人を睨む。


「お前が勘違いして殴りかかったのが悪いんだろ。あとドラゴンも倒し損ねてるのも悪い。秒殺しろ、あんなデカいの」


 隼人は言う。


 正樹は無理を言う隼人の唇を指でつまむ。

 負けじと隼人も正樹の耳を引っ張り、涙目でじゃれ合う。


「ってことだから、久しぶりにグリッドで特訓しようぜ」

「特訓?」

「グリッド使わなくなってから何年経つ? 昨日の体たらくを見てて思ったが、お前弱くなってるよ。昔なら一瞬で殺れたろ?」

「いや、使えるようにならなくていいんだって……ん、お前見てたって言った?」

「あ、いや、その……てへ」


 隼人はドラゴンに気づいたから斬りかかったのではなく、様子見して状況を知った上で誰も得しない行動をしたと告白する。

 それには仏の正樹でも許せないものがあった。


「見てたなら最初から来るか最後まで来ないかのどっちかにしろよ!!」


 コイツは賢いんだかアホなんだか、さっぱり分からん。

 隼人の話を聞いて思い返すとイライラしてきた。


「分かった、付き合うよ。泣いてごめんて言わせるから覚悟しろよ、隼人!」


 着替えるために1度自室に戻ると隼人に伝え、待ってもらうことにした。


「そういや、さっき俺を連れてきてくれたおじさん。どっかで見たことあるような気がするけど……まぁ、いいか」


 隼人は一瞬だけスティーブンのことを考えたが、自分の知り合いじゃないからいっかと思い、携帯で動画を見ながら正樹を待つことにした。


◇◇◇◇◇


 楓の樹の裏山の奥深く。

 森を抜け、大岩が多く転がる平坦な土地で正樹と隼人は特訓を始める。


「行くぞー正樹。1000本ノック開始ー!」

「最初から1000本も出来無いから。せめて10にしてくれ」


 隼人はスタートの掛け声と同時にグリッドを発動。

 黒い大剣で地面から生えた岩を稲の栽培かのように切り分け、浮いた岩山を剣の側面で、正樹目掛けて打つ。


 正樹はその岩を地面に着く前に『はらぺこ人形(ハングリーパペット)』で食い尽くす。

 子供の頃によくやっていた特訓を2人どちらかがギブアップするまでやるのだった。


 結果は21回目のノックで正樹がギブアップ。

 体力に自信のある隼人に、どちらかと言えば貧弱な正樹が敵う訳無かった。


「次グリッド鬼ごっこやるか?」

「勘弁してくれ。それどっちか死ぬだろ。俺が悪かったから飯食おうや」

「えー、まだやろうぜ」


 隼人が意気地無しーとおちょくってくるのを無視して、スティーブンが持たせてくれたおにぎりを食べることにする。


「お前さっきも飯食ってなかったか?」

「グリッド使ったら腹減るんだよ」

「暴食のグリッドって空腹度が関係してるのか?」

「さぁ、どうなんだろね」


 正樹は隼人の疑問を聞き流し、おにぎりをほおばる。

 実際、それについては使ってる本人でもよく分からないことなのだ。

 欲望の研究でもグリッドの発動条件や使用上限などについては解明されておらず、グリッド能力持ちの人間はその辺を感覚でやっているのだ。


「そういや今度エマさんの護衛でグリーマン研究所に行くことになってたんだ。お前も来てみるか?」

「いや、いいわ。てか無理だろ。たしかエマさんて股間の人だろ?」

「いや、女性を股間の人って。失礼なヤツ」


 正樹の冗談に隼人は笑う。


 隼人の言うグリーマン研究所とは欲望学について研究する世界最大の機関であり、今ある欲望に関与する知識やグリッドなどは、ほとんどがグリーマン研究所で研究されているものである。

 ちなみにホーグリップ学園もグリーマン研究所が出資している学校なのだ。

 グリーマン研究所は軍の施設ではなく、個人が持つ法人団体であり、政府は欲望についてのことはグリーマン研究所に委託いたくする形を取っている。


「こないだ話したアメリカでの対談あっただろ。そこで欲望国から得られた情報を元に、グリッドアーマーのパワーアップをするんだと」

「隼人に必要、そんな装備?」


 正樹は疑問を持つ。

 隼人の持つグリッド『嫉妬剣ジェラス』はかなりの戦闘能力を持つ。

 それ以上を求めてどうするのかと思うのだ。


「必要だろうな。じゃないと神機相手は無理」

「隼人でも?」

「見て分かったけど、ありゃ無理だな。今戦うってなったらほぼ負ける」


 それを聞いて一瞬正樹は神機に少しだけ興味が出る。神機がどれほど強いのかと。

 でも自分とは無縁な物を知ったところで意味無いと思い、隼人に深く聞くことはしなかった。


「あっ、お前西園寺先輩に連絡したか? こないだ別れ際に電話番号貰ってただろ?」

「いや、まだしてないね」

「まだかよ。殴った件はお前が悪いんだし、ちゃんと謝っとけよ」


 話は代わり、凪に謝る話が隼人から出てくる。

 殴ったことを謝った方がいいと隼人は言う。

 それを頭では理解しているが、なかなか行動に移せない正樹。

 電話しろと言う隼人の意見も分かるが、あまり凪とは関わりたくないと正樹は思ってしまったのだ。

 

「メールじゃダメかな?」

「ダメだろ。なんなら直接会って謝れよ」

「んー」


 直接会うのはもっと気まずいと思い、正樹は隼人との特訓後、凪に電話することにした。

はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

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