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上空に浮かぶ敵、両手広げがちな件

「ヨハン王! 外をご覧になってください!」


 おじさまの執務室には、王都を一望できるバルコニーが隣接されている。兵士の様子を訝しく思いながらも、私たちはバルコニーへと出た。


「なにこれ……!」


 目の前に広がった光景に愕然とする。


 王城の上空で黒い雲が渦巻いていた。だのに、遠くの空は晴れているのだ。王城を包み込むように広がる黒雲は、明らかに自然現象ではない。風に吹かれて蠢く雲は生きているようで、どことなく蛇を思わせた。それは王都の人々にとっても同じようだ。目をこらして見ると、大勢の人々が空を見上げているのがわかる。すると、黒いローブを着た人間がやたら多いのに気がついた。揃いの衣装は民衆の中にあって悪目立ちしている。


「うわ……」


 おもわず息を呑んだ。

 黒いローブの人が次々と倒れ始めたからだ。周囲の人々が困惑しているのがわかる。近くにいた人間が介抱しているようだが、黒いローブの人たちはピクリともしない。

 もしかして――死んでいる?


 そう思わずにはいられないほどには、人々が慌てふためいているのがわかった。


「おじさま……!」

「わかってる。誰か! 城外に兵を! 何が起きている。状況を確認しろ!」


 おじさまが指示を出した途端、遠くから悲鳴が聞こえた。城外の民衆が逃げ惑っている。真っ黒な靄が、倒れた人の体からあふれ出したからだ。


「なにこれ……!」

「すごく嫌な予感がするわ」


 サリーが険しい表情をしている。すると、靄はみるみるうちに上空に昇っていき、黒雲に合流した。途端、黒雲の中でバチバチと稲妻が弾けたのが見えた。稲光が走る。さして間を置かずに、耳をつんざくような雷鳴が辺りに鳴り響き――上空に巨大な魔方陣が姿を現した。


「……嘘でしょ。呪いが完成しようとしてる」

「サリー。どういうこと!?」

「黒いローブの奴ら、たぶんディアボロ教の人たちだわ。城の人間に死の呪いが効かないからって、自分たちを贄にしているのよ!」

「じゃ、じゃあ。このままじゃ……」

「創世神の分身が危ないわ!」


 ぞくりと怖気が走って、慌ててバルコニーから地上を見渡す。地に伏せている黒いローブの人たちの数はみるみる増えていった。王都のあちこちから黒い靄が立ち上ってくる。ディアボロという神に魅入られた彼らは、恐ろしいほど簡単に自分たちの命を投げ捨てていく。


 けれど、王城にいる私たちには何も出来ない。


 王都中から立ち上った靄は、やがて王城の上空でひとつになった。

 轟、と強い風が吹く。大きくうねった靄はいつの間にか人の形を取っている。


「……ディアボロ……」


 誰かがつぶやく声がした。

 その姿には私も見覚えがあった。創世神を祀る神殿には、眷属の神々の像が設置されている。その中で一体だけ苦悶の表情を浮かべている神がいた。


 ディアボロは美しい男神だった。黒々としたローブを纏い、漆黒の髪に蟠った闇のような瞳を持っている。端正な顔立ちでありながら、どこか冷たい印象を持つ男神は、遙か上空に浮かんで下々の人間を睨み付けていた。


『我はディアボロ。父なる神を害する者。愚かな人間共よ、安寧な日々は今日で仕舞いだ』


 憎々しげに顔を歪めたディアボロの表情は、どこまでも苦しげだった。息を呑んで見守っていると、視線が交わった気がしてドキリとする。


『忌々しい女神どもめ。また我の邪魔をするつもりなのだな』


 生気を感じさせない瞳を細めたディアボロは、片手を天に向けて高々と掲げた。


『そうはさせない。我は――すべてを終わらせる』


 途端、目を開けていられないほどの閃光と鼓膜をつんざくほどの轟音に包まれ――

 私の意識は暗転したのだった。





「お嬢、しっかりしてください!」


 目が覚めると、目の前にヴァイスの顔があった。いつの間にかヴァイスに抱き込まれている。全身が痛む。小さく呻きながら顔を上げると、目の前に広がった光景に絶句した。


 先ほどまで王城のバルコニーにいたはずなのに、いつの間にか洞窟らしき場所にいる。巨大な洞窟だ。天井は高く、鍾乳洞がいくつもぶら下がっている。おそらく遺跡の一部なのだろう、装飾付きの石柱があちこちにあった。注目すべきは洞窟の中央部だ。滾々と湧き出る泉の中に、立派な石像が安置されていた。姿形からして、創世神の分身なのだとわかる。


 けれど――様子がおかしい。


 創世神は、名前のとおりこの世界を創った神だ。分身である石像は清らかな場所に安置されるべきはずなのに、像を取り囲む泉は毒々しい色に染まっていて、体に悪そうな煙が立ち上っている。

 そしてその側には、ディアボロの姿があった。


『あははははははは! 穢れろ。穢れてしまえ!』


 壊れたようにディアボロが笑うたびに、大量の黒い靄が辺りを取り巻く。風が渦巻き、嵐のようだった。靄が石像に触れるたび、表面に亀裂が入っていく。


「ヴァイス、あの黒いのは何?」

「おそらく穢れです。お嬢、なるべく深く息を吸い込まないで」


 そんなヴァイスは、なにやらボロ布を頭から被っていた。よくよく見ると、兄クリスに作ってあげたタープテントの一部だとわかる。虫除けにしようと、聖属性の魔石で結界を作る効果を付与したものだ。どうも穢れから身を守るのに一役買っているらしい。


「わあ。私の趣味もたまには役に立つもんだね」

「基本、オーバースペックで役立った試しがないんですけどね。大金をつぎ込む割に」

「アンタってば、こんな時にまで辛辣なんだから。ねえ、他のみんなは!?」

「グリードはサリマンの作った結界の中に。他の人間は――わかりません。どうも、俺たちだけ連れてこられたみたいで」

「……私が女神様方に選ばれたから、かな」

「まあ、そうでしょうね。ディアボロは、今度こそ女神様方からの横やりを叩き潰して、本懐を遂げるつもりなのでは。だから、女神に認められたお嬢は敵認定されている」

「わお。勇者みたいな扱いするじゃん……」

「向こうからすれば、似たようなもんですよ」

「機転しか取り得ないのに! ひどい! せめて聖剣がほしい……!」


 緊張を紛らわすためにヴァイスと軽口を叩き合ってみたものの、心臓の高鳴りと冷や汗は止まらなかった。ああもう。巻き込まれてしまった以上はなんとかするしかないのだ。覚悟を決めろ、私。


 ――それにしても。


 創世神への恨みをぶつけるように穢れを操るディアボロを苦々しい気持ちで眺める。

 本当についてないな。父なる神に愛する人を寝取られたディアボロも。

 たいした力もないのに女神に選ばれてしまった私も。


 これが運命なんだとすれば、ぶっちゃけ文句を言いたい。

 とはいえ――文句ばかり言ってもいられないんだよね。


「仕方ない。やってやろうじゃない。寝取られ男神VS創世神防衛ファイナルマッチを……!」


 思わず呟いた私に、スンって感じ顔をしたヴァイスが言った。


「なんか、これまでの緊迫感が台無しですね」


 ええい、うるさい。これしか言いようがないんだ。仕方がないじゃないか!

 

 九話 創世神の泉をぜんぶ浄化します!


 ――異世界に転生して、本当にいろんなことがあった。


 生まれ変わったのは公爵令嬢。物心ついた頃から、やりたい放題やってきたなあ。


 知識チートを使って領内を豊かにしてみたり、馬鹿王子と婚約したせいで、うっかり馬車馬の如く働く羽目になったけど、自由の身になるために頑張ってみたり、キャンプギアをいっぱい開発して、ウハウハしてみたり。


 そこそこ満喫していると思う。なにせお金があるし、紆余曲折あったけれど、遊ぶ時間も捻出できているし、何より大好きな人たちに囲まれているしね。


 幸せな人生だ。異世界でキャンプをすること自体、夢みたいな体験だしね!


 ……そう。私は人生に満足していた。

 大好きな人たちとキャンプに興じられれば、それだけでよかったのだ。


 ――それなのに!

 なんで世界なんぞを救わねばならないのか。解せぬ。





『女神の手下共め。その命を創世神への手土産にしてやろう!』

「うおおおおっ! 危なっ! サリー姉さん、岩がめっちゃ飛んでくるんやけど!」

「避けなさい! 死にたくなければ、ね!」


 穢れの暴風が吹き荒れる中、グリードとサリーが善戦している。

 ディアボロは、私たちが邪魔だと言わんばかりに、鍾乳石やら岩やらと穢れの嵐に紛れてぶつけてきた。岩が砕ける音が辺りに響いている。ラスボス戦って感じの派手さだ。


 いやはや。盛り上がってるねえ! できれば私のいないところでしてほしいものなんだけど! 画面越しならなおよし。


「こ、こここ、これっ! ど、どうすればいいのかなあっ!」


 ヴァイスに横抱きにされた私は、舌を噛まないでいるだけで精一杯だ。


 大荷物を抱える羽目になっているヴァイスには申し訳ないが、私はただの公爵令嬢で、岩が降り注ぐ洞窟内で無事でいられるほどの反射神経は持ち合わせてはいない。結果、ヴァイスが私を抱いて岩を避けまくるという、なんとも奇妙な状態になっている。


 しかし、ヴァイスよ。「重いよね。ごめん」と女性が言ったら、普通は「羽より軽いです」的な返しをするものだろう。苦々しい顔で「今後はお酒を控えてください」なんて言うんじゃない。ちくしょうめ。酒量は意地でも減らさないからな!


 それにしても、解決の糸口が見つからない。

 穢れの嵐と、ガンガン飛んでくる岩のせいで、ディアボロに近づくことすら出来ないのだ。これじゃジリ貧だ。主にヴァイスの腕と腰が危ない。体力が尽きても死ぬし、ギックリ腰にでもなっても詰む!


「ディアボロ様~! 早まらないでください! 創世神の分身を害して何になるんですか!」

『うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!』


 駄目元で訴えかけてみるも、ぶっちゃけまるで届いている気がしなかった。ディアボロは死んだような目で穢れを操り、創世神の分身を痛めつけ、私たちを追い落とそうと岩を操ることに夢中になっている。


「寝取られで脳を焼かれた神の末路がこれか……!」


 特殊性癖のご利用は計画的に! どっかのキャッシングローンのキャッチコピーみたいなものが脳内を駆け巡る。とにかく、手がかりがほしい。じゃないと機転を利かすどころじゃないのだから。


「サリー! なにかわからないの!?」


 長命種のエルフであれば、なにかわかるかも。藁にも縋る思いで訊ねると、どでかい岩を魔法で爆破していたサリーがドレスの裾をひらひらさせながら言った。


「アタシに聞かれても! ともかく、この穢れをなんとかしなくちゃとは思うけど……!」

「確かにね。このままじゃディアボロをぶん殴ることもできないしっ!」

「つか、この穢れってどこから来てるんやろか! 焚き火やないんやから、煙みたいにずっとモクモクしとるのおかしない!?」

「あー! 確かに!」


 グリードの言葉は一理ある気がした。

 ディアボロは穢れ自体を操っているものの、彼が生み出しているようには見えなかったからだ。城外で発生した穢れを、どこからか引き込んでいるはずだ。水道の元栓を締めるように、なにがしかの手を打てれば、もしかしたらもしかするかも知れない。


「ちょっと探ってみるわ」


 そう言ったのはグリードだ。彼はひらひらと洞窟中を駆け回りながら周囲に視線を投げている。岩を踏み台にして跳ね、降り注ぐ穢れをギリギリで躱し、時折、隙を見てディアボロに接近しては、おちょくるように距離を取った。


「寝取られ神さん、ご機嫌いかが! ちょっとコントロールポンコツなんちゃう? 暗殺者やったらもう失格言われてまうレベルやけど!」

『くそっ! 目障りな……!』


 へらへら笑うグリードに、ディアボロは怒り心頭だ。次の瞬間、創世神の分身の足下にある泉から、大量の穢れを噴出させた。


「ひええええええええええっ!」

 グリードが逃げ惑っている。すると、ヴァイスがぽつりと言った。


「お嬢、あの泉……あそこが穢れの発生源では?」

「そうかも知れない」


 淀んだ泉から滾々と穢れが湧き出ている。いや、もしかしたら呪いで生み出された穢れの原液なのかも知れない。


「あそこを浄化できれば、もしかしたら――?」

「そんなの無理よ!」


 降り注ぐ岩を打ち落としながら言ったのはサリーだ。


「あんなドロドロしたもの、どうやって浄化するの!」

「穢れやったら浄化できるやろ? 僕、神官が穢れを祓ってるの見たことあるけど」

「それはそうなんだけど! ここには高位の神官も聖女もいないじゃない!」

「サリーの魔法は!?」

「そんな綺麗な魔法、本気で魔女に使えると思ってるの!?」

「た、確かに~~~!」


「素直に納得されるのも腹立つわね」

 顰めっ面になったサリーは、ディアボロを憎々しげに睨み付けた。


「ともかく、アンタの機転の出番よ。なんかないの!?」

「そんな無茶な」


 あんなカニ味噌みたいな色をしたものを、私がどうにか出来るとは思えない。でも、このままじゃ世界の危機だ。荷が重い。重すぎる。誰か! スーパーなサ○ヤ人か、ヒーロー見習いがいっぱい通ってるアカデミアにオファー出してきてー!


 ヴァイスの腕の中でアワアワしていると、ふと幼馴染みの執事がぽつりと言った。


「お嬢、今まで作ったり手に入れたりしたもので、役に立ちそうなものはないんですか?」

「えっ……?」

「前にグリードが言っていたでしょう。女神に選ばれたのは、知らないうちに解決の糸口を手に入れているからじゃないかって。女神自身が人界の出来事に手を出すことは禁忌とされている。ならば――自分たちの代わりに、お嬢になにかをさせようとしているのでは?」

「…………」

「さすがの女神様方も、ただの貴族令嬢……一般人以下……幼子よりも腕力がないお嬢に、物理攻撃は期待していないはずです。それ以外でアイディアはありませんか」

「ねえ、アイディアを強請るのはいいけど、さらっとひどいこと言ってない?」


 しかし、確かにそうだった。ヴァイスが結界代わりに被っているボロ布だって、たまたま(・・・・)兄クリスのために開発したものである。これがなければ、穢れにやられてしまっていたかも知れない。これは果たして偶然と言えるのか。


 ――本当に、私の中に答えはあるの?


「とっ、とにかくっ! 心当たりのあるもんを出してみたらどうやろかっ!」


 やや疲れを感じ始めたらしいグリードの息が上がっている。のんびりしている場合ではない。するとヴァイスが私にマジックバッグを握らせた。ポーチサイズのそれは、常日頃からヴァイスが携帯しているものだ。


「なにがあったっけ……」


 ゴソゴソと荷物を漁る。なにか効きそうなもの……キャンプギアを広げている暇はない。「これじゃない!」「違う!」ヴァイスの腕の中に収まりながら、ぽいぽいと焦った時のドラ○もんのように荷物を放り投げる。


 その間にもディアボロの攻撃は緩むことはなかった。

『ええい。ちょこまかと!』


 仕舞いには巨大な炎を上空に浮かべ始める始末。

 これはヤバい。ヒッと息を呑んで、再びマジックバッグの中身に集中する。こうなれば何でもいい。当たって砕けろ――!


 ――べしゃり。


 瞬間、適当に放り投げたソレ(・・)が、泉ではなくてディアボロの顔面にぶち当たった。実に粘着質でドロドロ。やや緑がかったそれは――エンシェントドラゴンの糞である。


 勢い良く放り投げたせいで、防臭効果のある布袋から飛び出したソレは、綺麗な放物線を描いた結果――ディアボロの顔面にクリーンヒットしたのだ。


『貴様ァーーーーーーーーーーーーー!!』

「ぎゃあああああああああああっ! ご、ごめんなさいっ……!!」


 やっべ。神様にう○こを投げつけてしまった!

 当然、ディアボロは激怒している。岩と炎の玉を一斉に投げつけてきた。


「ヴァイス、逃げて!」

「ちょっと、アイシャ……!」

「あひゃひゃひゃ! 死ぬ。この状況で笑かすと死ぬからっ!」サリーが呆れ顔を浮かべ、グリードは目に涙を浮かべて笑っている。うっ! ヴァイスやめて。その下等生物を見るような目はやめて!


「お嬢は俺の胃をどうしたいんですか。跡形もなく破壊したいんですか?」

「ちょ、ちょっと失敗しただけよ!」


 いかん、いかん。さすがにエンシェントドラゴンの糞はなかったなあ。いや、強烈な魔物避けになるから、神様にも効くかなってちょっと思っただけなんだけど。さすがにう○こはなかったか~~~。


「じゃあ別のもの……」


 逃げ惑いながらゴソゴソとマジックバッグを探る。

 すると、とあるものを見つけて――あっと小さく声を上げた。


 まさに天啓だ。

 というか、こんなのいつ仕舞ったんだろう。ぶっちゃけ記憶にないけれど――


 使える。そう思った。


「サリー! グリード! 泉に近づきたいの。寝取られ神様の気を引いて!」


 意気揚々と叫ぶと、ふたりの顔が輝いたのがわかった。


「了解! 次は変なもの投げないでよ!?」

「わはは。今度こそ上手くいったらええんやけどな~」

「いいから黙って動く!」

「「はいはい」」


 ブツブツ言いながらも、ふたりの動きは迅速だ。

 サリーは「氷よ!」と声を上げると、空中に大小様々な氷柱を出現させ、ディアボロに見舞ってやった。その合間を縫ってグリードがナイフを投擲する。ついでに、小さな爆弾をぽいぽい投げては、あちこちで小規模の爆発を起こしていた。


『小癪な……!』


 間断なく注がれる攻撃に、これにはディアボロも余裕をなくしている。

 よし! 私たちから意識が逸れた! チャンスは今しかない!


「ヴァイス!」

「お嬢の望むままに」


 勢いよく駆け出したヴァイスは、一気に泉との距離を縮めた。


『近寄るな……!』ディアボロが苦し紛れに攻撃するものの届かない。ヴァイスに横抱きにされたままの私は、手の中に握ったそれを勢いよく泉の中に投げ込んだ。


 その、次の瞬間。


「は……?」


 私は思わず変な声を漏らしてしまった。


 なぜなら、私が思い切り投げた〝それ〟は――


 ぽちゃんと泉に落ちた次の瞬間、みるみるうちに巨大化し。

 なにやら勢いよく光り始めたのである。


 私が呆然としてしまったのは至極当然なことだ。

 だってさあ! だってさあ!


 誰だって、〝タイワンシジミ〟がこんなことになるなんて予想できないでしょ!?



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