新しいお友達とまたティータイムを
「あ、あああああ……」
「やだ。どうしたのよ!?」
「いや。あの。えっと。申し訳ございませんでした……っ!!」
いきなり土下座した私に、サリマンは動揺を隠せないようだった。
だがしかし、冷静ではいられない。
どう考えても犯人は奴だ!! アンチクショウ! なにしてくれやがった! 冒険者に頼んで、もういなくなった魔女さんの友人を誘拐しようとするなんて!
「サリマンさん。ご安心ください。これからは、侵入者に悩まされずにすむはずです」
「ど、どういうことよ……」
「犯人が絶対に逆らえない上司にチクっておきますから。社会的な死は難しいかも知れませんが、ぜったいに天誅を下してみせますから……!!」
アホな元婚約者がごめんなさい。やはり息の根を止めておくべきだったのだ。奴は害しかもたらさない。害虫以下王子だわ。はやく駆除しないと……!
己の失態を悔やんでいると、サリマンはなんだか気まずげに視線を泳がした。
「ま、まあ。それなら別にいいんだけど。それより、ね。えっと、アイシャ……」
もじもじと、細い指を絡ませている。不思議に思って発言を待っていると、魔女は急にそっぽを向いてこう続けた。
「ま、またお茶をしに来なさいよ」
「えっ」
あまりにも意外な申し出に、思わず変な声が漏れてしまった。
「い、いいんですか? 誘うのメチャクチャ我慢してたので、すごく嬉しいんですけど! こう、長命種の苦悩というか。二度と辛い思いをしたくないから孤独なままでいいの……みたいな奴はいいんですか! 私、普通に先に死にますけど!?」
「アンタってば、やっぱり明け透け過ぎて腹が立つわね!?」
ぜいはあと息を荒らげていたサリマンは、気まずそうに目をそらした。
「寿命のことは、痛いくらいわかってるわよ! で、でも。もらった菓子折。ひとりで食べきれる訳がないし。アンタはアタシを馬鹿にしないじゃない。それって貴重なのよ。それに、この森だったらアンタが好きな外遊びはいくらでもできるし。だ、だから――……。うん。別にいつでも遊びに来ていいんだからね」
サリマンは耳まで真っ赤だった。夕焼けよりも赤いかも。
なにより。なにより……!
すっっっっっっっっっっっごく可愛い!!
「よろこんで~~~~~~~!!」
思わず抱きついちゃったのは、不可抗力じゃないだろうか。
「ぎゃあああっ! 離れなさいよ!! 距離が近いのよ。ちょっと!? 執事なんとかして!」
「こうなったお嬢は止められませんよ」
「それはさっきも聞いたのよ!」
「つまりあれだよね。友だちになってってことでしょ!? 嬉しい~! ね、なんて呼べばいい? サリマン?」
「やめてよ! 男臭くって嫌なのよそれ! サリーって呼んで!!」
「サリー……!! すっごく似合う! 可愛いねえ。ね、おそろいのカップとか用意してもいいかな!?」
「そういう反応も慣れないからやめてえええええええ!!」
サリマン……いや、サリーの悲鳴が森の中に響いていく。私たちが大騒ぎするたび、呼応するように大樹たちが葉を揺らした。その姿がひどく愉しげに見えたのは、きっと私の見間違いではないのだろう。
こうして、私の友人がひとり増えた。
魔の森に住む、とってもチャーミングな魔女。サリーだ!
初心よのう…… 初心よのう……!
次話、おじさま襲来。
イケオジのターンだ!!!!




