心の中の小学生がね「これほしいー!」って駄々こねる時ってありませんか
「ヴァイス、手伝って!」
「はいはい」
思いがけぬ幸運に恵まれた私は、さっそくお茶の準備を始めることにした。
「この子、面白い女を通り越して、奇妙な女じゃない?」
「俺もそう思います」
サリマンとヴァイスの会話は無視である。ひどいなあ。こちとら欲望に忠実なだけだ。
「焚き火をする時間はないかな」
魔女さんも言っていたけど、火事も怖いしね。別に焚き火が必要なほど寒くもない。
そう考えた私は、アウトドアケトルを利用することにした。
ふっふっふ。ケトルと聞いて、やかん……? と拍子抜けした人もいただろう。
舐めてもらっちゃ困るね。コイツはひと味違う。
アイルランドで生まれたアウトドア用のやかんを参考にして作っているのだ!
見た目は金属製のミルクポットみたい。二重構造になっていて、底の部分に燃料を入れれば、短時間で湯を沸かせるという優れものだ。
前世の時は、もっぱらガスバーナー派だったんだけど、このアウトドアケトルは憧れだった。玄人感がね……すごいのよ。心の中の少年が、「あれほしい~!」って大騒ぎしてたよね。
なので、こっちで再現してみました!
本体は魔鋼を加工したもの。アルミみたいな鈍色だ。ドワーフの手によって魔術が付呪してあって、熱しやすく冷めにくい。ミスリルも少量ながら入ってるので、熱での変形にも強い。原価? ハハハハハ。ちょっと知らない子ですね……。
「そういえば、なんで冒険者たちは魔の森に来たがるんです?」
火種になりそうな小枝を集めていると、ふいにヴァイスがサリマンに訊ねた。
「ここが、あなたの住み処であることは周知の事実だ。なのに、なんで奴らは危険を冒してまで不法侵入してくるんでしょう?」
「アタシだって知らないわよ。ここには、奴らが喜ぶような品はなにもないわ。百年前は違ったかもしれないけれど……」
「なるほど。しかし不思議ですね。逆に言えば、あなたが冒険者を追い払う理由もないということだ。どうして侵入者を排除し続けてるんです?」
「……ここは大切な場所なの。誰かが土足で踏みにじっていい訳がないわ」
「そうですか」
会話をしながらも、ヴァイスはテキパキと準備を進めていた。
いつの間にか、湖畔にミニテーブルとアウトドアチェアが設置されている。
「サリマン。こちらへどうぞ」
しかも、魔女さんをスマートにエスコートまでしてしまった。戸惑いながらも、サリマンはチェアに落ち着いてしまっている。
「い、至れり尽くせりじゃない……」
膝掛けまで用意されて、満更でもない様子だった。ううむ。さすが執事。おもてなしが素早い。やりおる……。
そうこうしているうちに、いい感じに小枝が集まってきた。
次話!!!
このアウトドアケトル、
商品名で言うとケリーケトルっていうんですが、
夢がいっぱいつまっています
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