レッツザリガニクッキング!
というわけで、駆除したアメリカザリガニの調理開始だ!
「じゃあ、始めよっか!」
「なにを作るんです?」
「ふふふ。アメリカザリガニだからね。本場の食べ方を踏襲するよ! アメリカ南部ルイジアナ州の郷土料理。ケイジャン料理だ……!!」
ケイジャン料理といえば、ジャンバラヤやケイジャンチキンが有名である。
こっちなら食べたことのある人もいるんじゃないかな。
だいたいスパイスがめっちゃ効いていて、お米との相性が抜群なんだよね。あとは、ぱちぱちしゅわしゅわするお酒とかね。ふはは。
「下ごしらえはわたくしにお任せくださいませ……!」
手伝いを申し出てくれたのは、ルシルだった。
「わたくしの水魔法にかかれば、こんなもの楽勝ですわ!」
そう言って、宙に浮かべた大きな水玉の中で、ザリガニを洗い始めた。
おお……! ドラム式洗濯機の中身みたいだ。あっという間に泥が落ちていく。
「ほっほ! ワシも手伝おうかのう」
「ヴィンダーじいもありがと! じゃあ、背わた取りをお願い」
食中毒を防ぎ、食感をよくするためにも、できればやっておきたい工程である。
取り外す方法は簡単だ。尻尾の真ん中をぐりっと捻った後、優しくひっぱるだけでズルッと出てくる。その後は、臭み取りのため酒にしばらく漬けておく。
「数が多い。腰が死ぬかもしれん……!」
ザリガニ相手にヴィンダーじいが苦戦していると、子どもたちが集まってきた。
「おじいちゃん。私たちが手伝うよ! 一緒にやろ!」
「おうおう。いい子じゃなあ。孫みたい。ワシ、テンション上がっちゃうかも」
ほのぼのとしたやり取りを横目で見ながら、次の作業に取りかかる。
ザリガニ料理の工程はシンプルだ。
まずはしっかり火を通す。生は駄目。寄生虫が怖いからね。白ワインで酒蒸しがいいかな。火を通すと、アスタキサンチンが反応して殻が真っ赤になった。壮観である。ここでポイント。出汁が溶け出した汁は捨てないでとっておく。美味しいところだからね!
その他の具材も、でっかいバターの塊とちょっと引くくらい大量のニンニクで炒めておく。とうもろこしに茹でたジャガイモ、太めのソーセージなんかがいい。ソーセージはマスト。なにせ出汁代わりである。
そこに大量のスパイスと調味料を投入!
塩にオレガノ、胡椒にセージ、バジル、チリパウダー、パプリカ……等々。
日本だと、ケイジャンスパイスって名前のシーズニングが売っているかな。ちなみに、各種ハーブやスパイスも地球からの転移した植物を採集したものだ。
ハーブなんかは、元々は雑草だからね。異世界に来てもしぶとく根付いていた。これらを、スパイスに詳しい知り合いの調合師さんにオーダーしている。好みの風味にしてもらったりね。とっても贅沢だなあ。
スパイスを入れると、食欲をそそる強烈な匂いが辺りに立ちこめてきた。
あっという間に鍋の中が真っ赤に染まる……!
くうっ! 涎がじわじわ染みてくる。この匂いだけで一杯いけそうだ……!!
ああああああああ、いますぐにでも飲みたい。
「子どもが見てますよ。お嬢」
「ええ、ええ! 自重しますとも。私は公爵令嬢ですので!!」
「その前に良識ある大人でしょうに」
「ヴァイスくんの正論は刺さるなあ!」
半泣きになりながら最終工程に挑む。
茹でてあったザリガニを、汁ごと具材を炒めていた鍋に放り込み、混ぜる……!!
「これで完成!! ケイジャンクローフィッシュ……!」
みじん切りにしたニンニクと、てらてら光るバターのドレスで着飾ったザリガニたち。真っ赤に茹で上がった体は、伊勢エビと寸分違わないほどの色気を放っている。トウモロコシの黄色がいいアクセント。なにげにジャガイモとソーセージが存在を主張している。炊きたてご飯も添えたから完璧だ!
ちなみに、ちっちゃい子や辛いもの苦手な人用に、唐辛子抜きを作ってある。
パプリカパウダーで真っ赤だから、見た目はそんなに変わりないけどね。
ザリガニを料理するときは、ドブで出会った時の記憶をほどよく消し去るのがコツです。
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