プロローグ
完全オリジナルの処女作です!!
…オリジナル作品は初めてなので、行間など違和感があれば、コメントで教えて頂けたら幸いです!!
女の子ーーー成海千晴は、産まれてからずっと退屈で仕方が無かった。
何をやっても一等賞。何を見ても完璧に模倣。
どんなに難しい事だろうとすぐに覚えて完璧に熟す。
…そんな毎日に、千晴は飽き飽きしていた。
ーーー何をやっても1番、というのは存外酷くつまらない物だ。
何をやっても1番という事はつまり、競う相手、ライバルがいないという事だ。
ーーー何を見ても、どんなに難しい事でもすぐに出来る。
努力するキツさも、達成感も、味わうことが出来ないという事でしか無い。
おまけに千晴は生まれつき美貌のの持ち主で、色々な人に尊敬され、男女問わずにモテた。
ーーーでも、誰も千晴の才能や美貌、胸などのスタイルしか見ておらず、真の意味で誰も千晴を見てくれなかった。
…親でさえも、誇らしげにしつつも、どこか凄すぎる自分の娘の事を恐れていた。
…それでも、千晴がその才能や頭脳を悪用しなかったのは一重に、父方の祖父母の存在が大きかった。
祖父母は、どれだけ千晴の才能があろうとも、決して才能や美貌だけを見ることは無く、あくまで
"1人の大切な孫"
"成海千晴という、1人の女の子"
として接した。
…それがどれほど千晴の救いになったのか、2人は理解していたのであろうか。
どれだけ一位を取ろうと、毎回本気で褒めて抱きしめてくれる。
人を助けたり、良い事をしたら褒めてくれる。
…悪い事をしたら、笑って許してしまう周りの人達と違って、本気で叱って、一緒に泣いて、抱きしめて、笑って、そして誰かに謝らないといけないなら一緒に謝ってくれる。
…そんな、祖父母の事が千晴は大好きだったし、祖父母も千晴の事が大好きだった。
…それでも、何事にもお別れというのは必ずしも来てしまうのである。
…祖父母が亡くなった。老衰だった。
まず先に祖父が死んでしまった。
ーーー男性の平均寿命は、女性より短いのである。
お別れしたくなかった。ずっと一緒にいたかった。
…居なくなるぐらいなら、一緒に連れて行って欲しかった。
…でも、そんな事を言われた祖父は、千晴を叱った。
そして言った。
"お前みたいな歳で死にたいなんて言うんじゃない。
…だが、本当に辛くてどうしようもなくて、逃げてしまいたい時は、逃げても良い。
楽になっても良い。
…だけど、出来れば幸せになってくれ。
…わしに、幸せな姿を天国から見させておくれ。
好きだと言う人を、大切だという人を、この人になら尽くせるという人を、見つけて幸せになっておくれ。
…例えそれが、女性の方だったとしても、おじいちゃんは応援するから。"
と言ったのだ。千晴は驚いた。
祖父は気づいていたのか、と。
…千晴は、祖父以外の男が嫌いだった。
低俗で、野蛮で、下衆な事ばかりして下品な事をして喜んでいる、同世代の男が、どうしても好きになれなかった。
…どれだけ優しくても、どれだけ評判が良くても、千晴は男という生物を信じる事が出来なくなってしまっていた。
…それ故に、自分の恋愛対象も自然と女性に向かっていった。
…でも、何人かと付き合ってもいまいち好きという感情が理解出来ずに、すぐに別れてしまっていた。
…でも、まさか祖父に気付かれていたとは思ってもいなかった。
「なん、で…おじいちゃん、その事を、知って……」
「…知ってるさ。わしの可愛い可愛い大切な孫の事だもの。
…千晴が、男の子を良く思っていないのは、わかっていたさ。
…私達に千晴が物心ついてから初めて会った時、
千春は何事にもまるで興味を示していなかったし、
つまらなさそうな目をしていた。
…そして、男の子を見る時、知らない人誰か見ても軽蔑したような目を向けていた。
…余程、辛い目にあったんだろうとわしたちは思ったし、何があったのか聞こうと一時は思って、ばあさんに相談もした。
…けど、やめたのさ。
わしたちは、何にも聞かずに、千晴をただ愛してやればいい。
悪い事をしたら叱って、頑張ったり1番を取ったら褒めて。
…あの子達がああだから、私達は千晴の事を娘と思って接しようと、そう思ったのさ。
そう思ったから、そうしてきたし、そうあるべきだと思ったよ。
…だから、千晴が男の子が嫌いなら、相手が女の子でもいい。
大切な人を見つけて幸せな姿をわしたちに見せて欲しい。
…それが、わしたちからの最後の"お願い"だよ」
「…おじい、ちゃん…
……うん、わかった…
わたし、もう少し、頑張るから…
…だから、だから…ウッヒック
私の、千晴の事、最後にぎゅーって抱きしめて?」
「あぁ。おいで。
……千晴、大きくなったねぇ…
…………わしは、…………千晴の…………事を…………
いつまでも…………見守って…………いるから…………
ねぇ……………」
「………おじいちゃん?…おじいちゃん!!!!!」
それから私は泣いた。泣き続けた。涙がかれる程に泣いた。
泣いている途中に来たおばあちゃんは、幸せそうに眠っているおじいちゃんと、泣いている私を見て察したのか、何も言わないで泣きながらも、私の事を抱きしめてくれた。
…それからの事は、よく覚えていない。
おじいちゃんのお葬式に、私は出たく無かった。
…出てしまえば、本当におじいちゃんに会えなくなってしまいそうだったから。
…でも、おばあちゃんの
"出てあげないと、おじいちゃんが悲しむよ"
という言葉に、例え辛くても、ずっと見守るというおじいちゃんの言葉を信じて、お葬式に出て、笑顔で見送ってあげなくちゃと思ったから、お葬式に参加した。
…桜が満開、春の陽気ただよう、4月。
…千晴が、小学四年生になった春の出来事であった。
どうだったでしょうか。
良ければ、引き続きシリーズを、千晴を見守ってあげてください。