チャレンの暴れん坊
一人の人物が、指をぱちりと鳴らすと一斉に燭台に火が灯った。
物々しい雰囲気の中、三人の人物が地形を模した机の上に張り付いている。
そして、そのまま火をつけた人物は口火を切った。
「カルエ地区が、どうやらフューデンに落とされたみたいだぜ」
指差した城の駒がぼうと燃え上がる。
「フューデンが? あのチキン共がどうやってあそこを落とした。あの難攻不落の城はそうそう落とせまい」
小難しい顔をしていた男が言葉を返す。
「さぁな。だが、フューデンがやったっていう噂がいろんなところから上がってきやがる」
手持ち無沙汰か、指先に火を灯しながら男は答えた。
手からにょきにょきと駒を生やし、机の上にポツポツと置いている女が、顔を上げる。
「あそこはラオバンが持つ事で我々とフューデンの間に緩衝材として均衡を保っていた要所。そこが奪われたとなると、ついに、本格的な戦争が始まるか」
「俺らからシュのフーガを奪われてやっきになってやがるな。くはは! 面白い! 受けて立とうじゃねぇか!」
男は口からドラゴンの様に火を吐いた。
「さっきから暑いぞ! やめんか、鬱陶しい!」
「あ? やんのか?」
「やるやらないの話ではない! きちんと話を聞けこの阿呆が!」
「んだとおら!」
「やかましいぞお前ら!」
声を荒げた人物に気がつくと、火を吹いていた男以外は全員その場に膝をついた。
膝をつかれた人物は、ドカリと中央にある玉座に腰を据えた。恰幅のいい無精髭を存分に蓄えた野盗の頭の様な見てくれ、強い目力で、周囲を無意識に威圧している。
「ラビー様、大変、申し訳ございません!」
「んだよ、文句あんのかよ」
火の男は、バツが悪そうに頭をかきながらそっぽを向いている。
「文句なんかねぇさ、フラーム。お前は好きな様にやれ」
「ほら見ろ! おまえら! くはは!」
「いいから頭を下げろお前は!」
「いい、トネル。こいつに頭を下げさせるのは、鳥に言葉を喋れと言っているのと同じだ」
「ほらみろー! くはは!」
「馬鹿にされているのも気づかんとは……いっそこっちの方が人生は生きやすいのかもしれんな」
ラビーが大声で笑った。
女は、小さくため息をついた。
「さて、ラビー様、これからどうするおつもりでしょうか」
「フューデンに功を押し付けた奴を徹底的に調べ尽くせ」
「功を押し付けた……もしや、裏で何かが動いていると読んでらっしゃるのですか?」
「あぁ、そうだジュアール。これはフューデンの名を借りた別の人物の仕業だ。しかもごく少数で精鋭揃いだ」
「そんなことまでお分かりになるのですね」
「当たり前だ。まずは、こいつらについて徹底的に調べろ。もしかするとローレンの名も出てくるやもしれん」
「あ? なんか聞いたことある名前だな」
トネルが、呆れた顔でフラームに冷たい視線を送っている。
「うちの試験を首席で合格して、蹴った奴だ」
「え! そんな奴がいたのか! 面白ぇな!」
「ちっ、だからみんな覚えてんだよ馬鹿が」
「あ!? んだと! バカって言った奴がバカなんだぞ!」
「もういい」
ラビーが二人を制止すると、再び屋敷の中に静寂が訪れた。
「これからは、その勢力とやり合う事になるだろうな。トネル、お前に第一陣を任せる、ちょっと手合わせしてこい」
「ははっ」
「俺の出番はいつだ! 俺を出せよ!」
「まぁ、そう焦るな。大事な時に出してやる」
ラビーはニヤリと笑った。
「これは、世界が大きく動くかもしれねぇな。この腐った世界がよぉ」
「俺には輝いて見えるけどな、この世界は! くはは!」
「フラーム、いい加減にしろ!」
フラームは制止されてもなお、笑い続けていた。
その笑い声にラビーが同調し、トネルとジュアールは頭を抱えた。
「転換期だ! 行くぞ、お前達! 俺が導いてやる」
「はっ!」




