傾国風の先
ルフラムは懸命に走った。
傾国風が吹いた方角を目指し、一心不乱に走り続けた。
仲間の事が頭をよぎるが、それも全て自分自身が世界の出口に辿り着く事で報われるのだと思うと、疲れていても体は動き続けた。
三日三晩、走り続けた先に、それはあった。
空まで届きそうな程の大きな扉、何故これが人々に見つからないのか不思議なほど大きな扉だった。
近づくと、鍵穴の様なものが三つあった。
ルフラムは、ホワイトロックを一つずつ鍵穴にはめて行った。
ガコン。
おかしな音がして、扉が急に開き始めた。
立っていられらない様な風がルフラムを襲う。
これが傾国風の正体。
扉が開く時の圧力差で生じる風。
ルーンを持つ者は皆ここから入ってきたのだ。
しかし、ルフラムにはそんな記憶は無かった。
もちろん、他の誰に聞いてもそんな記憶を持ち合わせている者はいなかったはずだ。
ルフラムは不思議に思いながら、傾国風が吹き去るのをじっと耐えた。
ようやく、入れる様になった。
中は長い廊下になっており、またしばらく歩かなくてはいけない様だった。
電気が付いておりそれなりに明るいが、無機質な感覚は否めない。
ルフラムは、これが何故明るいのかすらも分からなかった。
そんな不思議な道を歩いていく。
仲間のことが頭をよぎり、それを掻き消す事を何度も繰り返す。
しばらく歩いた後、梯子が目の前に現れた。
上を見上げても何も見えない。
どれだけ続いているのかわからないが、ルフラムはひとまず登ってみる事にした。
いつまで登り続けたか分からない、ざっと一時間程だったろうか。
あり得ないほどの長さの梯子がようやく終わるとその先に一つの扉があった。
ルフラムは、疲れた体をおしてその扉を開け放った。
「ルフラム、あなたついに来たのね」
姉の声だった。
そこにはマリアがいた。
「姉さん! ずっと……会いたかったんだよ!」
「私もよルフラム! あなたならきっとこれると信じていたわ!」
ルフラムは、マリアに抱きついた。
強く抱きしめ返される気持ちはとても嬉しく愛おしかった。
「さぁ、行きましょうルフラム!」
「え? 行くってどこに?」
「いいから!」
マリアはルフラムの手を引っ張って扉の先へと案内した。
「ほら、皆様に挨拶しなさい!」
そこには、円形の広場の様な場所に上からたくさんの人が見下ろす劇場の様な空間が広がっていた。
ルフラムは困惑した。
世界の出口に人がいて、今はその人達に挨拶をしろと姉に言われている。
どういうことかさっぱりわからなかった。
「ルフラムです」
そう一言だけ言うと、ポツポツと拍手の様な音が聞こえてきた。
「皆様、この度はお楽しみいただけたでしょうか? またの機会にぜひよろしくお願い致します」
そう言うと、マリアはそっとルフラムの肩に手を置いて袖口へとはけさせた。
「やはりあなたが来てくれると信じてた。私嬉しい」
「姉さん、これって……」
「これ? これは単なるお金稼ぎよ」
「はぁ……」
まるでわけが分からない。
ルフラムは、そのまま連れていかれるがままに勝手に動く扉を何個もくぐった。
最終的にルフラムにとってはよくわからない機械がたくさん置いてある部屋に連れていかれた。
「さぁ、あなたのルーンが最強だと証明された今、あなたにはこれからすごく期待をしているわ」
「最強? 証明? 最強はローレンだよ姉さん」
「ローレンは死んだわ」
「へ? そんなわけないよ! ていうかなんで姉さんが知ってるのさ」
「そこのモニターから監視していたのよ。最後の非のルーンに能力を無力化されて、ラビーのマリア引導によって殺された」
「嘘だ、そんなの嘘だ!」
「まぁ、そんなことどうだっていいじゃない。彼らはまた作れるのだし」
「作れる? なにを言っているの?」
ほら、あそこ。
指差す方を見ると、見知った顔が入った液体に満たされたカプセルの様なものがごまんと置いてたあった。
ホルミ、フレロ、シンシャ、ラビー、ラシャールまでいた。
「これは全て実験よ。我々、戦闘能力を持たない人類の為の防衛戦力を作る為の実験。あなた達の誰かがホワイトロックを三つ集め、ここにやって来るまでの実験」
ルフラムは頭が爆発しそうだった。
「やはり、最強はあなただった。慕のルーンを持つ貴方ならきっとここに辿り着くと思っていたのよ!」
「みんなの元に帰してくれないかな?」
「それは無理よ、言ったでしょ、貴方は戦闘能力を持たない私達の最後の砦なのだから」
「僕は、そんな事の為にここに来たんじゃない!」
ローレンと約束した、夜空を必ず見るのだと。
ホルミは、涙ながらに別れを告げてくれた。
その全てを無下にする様なこの結末はルフラムにはどうしても耐え難かった。
「さぁ、私達と共に戦いましょう!」
「嫌だ!!」
ルフラムは、全力で走りカプセルを殴り割った。
「何するの! ルフラム!」
流れ出る液体から身を出したのは、ローレンだった。
ローレンはむくりと立ち上がると辺りを見回して一つ深呼吸をした。
「あー、状況は?」
「全てをぶち壊して外に出る!」
「了解」
次の瞬間、全てのカプセルが割れて中身が飛び出した。
「さぁ、みんな行くぞ! 外に出るんだ!」




