迷い
ルフラムは、迷っていた。
自分が人と仲良くする事は戦力を上げる事につながってしまう。
そんな事がチラついた状態で人と話せるのか。
「ルフラム、おはよー」
「あぁ、シンシャおはよう」
朝からピースサインを掲げているこのシンシャも、ルフラムを慕えば慕うほど能力が発揮できてしまう。
自身を慕う事はその人を戦闘兵器に近づける事に他ならない。
「今日はいい天気、ぽかぽかだ」
「そうだね、ずっとこんな日が続けばいいね」
「雨も好きだけどね」
「僕も雨好きだよ、雨音が綺麗でいつも聞き耳を立ててる」
「ルフラムわかってるねぇ」
こんな些細な会話でさえ、気をつかう様になった。
それでも、皆に慕ってもらわねばならないし、戦ってもらわなければならない。
非情になるというのはこういう事を言うのだと、ルフラムは理解した。
「おい、作戦会議はじめっぞ」
「はい、今行く」
作戦会議をしている時も、自身のルーンの事で頭がいっぱいだった。
ルフラムが今やるべき事は、全員と仲良くなり慕ってもらう事だ。
慕ってもらった人を戦地に送り出す事で本領を発揮させる事。
やる事があまりにも残酷に思えて頭が痛くなった。
「俺達は再びチャレンに攻撃を仕掛ける」
「トップがいない今がチャンスというわけだな」
「いや、俺が殺したラビーはニセモンだ。ダイのルーンを持ったルーンの力を借りるフーガだった。本番はこれからだ」
「なんと、そんな事が……」
「本物はどれだけの力があるかわからねぇ、こちらも全力で行く」
ローレンはルフラムをチラリと見た。
「まずはチャレンの城を取る。狙いはカガン城だ」
「了解した」
「そこからホワイトロックを守ってあるであろうターニャ城まで攻め入る。そして、その前に必ずやらねばならない事は、ムのフーガを捕獲する事だ」
「ムのフーガを使って守りのルーンを無効化するわけですな」
「そういう事だ。カガン城攻めはルフラムを先頭に、シンシャ、フレロで行く」
「あいわかった」
「うーい」
「了解だ」
この二人はルフラムの事を慕っているはずだから力は出せるだろう。
ルフラムは、もう自身のルーンの事についてしか頭になかった。
「僕はやる事があるから失礼する。戦に出るのは明日でいいかローレン」
「あぁ、自分のやる事やってこい」
ルフラムは真っ直ぐ兵士達の宿舎へと向かった。
ちょうどお昼時で皆食事を楽しんでいた。
ルフラムを見つけると、兵士達は一斉に食器を置いて立ち上がり敬礼をした。
「おはようございます!」
「あぁ、おはよう。邪魔したかな?」
「いえ、そんな事はありません!」
「僕も一緒にいいかな?」
「は、はい? 構いませんが」
それからルフラムは、兵士達一人一人と入念に話を重ねた。
一人一人の名前を覚え、どういう経緯で兵士になったのかゆっくりと話をして聞いていった。
気がつけば夜は更けて、夕食の時間になっていった。
それでもルフラムは話す事をやめず、最後の一人まで話を続けた。
お金を稼ぎたいもの、家族に楽をさせたいもの、実力を誇示して上に上がりたいもの。様々な人がいて、それぞれの想いを掲げて兵士となっていた。
それを聞いたルフラムは、誰一人死なないでほしいと思うと共に、ルーンで利用してしまう事に対する罪悪感が拭えないでいた。
どうしてこんなに憎らしいルーンが己の元にあるのか、ひたすらに自身を呪った。
夕食が終わり、ルフラムは兵士達と共に寝泊まりする事にした。
ベッドは狭く息苦しかったが、他に人がいる事は安心感を与えた。
しかし、その人達でさえ利用してしまうという罪悪感が再び襲い、ルフラムは、眠る事ができなかった。
翌朝、カガン城へ向けて出兵する時が来た。
どれだけルフラムが慕われているのかが試される一戦なのである。




