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slag  作者: 雨後の筍
13/22

2度目の戦争

 また戦争が起こる。

 これも全てフレッセンが仕組んだ事とはいえ、敵国のトップ自らが出てくるとなると話は大きく変わってくる。

 ルフラムは、弓を握る手にグッと力を込めた。


「だ、大丈夫ですだ! うちにはあの最強がいるんですだ! 問題ないですだ!」

「そうだな、僕達は僕達でやれる事をやろう」


 全軍配置についた。

 今回は、なだらかな丘陵の元で行う戦だった。

 丘の上をあらかじめ取れた事は、ルフラム達にとってとても大きかった。

 しかし、ルフラム達の左手には川が流れており、川からの急襲も考えておかねばならない地形だった。


「シンシャがいてくれれば多少はやりやすかったのだが」

「何か、きっと考えがあるんですだ」


 ルフラムはちらりと後方に待機しているローレンを見る。

 兵士四人に御輿の様に担いでもらってくつろいでいるローレンとシンシャの姿が目に映った。

 ため息が漏れそうになるのをグッと我慢して、集中しろと己に言い聞かせる。


「見えました! 敵軍です!」


 遠くに、小さな敵の影が見えてきた。

 数は不明だが、そこまで多くはない様に見えた。

 が、それはただの幻想に過ぎなかった。

 敵が見え始めてから、一切途切れる事なく敵がずらずらと並んでいる。

 トネルの時の倍、それ以上はあるだろう。

 約五千のフレッセン対約一万五千のチャレンの戦いとなりそうだった。


「な、なんて敵の数ですだ! こんなの勝てっこないですだ!」

「やる前から諦めるな!」


 ルフラムは明らかに狼狽している軍に対し、弓を掲げた。


「皆の者! 私に続け! 敵の兵数は多いが、士気では私達が勝っている! 何も臆する事はない! 皆の命を私に預けよ! 全力で戦うぞ!」

「おぉー!!」


 ルフラムの掛け声に続いて左翼軍はけたたましい声を上げた。

 丘は揺れ、空気は震えた。


「左翼軍から勝ちをもぎ取るぞ!」

「おぉー!」


 敵軍は、丘下のなだらかな平野で隊列を組み始めた。

 そのスケールはやはり三倍程度違うといっていいだろう。

 丘上のアドバンテージがあるとはいえ、敵の最高権力が出てきているのだから侮れない。


 すると、敵軍が大きく湧き立った。

 それと同時に、身震いの様なものをルフラムは感じた。

 敵軍がさっきよりも大きく見える。

 錯覚ではなく、体感的なもので五感がそう訴えかけている。


「なんですだ、今の! やばい感じがしただ!」

「あぁ、明らかにさっきまでの軍とは別物になっている」

「これは、ラビーの力ではないですだ!?」

「だとしたらとんでもないぞ! 兵全員にあんな強力な力を与える能力なんて……!」


 動揺していると、敵軍が突撃してきた。

 開戦の合図が鳴らされたのだ。


「焦るな! 丘の上で迎え撃て!」


 冷静な判断のはずだった。


「ぐぁ!!」


 兵達はことごとく吹き飛ばされ、丘上は瞬く間に敵の領土になっていった。

 丘上の赤は全てフレッセン軍のものだった。


「はぁ!!」


 衝撃波の様なものを飛ばし、触らずに仲間を弾き飛ばしている敵もいた。


「まさかこんなに速くやられるとは!」

「撤退ですだ! これは敵わない!」

「全軍撤退だ!」


 左翼軍は開戦からわずか二分半で撤退を余儀なくされた。

 中央軍、右翼軍も奮戦虚しく、三十分とたたずに撤退命令が出た。

 ルフラムは、指示を仰ぎにローレンの元へと向かった。


「ローレン! すまない! 左翼軍は撤退だ!」

「あぁ、全軍撤退で問題ない、もう少ししたら俺とシンシャが出る」

「この状況から出るのか!?」

「あぁ、この戦、勝って帰る」

「とりあえず僕達は撤退すればいいんだな!」

「あぁ、気をつけて帰れよ」

「分かった! ローレンも気をつけて!」

「かっ! 誰にもの言ってやがる、こちとら最強だぞ」


 ルフラム軍はローレンに言われるまま敗戦の帰路に就こうとしたその時だった。


「おいおい、俺たちを置いて楽しそうなことしてんじゃねぇーよ」


 突如として川の方から現れた人物は恰幅の良い髭面で、目がギラギラとした異形な雰囲気を漂わせている中年の男だった。


「お、おまえは! ラシャールだ! ラオバンのトップがなんでこんなところにいるだ!」

「お前、ネオか! ちょうどいい! お前がいるとなんだか調子がいいんだ! こっちに来いよ!」

「やめろ! うちの仲間に手を出すな!」


 ルフラムはラシャールに弓を構えた。

 ラシャールはそれを見てつまらなさそうな顔をして再びネオの方へと向き直った。


「ほら、ネオ俺と組もうぜ! なぁ! いいだろぅ!?」

「離すだ! オイラはルフラム様達の国に仕えているだ!」

「やめろと言っているだろう!」


 ルフラムは力一杯引いた弓をラシャールに打ち込んだ。

 仲間の為に飛んでいった覚悟の矢はあっけなくラシャールの手の中に収まった。


「お前さぁ、つまんねぇ奴のくせに邪魔するんじゃねぇよ! 今口説いてんのが見えねぇのか?」

「それを止める為に邪魔をしているのだ!」


 ルフラムは再び矢を番え放った。

 しかし、再びラシャールに矢は取られてしまった。


「いいよ、どうせ欲しいものは奪うから!」


 ギラリと不敵な笑みを浮かべたラシャールに、ルフラムは、足が自然と下がってしまった。

 恐ろしい、直感的に恐怖が勝りその場から逃げ出そうとしてしまった。

 ルフラムは、この下がった一歩がたまらなく不甲斐なく思えた。


「ぐっ! てやー!!」


 ネオを守る為に、自身の誇りと名誉の為に、ルフラムはラシャールに飛びかかった。


「ふん、やる事に欠いて突撃か、つまらん。本当につまらん」

「ぐぁ!」


 ルフラムは、吹き飛ばされ川の中へと落ちた。

 そのまま意識を失い、ルフラムはなす術もなく川を流されていった。

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