表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
slag  作者: 雨後の筍
12/22

叱責

 ルフラムは戻った後、すぐ様報告の為ローレンの元へ行った。

 タビンの使っていた部屋なのか、金の装飾が多く悪趣味な空間にローレンはゴロリと寝転がっていた。


「よー、勝ったんだってな」


 言葉は穏やかだが、テンションは低い。


「なんとか、勝ったよ」

「どうだった、初めての戦争」

「恐ろしい所だった。汗は止まらないし心臓は常にうるさく、恐怖で体が震えていた。なんなら今も」

「そっか。まぁ、そんなもんよな」


 ローレンは、立ち上がると付いてこいと言い部屋を後にした。

 夜風が涼しく、眠れそうにないルフラムの心は少しだけ落ち着いた。

 ほんの小一時間前まで、命の取り合いをしていたのだ。

 そして、そこでルフラムは自身の手でトネルの左手を射た。


「トネル、逃したそうじゃねぇか」

「あぁ、あと一歩のところで逃した」

「お前が左手じゃなく、頭打ってたら逃さなかったんじゃねぇの?」

「……その通りだ」

「お前、見たよな避雷針の奴ら」

「あぁ……みた」

「もしお前が左手じゃなく頭射抜いてたら、あいつら帰って来れたかもしれねぇんだぞ? お前のよく分からん感情で、帰って来られるはずだった奴らが帰って来れなくなったんだぞ? お前、どう責任取るんだよ」

「……僕には命の責任を取れるほどのものを持っていない」

「持ってねぇならどうすんだ! 捨てでも拾いにいけよ! 変なもん捨てて、弓と心中しろよ! そんなもんかよ、お前の想いは。人一人傷つける事に怯える様なもんなのか? 姉ちゃんにあいてぇんじゃねぇのかよ!?」


 全くの言う通りだった。

 ぐうの音も出ないとはこの事で、言い返す言葉もないほどに正論だった。


「なぁ、お前、本当に外出られるのか?」

「出られる! 絶対に出る!」

「いや、今のお前じゃ無理だ」


 やはり、言葉を返す事はできなかった。

 未熟な事も覚悟が足りなかった事も重々承知していたからだった。


「もう迷わない」

「口じゃなんとでも言えるさ、態度で示してくれよ。次もまたチャレンと戦ってもらうからな」

「あぁ、任せてくれ」


 その日の夜、ルフラムは眠れなかった。

 何度も何度も、トネルに向けて放った一射が感覚として残っていたし、戦争の熱が体から引いていかなかった。

 仲間の死は、更にそんなルフラムに追い打ちをかけた。

 体は重く熱を帯び、足には何かが絡まる様な感覚に襲われた。


「ふぅ……」


 夜風に当たりに外に出ると、ホルミが外にいた。


「ホルミ、眠れないのか?」

「ルフラムこそ、大丈夫か? お前にしちゃよく頑張ってたからさ」

「あぁ、少し熱が引かなくてな」

「ローレンに怒られたからか?」

「なんでそれを……」

「にしし、一国の主が、あんだけ盛大に怒られてりゃ伝わるもんさ」


 イタズラっぽく笑うホルミに、ルフラムは頭をかくことしか出来なかった。


「でも、いいんじゃねぇか? ルフラムはルフラムだし、今すぐ変わるなんて事はできないんだし、ウチはそんな優しいルフラムだから良いと思う事もあるぜ」

「ありがとうホルミ」


 優しい、というホルミの言い回しに救われた。

 そして、ルフラムは考えた。

 もし、今日の戦争で失っていたのがホルミだったら。

 見ず知らずの者達だけでなく、見知った顔だったら。

 散って行った者達を思う気持ちは止まなかったが、そんな事を考えた時にルフラムは強く覚悟を決めた。

 もう仲間は失いたくない。

 もう自分の手から溢してしまいたくない。


「ホルミ、ありがとう。僕は本当の意味で覚悟が足りなかった。今、覚悟が出来た気がするよ」

「そうか、まぁ、どんな形であれウチはルフラムの味方だからな。義兄妹なんだ。なんでも頼れよ」

「あぁ、分かった。ありがとう」


 闇夜の中で空に小さな点がいくつも光って輝いていた。

 普段何気なく見ているそんな景色でさえ、愛おしいと思える様な気がした。


「そろそろ寝ようか」

「あぁ、おやすみルフラム」

「おやすみ、ホルミ」


 そして迎えた次の日の朝、急報が届き世界は一変する。


「たいへんですだ! チャレンが……! チャレンが大軍でこっちに向かってますだ!」

「なんだって!」

「しかも、セレンさんの情報によると、大将はラビー! 国のトップですだ! あー! なんてこっただ!」

「はやくローレンの元へいこう」


 朝一番に、ローレンの元へと皆が駆けつけた。

 ざわざわとした雰囲気の中、ローレンはいつも通りの体勢で寝転んでいる。


「よー、みんな集まったなー、ルフラムー仕切ってくれ」

「皆、よく聞いてくれ、今チャレンのトップであるラビーがこちらに向かっているとの情報が入った。これから作戦会議をする」


 その場にいたセレン以外の全員がルフラムに膝をついた。


「して、どうするのです? 相手はあのドウレウス・ラビー、ドウのルーンを操る最強軍団を導くトップです」


 セレンが冷静に言い放った。


「もちろんウチも全軍で突撃だ。俺も出る。配置も俺が決める」

「了解した」

「まず左翼はルフラム、ネオ中央後方に俺とシンシャ、中央前方にフレロ、ホルミ、セレン、そして右翼はテツゾウこの布陣で行く。各々千五百で俺の後方部隊は残りでいく」

「はっ!」


 全員が返事をした後、一斉に準備へと取り掛かった。

 ルフラムは服を着替え、弓を取り肩にかけた。

 矢はいつもより重く、長く感じた。

 それでもやるしかない。

 仲間を守る為には相手を倒すしかないのだ。


「さぁ、行こう」


 ルフラムは、部屋を勢いよく飛び出して駆け出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ