対決の先
絶対防御の雷。
ルフラムは、これを崩す手が思いつかなかった。
その間にも、トネルは大きな雷を避雷針に向けて飛ばし続けている。
その度に棒が立ち上がるのを見て安心し、心を痛める事を繰り返していた。
「このままじゃまずいですだ!」
「分かってるっての!」
再びホルミが突撃を試みるも、雷の絶対防御に阻まれた。
「ふん、我がルーンに隙はない」
「あのルーンは完璧なものなのか」
「いや、そんなはずはない、必ず何か弱点はあるはず」
「危ないだ!」
ルフラムの元に電撃が飛んできたのを、ネオが自身のルーンで引っ張って助けた。
「助かった、ありがとう」
「とんでもない、当たり前のことをしただけですだ!」
ルーンの弱点はないかと探している時に、再びネオがある事に気がついた。
「手の動きが特徴的ですだ! 手で操っている様な……」
ルフラムはそう言われて見てみると、確かに避雷針に向けて打つ時は、右手を開いて前に出しており、近くに電撃を飛ばす時は指を前に出していた。
「と言う事は、絶対防御の時にも何か手で動作を起こしているのかもしれない!」
「もう一度行く!」
ホルミが三度突撃を試みる。
すると、また雷の絶対防御でホルミは弾き飛ばされたが、発動したその瞬間をルフラムは見逃さなかった。
「左手を握っているぞ!」
「左手をにぎってますだ!」
ネオも同時に声を上げた。
疑念が確信に変わり、ルフラムは思わず笑みを浮かべた。
左手を握っていない間、つまり反対側の手で攻撃をしている間がトネルへの攻撃のチャンスだった。
「もう一度行く!」
「右手を避雷針に向けた時が攻撃の隙だ!」
「分かったぜ!」
ホルミが突撃を試みる。
右手が避雷針に向いた瞬間を狙って突撃をしたその時だった。
「そんな見え見えの隙誰が作るか!」
「危ない!」
ルフラムは叫んだ。
トネルは、避雷針に打つと見せかけて、右手をホルミの方に向けた。
あまりの近距離に、ホルミは避けることが出来ない。
ルフラムは、気がつけば弓を番えていた。
「ぐっ……!」
ルフラムが放った矢は、左手の絶対防御によって阻まれた。
しかし、それによりホルミに対する攻撃は止まった。
ルフラムは、初めて人に向けて矢を放った。
膝から下がガクガクと震えている。
ホルミを助けようとしたのではない。自分は人を殺そうとしたのだ。
その事実にただただルフラムは恐怖した。
「ぐっ……」
しかし、ルフラムは再び矢を番える。
トネルは、恐らく弓でないと勝てない。
ホルミが突撃した瞬間に分かった事があった。
攻撃と防御は同時には出来ない事、どちらかをしたら必ず隙が生まれる事。
この二つの弱点につけ込むには、ルフラムの弓が一番効果的だった。
再び人を殺める為に矢を番えなければならない。
心臓が高鳴り、手が震える。
しかし、これは戦争なのだ。こちらがやらねば相手にやられてお終いだ。
ふぅとひとつ深呼吸をして、矢を引き絞る。
トネルも矢を警戒しているのか、右手を避雷針に向ける気配はない。
「ならば!」
ホルミが突撃を開始する。
トネルは絶対防御を展開して、隙のない構えをしている。
案の定弾き返された。
「どうにかして、攻撃を打たせなければ」
その頃、友軍がかなり押していると、報告が入った。
無理にトネルを叩かなくてもこのまま軍容で勝てる戦に変わったのだ。
後は、トネルに何もさせなければいい。
そのはずだった。
その報告を聞いたトネルが動いてきた。
トネルは両手を前に出し、何かをしようとし始めた。
「あれはまずい! あれを打たれる前に止めないと!」
すぐ様、ホルミが焦った様に突撃していくが、間に合わない。
ルフラムは、覚悟を決めた。
自身がこの戦争にけりをつけるのだと。
人を殺めて、前に進むのだと。
「……ぐっ!」
ヒュンという音と共に矢が放たれた。
矢は真っ直ぐトネルの方へ向かう。
鋭い矢の道筋は一筋の線となり、まるで当たることが定められていたかの様に吸い寄せられていった。
「ぐぁっ!」
刺さったのは左の手だった。
ルフラムは、人を殺す事がどうしても出来なかった。
手が震え、汗が止まらない。
左手に刺さった矢のせいで、トネルの攻撃は通常の攻撃となり、避雷針に落ちた。
その隙をホルミは見逃さなかった。
「うぉりゃ!」
ホルミの矛が、トネルの胸を切り裂いた。
「ぐぅ!」
「まだだ! 傷が浅い!」
ルフラムは再び矢を番えるが、トネルは自身に雷を纏い、電光石火の如く、その場を立ち去った。
その姿を見ていた友軍がそれを戦場に伝え、敵の戦線は崩壊した。
散り散りになって逃げていく様を見て、皆は勝利を確信し、雄叫びをあげた。
ルフラム軍対ライ・トネル軍の戦は、ルフラム軍の勝利で終わった。
その後、ルフラムは真っ先に避雷針の元へと向かった。
そこには、避雷針を立てる為に犠牲になった仲間達の変わり果てた姿があった。
「みな、頑張りました」
避雷針の防御にあたっていたタリムがそう呟いた。
「あぁ、この目でしかと見届けた」
ルフラムは、ぎゅっと手を握り締め、仲間達をしっかりと弔った。
「この戦、我らの勝利だ!」
「うぉー!!」
この戦に勝ったルフラム達は、エレメンテ城へと一時帰城することとなった。




