ライ・トネルという人物
ここがどこだか分からない。異様に風が強い。
壁があるようでない、おそらく一直線の道の真ん中に立っている。
遠くに光が見える。そこに迎えば何かがあるのだろうか。
風に押し出されるように歩いていくと光に辿り着いた。
光に辿り着くと、そこには自然豊かな世界が広がっていた。
緑は豊かに映え、川は清らかに流れ、花は咲き、鳥が飛んでいる。
ここは天国か? そうでなければ一体なんなのだろう。
自分は一体、どこから来て、どこに向かうのだろうか。
それを考えだした頃には、体の違和感が強くなっていた。
バチバチと音を立て、体から電気が放出されている。
「うわっ! なんだこれ!」
「ふーん」
一人の女がトネルの事をジロジロと覗き込んでくる。
見られている恥ずかしさと、バチバチと跳ねている雷が当たらないか不安でたまらなかった。
「今度の傾国風はお前か。なかなか良いな」
「ふぇ! 誰?」
「私の事は誰でもいい、付いてこい」
特に行くところもなかったので、言われるがままに付いていった。
付いていった場所は大きな城の中で、そこには、たくさんの食材を侍女が並べていた。
「食え、まずは飯を食うところからだ」
「食べて良いの?」
「あぁ、あと、それ抑えられないのか?」
侍女達が珍しさと恐ろしさで柱の影に隠れてしまっている。
「ちょっと待ってろ、今ムのフーガを呼んでくる。そいつはルーンを無効化するルーンを持っているんだ」
「ルーン?」
分からない言葉が多かったが、この人達は敵ではないという事は十分に理解した。
ムのフーガが来た時には、放電がすっかり収まっていた。
この感覚を忘れるなと、さっきの女に念押しされて、ムのフーガがいなくなった後もなんとか、電撃を出さないようにすることが出来た。
料理はどれもおいしく、心の中まで満たされていくようだった。
自分は一体どこから来て、どうしてここにいるのだろう。
何も分からないが、恐らくそれはみんなそうなのだろうと何故かこの時そう理解した。
そこで、女がこういった。
「私がお前を導いてやろう」
「導く……?」
「あぁ、お前は私の思いのままに動けば良いし、そうする事で全ての悩みから解放される。何故生きるのか、何故存在するのか、そういった無限の悩みから私が解放してやろう」
トネルはこの人になら付いていっても良いと思える何かを強く感じ取った。
そして、それは付いていきたいに次第に変わっていった。
「あなたの為に、私は生きます」
「そう、それで良い」
トネルは考えるのを放棄した。
自身に与えられている能力を存分に磨き、この方の支えになる事だけを考えて生きていけば良い。
一つの駒として、与えられた役割をただ全うするだけの存在であれば良い。
そうしなければ、自分自身に価値は無い。
この美味しいご飯の味はすぐに消え去ってしまうのだ。
そうはしたくない、絶対にこの温もりだけは離したくない。
居場所と美味しいご飯は誰にでも与えられるものではない事をトネルはよく知っていた。
強い寂しさを持ってあの風の中を渡って来たすぐに、あの方に出会えたのはトネルの人生最大の幸福となった。
「僕は、あの方の言う通りに強くなる」
こうして、トネルの最強無敗の伝説が始まった。




