プロジェクト:BA(ブレイクアーマー)1/5
以前書いた短めの小説の、一パート目です。pixivでも投稿しています。そちらは五パート全て入っている代わりに、こちらで投稿するものと若干表現などに違いがあります。ご注意ください。
「ようこそ、我が強化装備破壊相談室へ」
扉を開けた先の部屋の隅。そこにある長椅子に座ったサングラスの中年男性は、そう言って彼女を迎えた。
「…よく来たのぉ」
しわがれた声で言うのは、彼の座る貫頭衣姿の老婆だ。体中がしわがれており、あまり健康そうには見えないが、その皺の下に隠れた目は、欲望に満たされて妖しく輝いている。
彼女の隣の、コードにサングラスの中年男性も、その奥から除く瞳は、欲望で満たされている。
…しかも、淫らな方面での、だ。
「…今週一人めの客だ、あんたは」
「歓迎するよ」
「ありがとうございますわ。…同類さん」
その言葉ににやりと笑う二人の視線の先、部屋の入り口に立つのは黒ずくめの少女だ。
黒のインナースーツに、黒の長手袋に、黒のハイソックス。そして、黒の袖なしの和服。そう言った衣装で固めていることと、髪と目も黒い事で、まるで暗闇がいるかのような印象を与える。
「…わたくしは、めんこと言います。今日は、ある依頼があって、参りましたわ」
そう言う彼女のすぐ横、内開きの扉の中央には、ある張り紙の存在が確認できる。
それは、以下のようなものだ。
『変身系ライバルの装備破壊はお任せあれ!我々が、確実に、彼、彼女をひん剥いて見せましょう!』
蛍光マーカーで書かれたそれは、部屋のある薄暗い廃駅の地下街で、妖しく光っている。
「…ここに来るということは、装備破壊の依頼だな?相手の性別は?男か?女か?どっちでもないか?それとも両方?またはそもそもそんな区別なしか?ガワと中で違ってたりするか?」
「わたくしが剥いてほしい相手は、女の子。体も心もですわ」
「…年齢はどれぐらいじゃ?」
急にギョロリと目を動かして問う老婆に、めんこは笑って答える。
「…可愛い、可愛い、成りたての十三歳ですわ」
「…中学生、か…」
老婆は言いながら肩を落とし、ため息をつく。
「…どうやら、こいつじゃなくて俺の担当になりそうだな。今回は」
対照的に明るい様子の男性は笑って立ち上がる。
「このB1が、お前の依頼を引き受けよう」
「ありがとうございますわ。わたくし、あの娘にどうしても勝ちたくて」
めんこも笑って言う。
「…ほう、勝ちたいと。よかったら事情を聞かせてもらえるか?」
「ええ。いいですわよ。情報は多い方がいいですものね」
そう言って、めんこは入ってすぐのところにある長椅子に座る。
「…わたくしが装備破壊して、剥いて、勝ちたい十三歳の娘。彼女の名は、しずくと言います」
「ほう、しずくちゃん、と」
「ええ。彼女、三年ほど前までわたくしがいた悪の組織…まぁ小学生に空から象のう…こをソフトクリーム状にかけるの主目的とするというある意味で鬼畜な組織だったんですけど」
「…そりゃぁ中々だな」
少し吹き出しつつ男性は言う。
「ええ。怪我したりするわけじゃありませんけど、尋常ない臭さを纏う羽目になる、なかなか鬼畜で…大変面白いものでしたわ」
めんこは過去を思い出しながら、恍惚とした表情を浮かべる。
そこでそのときの感覚を思い出し、数秒間浸ってしまう彼女。だが、すぐに目的を思い出し、恥ずかしそうに咳ばらいをして話を元に戻す。
「…まぁ、そんな組織をしずくは粉砕したのですわ。あるときから現れ、う…こ輸送ヘリを一刀両断したり、う…こ入りミサイルを謎ビームで消滅させたり。それを問題視した首領様が乗る、超次元う…こ式システムで動く最強のロボ、う…こんまーすらもその装備の鉄壁さを活かして破り、しずくは組織を壊滅させてしまったのです。そうなるまでにわたくしも何回か戦いましたが、ついに勝てずじまい。組織壊滅後も何度かやりあいましたが結果は変わらず。そして今に至りますわ」
その長いセリフを聞いたB1は、内容をかみ砕くようにゆっくりと頷いた後、言う。
「ふむふむ。…一応聞いておくがお前は、組織を崩壊させられたことに関連して、しずくちゃんに勝ちたいのか?」
「いえいえ。それはどうでもよくて。単純に、いい加減勝ちたいだけですわ」
右手を左右に振ってめんこは否定する。
「分かった。あくまでもめんこという一個人として彼女に勝ちたいんだな」
B1の確認に、彼女は頷く。
「…なら、俺がするのは鉄壁の装備の攻略法の分析と、それの伝達、または物ならその譲渡だな。それでお前が勝利するための」
「ええ、お願いしますわ」
笑って感謝するめんこに、B1は続ける。
「そのためには、お前にやってもらうことが二つ。一つは、そのしずくちゃんの同意なしの写真…できれば装備破壊で完全敗北した時の写真の譲渡契約の了承」
「ええ、勿論それは。お代金替わりですものね」
自分自身も写真を撮るのが楽しみために、めんこはおほほと笑う。
「…もう一つは、俺が情報収集をするために、お前にはしずくちゃんと一戦交えてもらう。いいな?」
「ええ、ええ、勿論ですわ。…しずくちゃんが次回、あの娘自身にも思いもよらない敗北をすると考えれば、負けが確定していても楽しみです」
そう言って、出された書類に素早くサインしためんこは立ち上がる。
同時に、B1も立ち上がり、そっと手を差し出す。
「それでは、契約の証に」
「ええ。握手を」
言葉とともに、二人の悪人は手を結ぶ。
一人の少女を下すという目的のもとに。