表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

第8話 狙うはアラル砦

【魔王城 大広間 族長会議】


族長会議は各種族の状況報告から始まった。

「青銅器の武器を頂いたことと、黒騎士殿の四人一組の戦法を学んだことで野生動物を狩れるようになった。おかげで食糧不足が解決。今年の冬は幼生を飢え死にさせずに済みそうじゃ」

ゴブリン長老ことゴルドがにこやかに報告を締めくくる。


「我らオーク族は以前から行っていた力押しの狩りに加えて、人間どもの戦術を参考にして罠の利用した狩りを始めた。その結果ゴブリン族と同じく食料事情は大きく改善している」

オーク一の腕力の持ち主リキーがゴルドの報告に続いた。


どの種族も改革によって食料供給量が増加している。


「各種族ともに飢え死にの心配がなくなったこと、我は嬉しく思う。この分だと魔族の人口も昔の数に戻るかもしれぬな」

報告を聞いた魔王は上機嫌だ。


「魔族の増加は喜ばしいことです。しかし、同時に問題も起こっています。今後人口が増えた場合、土地が足りなくなります。ゴブリン族とオーク族は特に出産のペースが早いので、来年にも居住地が不足するでしょう」

ズメイが書類をにらみながら発言した。


「一難去ってまた一難というわけか。解決策を持つものはいるか?」

魔王が辺りを見回す。


「アラル砦への侵攻を提案します。砦を落とせば魔王軍の領土はライン川以西にも広がり、現在の2倍以上になります」

俺は魔王の目をしっかりと見つめて言い切る。

土地が不足する以上、他所から奪い取るしかない。


「攻勢を唱えるとは、いつものタカアキらしくないな」

魔王が驚いて呟く。

大広間もざわついている。


俺は話を続けた。

「現在のアラル砦は補給が寸断されており、本来の力を発揮できません。対して我々魔王軍は改革が進み、戦闘力は向上しています。戦いは相対的なものです。戦力でこちらが有利な今は、攻めるべきです」


今までの魔王軍は弱く、改革を進めるための時間が必要だった。

だから守勢に回って補給路を攻撃し、時間を稼いだ。


だが今は違う。

遊撃戦を通して各種族のリーダーたちは戦術を理解した。

そして今の魔王軍には土地が必要だ。

だから攻勢に打って出る。


「砦を落とす必要があるのは分かります。しかし、遊撃戦をもっと続けてからの方がより有利に戦えると思います。」

プトーが不安げに発言した。


「私もプトーに賛成だ。我々魔王軍は黒騎士殿の改革のおかげで、強くなっていく。対してアラル砦の物資は減り続けるばかり。時間は我々に味方している。人口が増え始めるのは早くて来年頃。攻略を急がずに現状維持に留めるべきだと思う」

リザードマンの族長ダナソもプトーに同調する。


戦術を理解し始めたからこそ、攻勢に慎重になっている。

ミリオタとしては嬉しい成長だ。


だが攻めるべき時に動かず、敗北した軍は地球の歴史に多数存在する。

同じミスはしたくない。


見れば他の出席者たちは意見を決めかねているようだ。

ここが会議の勝負どころだ。


俺は説得を始める。

「人間たちもバカじゃない。今はいいようにやられていても、補給隊を守るための対策を考えるだろう。そうなってしまっては砦の攻略は困難だ」


「私はエルナーゼ王国軍が黒騎士殿の遊撃戦に対応できるとは思えない。ズメイ殿、ガルフ殿、補給を遮断し続けることはできないのですか?」

ダナソは遊撃隊指揮官たちに話を振った。


「難しいな。最近補給隊の動きが変わっている。馬車に積み込む物資を減らし、速力を上げているんだ。悔しいが今後は攻撃の難易度は上がっていくだろう」

ズメイが顔をしかめながら答える。


ズメイの言うことは事実だ。

実際に2巡目、3巡目の遊激戦では取り逃がしが出でいる。

永遠に補給隊を狩り続けることは不可能だろう。


だが、ダナソとプトーはなおも食い下がってきた。

「遊撃戦についてはわかりました。しかし、攻勢にでて敗北すれば人間共は大きく勢いづき、魔王軍は危機的状況になります。守勢を保っていれば大敗することはありません」


土地が足りない状況で守勢を保つのは緩やかな滅びの道だ。

最悪の場合、僅かな領土をめぐって魔族同士で争うことにすらなりかねない。

普段の彼らはここまで臆病ではない。


これまでの砦攻めでは多くの死者が出ている。

大勢の仲間を失った心の傷は簡単には埋まらない。

無意識のうちにアラル砦への恐れがあるのだ。


精神的な問題について理詰めで話しても納得させることは難しい。


俺が言葉に詰まっているとレーナが冷静な声で投げかけた。

「ダナソ、プトー、もしも人間が砦に大規模な増援が送って体勢を立て直せば、私たちが砦を落とすどころか、魔王城まで攻め込まれる可能性だってあるんだぞ。私たち魔王軍はどの道危機的状況だよ。感情論といわれるかもしれないけれど、私はタカアキを信じて腹をくくるよ」


レーナの発言の後、二人からの反論はなかった。

この日、魔王軍によるアラル砦総攻撃が決定した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ