迷いの少女
ある少女がいました。
少女は森の近くの村に住んでおり、お母さんが病気になってしまいまいました。
そこで少女は母のため、薬草を探しに一人で森に入りました。
ですが、案の定少女は迷いました。
右か左か、前か後ろかも分からず、ただ不安に怯え、歩いていました。
どれだけ歩いたのか分からなくなった頃、少女は家を見つけました。
「こんなところに家?」
少女も最初は怪しみましたが、この森の中で迷っていても後は死んでしまうのを待つだけなので、勇気を出して入ることにしました。
「誰か…いるのかな?」
コンコン
恐る恐るドアをノックすると中から静かに音が近づいてきます。
ガチャ
「あ、あの、すいません。迷ったので助けてもらえないでしょうか?」
出てきたのは男の人でした。男の人は背が高く、生きているのか死んでいるのかわからないような表情をしていました。
「え、えっとー」
「人?」
「え?」
男の人は何故かあやふやな言葉で話しかけてきます。
「そ、そうですけど」
「そう、か」
男の人はまるで言葉を思い出すかのようにゆっくりしゃべります。
「あ、あの、森で迷ったので助けてもらえませんか?」
「?」
男の人は理解できていないようでした。なので少女はゆっくりしゃべります。
「森で、迷ったから、助けて」
「ん」
男の人は理解したようです。ドアの前から動き、少女を中に入れます。
「ありがとうございま…え?」
家の中はひどいものでした。いろんなものが散らかり、荒れていました。外から見れば綺麗な家ですが、その外観からは想像もつかないほど荒れていました。
「ええ…」
さすがの少女も引いてしまいます。男の人はものともせず家の中を進みます。その後を少女は必死についていきます。
「あの…片付けないんですか?」
「いつか、するつもり、だった」
そう答えながら、男の人は少女を机の椅子へ案内します。
「お茶、入れて、くる」
「あ、ありがとうございます」
そう言い男の人はどこかにいってしまいました。
(変わった人だなぁ)
そう思いながら、周りを見回します。周りには沢山のものがありました。古い本や紙、ガラスの棒や何かの草などいろんなものがありました。
「そもそも、こんな所に人住んでるんだ。どうやって生活してきたんだろ?」
たしかにそうです。ここは森のかなり深い所です。ここから少女が住んでいる村までかなりかかります。それに、少女は男の人を村で一度も見たことがありませんでした。
「まあでもそのおかげでなんとか助かったからいいか」
そんなことをしていると、男の人がティーカップとお茶を持って戻ってきました。そしてティーカップにお茶を注ぎ、少女の前におきました。
「い、頂きます」
恐る恐るそのお茶を飲みます。もしかすると男の人は悪い人で薬が入れられているかも知れません。
「あ、おいしい…」
どうやら心配しすぎだったようです。
「あ、そうだ…名前」
少女は名前を名乗ってないし、男の人の名前も聞いてないなと思い自己紹介をすることにしました。
「私はユリって言います。お兄さんの名前を聞いてもいいですか?」
「名前…わからない」
「わからない?」
「覚えて、ない」
「え?」
ユリは動揺しました。名前を覚えていないなんて人初めて見たからです。
「なんか…ないんですか?自分の名前がわかるものとか」
「ない」
「そうですか…」
これじゃどうしようもありません。なのでユリは諦め、次の話をします。
「私、この森の近くの村に住んでて、母が病気になってそれを治すための薬草を取りに森に入ったんです。でも迷ってしまって、だんだん暗くなってきてもうだめだって思った時に、お兄さんの家を見つけたんです。」
「もしお兄さんが良かったら、しばらくここに居させてもらえませんか?」
「分かった」
「え?いいんですか?ありがとうございます!」
こうして2人の短い生活が始まりました。