21 お友達大作戦
私の「ファレルファタルムとお友達になろう大作戦」はこうだ。
まずは第一印象。安心安全を与える最初の一発目、大勝負。
自己紹介はここまでで何とかなった。
ファリーは絵本の内容から想像していた通りの美女の姿で現れた。
ドラゴンの姿でのぱっちり開いた爬虫類目もイメージはしていたけれど、穏やかで麗らかで優しい瞳をゆっくりと私を見、話を聞いてくれた。
ファーストコンタクトはそれほど悪いものではなかったと思う。
続いてプレゼント作戦。
これも既に実証済みで、彼女は今私の前でハムとポテトサラダを挟んだサンドウィッチらしきものを美味しそうに頬張ってくれている。
この世界にこの料理を命名したボードゲーム好きな伯爵が居るかどうかは解らないけれど、平たいパン二枚で挟んだそれらしきものは絵本の中でお腹を空かせていたファリーが最初に街の人から貰った食べ物だ。
その味を記憶しているファリーにとっては特別な食事のはずだと思った私はこれを選んだ。
紙袋を見つめたままなかなか受け取ってはくれないファリーだったけれど、中身を取り出して私とメナちゃんで先に食べて見せたら口にしてくれた。
だからこの食べ物をあげるという二番目の作戦も大成功でした。
「ファリー、私の名前覚えてくれた?」
「ええ、ユーレカさん。それにメナチャンさんですね」
「んぴぴ!」
「うん。メナちゃんにさん付けはしなくていいんだけどね。……さてと。それじゃあ今から私たちと街にお出掛けしましょう!」
名前を呼んでくれる程度には打ち解けたみたい。
そうして私の大作戦は第三段階に入る。
次はファリーを街へと連れ出して一緒に色々見て回り、懐かしんでもらって仲を深める。
一通り交流すれば私たちはもう友達同士と言えるはず。
実際、私自身にもまだまだ港街の中には行ったことのない場所がたくさんあるし、見たことのない景色もたんと控えている。
何より私には花より団子……というか、お洋服を買う必要がないメナちゃんと、口を出さずに財布係と荷物持ちだけしていることが紳士の役目だと勘違いしているエルトダウンくらいしかお買い物パートナーがいなかった。 リメロに声を掛けてみても良かったのだけれど忙しそうだったしね。
自分で言うのもなんだけど私だって年頃の女の子だし、折角の異世界で当分帰れる見込みがないのならば思いっきりおしゃれがしたい。
二人には悪いけれど変な気を使わずに一緒にブティックを巡れる可愛い友達が欲しかった。
味方になってくれる格好いいドラゴンを呼び出すつもりで始めたことだけれども、ファリーの様子や容姿を見たらそういうお友達にもなってくれそうだと確信していた。
だから彼女の手を引いて街に連れて行こうって気になれたのだ。




