第一章-2
魔物(獣系)を端からぶっ飛ばしながら進む事更に一時間。代わり映えしなかった森を遂に抜けた。そこで一旦停止して車内から辺りを見渡す。平原と道が線の様に見える小高い丘。あの先に何があるのか。少しワクワクしてきた。
「にしても、まさか水も食料も簡単に手に入るとはな」
そう、本来苦労なり金銭を入手するなりして初めて手に入れるべきモノは、シエルのスキル・果て無き境界線で言葉通り簡単に手に入れた。何でも境界線の溜まり場に色々と流れ着くらしく、スキルで時間経過を止めれば半永久的に腐らないらしい。自動補給付きの空間収納とかチートですやん。
「そうでもないよ。流れ着く品物はハルキの世界の季節に依存するから偏りが凄いし、ネットショップの様に品物を選べない。最初の頃、食料の類いがアイスの箱・素麺一式・スイカの山の三品だけしか流れて来なかった日はちょっとした恐怖を感じたよ」
「水分過多にも程があるわ」
今は大丈夫なんだろうか。遠い眼をしたシエルを横目に水を飲む。異世界で初めて飲む水がコンビニに販売されているペットボトルの飲料水とか、喜ぶべきなんだろうか。
「スイカ、あの丘くらいの山であるんだよね…」
俺にはどうにもできそうにないので、そっとしておこう。小休憩して再度発進する。途中、少し離れた草場の影から緑色の生物が飛び出てくる。
『にゅーちゃれんじゃーだー』
嬉しそうに言うアル。目を細めて良く見ると、小柄で人型で武器を持った緑色が複数現れて進路を塞いでニタニタしていた。もしかしてこれ、ファンタジーでは定番のゴブリンってヤツか?
「ゴブリンだね。何処にでもいる魔物だよ。人型だけど魔族じゃないんだ」
「魔物と魔族の違いは何なんだ?」
「魔族は種族特徴があるだけで人と同じで、魔力溜まりと呼ばれる場所から出現するのが魔物だね。定番はやっぱりダンジョンかな。人や生物の立ち寄らない場所にある魔力が淀んで魔力溜まりが出来る。その空間に適した魔力が形を成して魔物として出現するんだ」
「出現、ってことは生き物じゃないと?」
「魔力の凝縮物体、もしくは造られた悪意なんて言われてるくらいだからね」
ギャギャー! と鳴き声を上げて接近してきた。余程自信があるのか分かってないのか、全員で突っ込んで来て、
『せんてひっしょー』
ぶっ飛ばされたので脅威にすらならなかったが。