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プロローグ-終

 軽トラ君ことアルの名付けが終わったので、一先ずアル本体の確認をする。運転席は二人乗りの狭さのままだし、小型コンテナ付きの変わらないごく普通の配達用軽トラのままである。正直少しホッとした。俺のスキル・物体同調(真)で見た目も中身も直っている事は分かっていたものの、自分自身でスキルを使っている感覚が無いのでイマイチ実感に欠けるのだ。


 「大丈夫そうだし、サッサと移動するか」


 俺はシエルin勇者の剣を持って座席の後ろに積み込もうとする。が、そこで鞘が無いのに剥き身のまま置くのか、という事に気付いた。流石にそのままでは危険だなと思っていたら半透明のまま浮遊して付いてきたシエルが空間に手を翳した。


 「連結(コネクト)開放(リリース)


 そう言うと空間に穴が空き、鞘が出現する。背負ったり腰溜めに付けれそうなベルトらしきモノが付いた以外は特に目立つ装飾もない普通の鞘だった。それを受け取り勇者の剣を納めて積み込んだ。背負ったらゲームの勇者達が付けてそうな見た目になりそうだ。


 「今のもシエルのスキルか?」


 「そうだね。私のスキル・果て無き境界線(ボーダーレス)の本来のスキルとしての使い方の一つだね。異世界転生とかでは割とメジャーな空間収納スキルみたいなモノさ」


 「商人が欲しがるアレか」


 時間経過無しでかなりの量を出し入れ自由に運べるってとんでもスキルだよな。異世界転生とかで神様勢がまるで定番かの様に付けてくれるから有難味が薄いけど。


 「魔力依存だから普通の商人には使えないけどね。私くらいの魔力が無いと金貨袋くらいしか持ち運べないと思うよ」


 「そうなのか…イマイチだな。あぁでも金貨袋程度でも商人にとっては使い勝手はいいんじゃないか?」 


 財布が取られないだけでも十分だと思う。何せファンタジーの世界。町中に物取りとか出てくるだろうからな。危険は回避するに越した事は無い。


 「かもね。でも商人は金貨袋より沢山の商品を移動させたいだろうからね」


 「だよなぁ。無いよりマシ程度のスキルに成り下がるな」


 有難味が出るのはちゃんと理由あってのスキルだからって事か。


 「だね。ハルキは私を背負ったら問題無く使えるし移動用の馬車より高性能のアル君が居るから商人になったら大成功間違い無しだね」


 「そうだな。元々職業が配達人だし、街に着いたら配達業でも始めるかな」


 どの道金稼ぎはしなければいけないなら、知識や技術を持っているこの仕事が良いだろう。というより戦いなどできる気がしない。スキルや勇者の剣があろうが俺は、所詮一般人なのだから。


 『ぼくもがんばるー』


 話を聞いていたアルが楽しそうに答える。音楽プレーヤーのモニターに


 (´・ω・`)


 と表示された。異世界の知識の適合早すぎやしませんかね。


 「じゃあ、出発しますか」


 軽トラのスイッチを入れる。ブロロロ、とエンジンの駆動音がした。レバーを入れてハンドルを回す。軽トラを反転させると、道が見えた。人が通る用の荒く踏み固められた地面が見える。これはタイヤに負担が掛かりそうだ。


 「やっぱ異世界って事か。軽トラには辛い道のりになりそうだ」


 「大丈夫さ。ここでアル君の出番だ。アル君、ステータスを見せて」 


 『はーい』


━━━━━━━━━━━━

アル

種族 魔法生命体(ゴーレム)

職業 勇車(半)

状態 良好


スキル 魔力吸収(小)


会得魔法

中級 風 地 光 雷

◁▶

━━━━━━━━━━━━


 モニターにアルのステータスが表示された。相変わらずツッコミを入れたくなる内容がある。というか勇車(半)て。遂に勇()ですらない。車ではあるけどそれで良いのかステータス欄の職業よ。


 「アル君は地属性の中級魔法を使える。なら魔法で地面を平らにすれば良いのさ」


 「いや、簡単に言うけど魔力はどうするんだ?」


 中級魔法って言うくらいだしそこそこの魔力消費があると思うんだが。


 「ガソリンメーターの部分を見て貰えば分かるけど、この異世界にガソリンなんてものは無い。そのメーターは今、魔力メーターになっているんだ。魔法生命体であるアル君の活動時間の目安になる」


 そういや確認して無かった。今は満タンだな。


 「最初にアル君を直した時に魔力も込めたんだよ。これだけの魔力があれば移動に支障は無い。それにアル君のスキルでも魔力を徐々に回復できるから使い続けてもある程度は問題無く動ける筈さ」


 「魔力吸収(小)か。空気中の魔力でも取り込むのか?」


 「うん。酸素と同じ様なモノだと思っていいよ。魔力吸収スキルは取り込む量を増やす事が出来るから魔力持ちなら欲しいスキルだね」


 自然回復で使える魔法が多くなるなら確かに欲しいスキルだな。


 「シエルも持っているのか?」


 「無いよ? そもそも私は魔法自体使えないし」


 「え? でも魔力込めたり出来るなら使えるんじゃないのか?」


 「魔力は物体であるなら持っているモノだけど、魔法は天性的な属性が無いと使えないんだよ。特に魔族はスキル特化か魔法特化かにハッキリと分かれているんだ。私は前者だね」


 「なる程。そうなるとアルは魔法特化になりそうだな」


 天性的な属性持ちで、魔力吸収(小)まであるなら魔法に向いてるしな。なら心配はいらないか。俺はアルに地属性の魔法の使用を頼む事にした。


 『まほーつかうねー』


 アルの手というか前輪、その数メートル前の地面が隆起したかと思うと真っ直ぐの路面となって前に進んでいく。すると地面が舗装された道路のようにキレイになった。


 「凄いな。アスファルト舗装の道路みたいだ」


 「うん。コレなら問題無く走れそうだね」


 「なら今度こそ、出発しますか」


 俺達は魔法で路面を舗装した道を走り出した。


 『じめんきれい、たのしー』


 走り出したアルが楽しそうな声で魔法で道を舗装していく。デコボコした地面が次々と平らな地面に変わっていった。

  

 

 コレが後で問題なるとは、思わなかったのだが。

 




 

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