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プロローグ-3

「で、次は軽トラか?」


 半透明の肉体を完全に吸い込まれたシエルin勇者の剣に向かって話しかける。すると中心の宝石部分から先程の姿の半透明のシエルが出てきた。空島にある勇者の剣かよ。


 「そうだね。軽トラ君も直さないとね」


 「君て。そういやさっきも言ってたけど、まるで生き物みたいに言うな」


 軽トラは勇者とはいえ無機物だぞ?


 「え? 軽トラ君は勇者になった時点で生命体になったよ?」


 「冗談だろ?」


 「本当だよ。正確には魔法生命体(ゴーレム)だけどね。この世界にはファンタジー定番の魔力で動く木や岩から鉱石に至るまで多様な種類の無機物の巨人として、様々なダンジョンに生息しているよ。まぁ軽トラ君は今までに無い機械をベースにしたからダンジョンの魔法生命体とは何かしら違う所はあると思うけど」


 軽トラで勇者でゴーレムとかてんこ盛りだな。その内機械の生命体みたく人型に変形したりしないよな?


 「変形と合体は浪漫だからして欲しいけどね」


 「そうだな…シエル、時々心読んでないか?」


 「趣味が近いからこそ分かると言う事さ」


 「納得した」


 



 彼らが軽トラに取り掛かろうとした同時刻、世界各地では異変を感じ取った者達が動き出していた。


 -リトリア共和国・王城-


 「勇者の聖剣が引き抜かれたか…」


 「リトリア王、それは新たな勇者の誕生という事ですか」


 「うむ。同時に魔王の誕生を意味する証だ。大臣、早急に騎士団を封印の地へ向かわせよ!」


 「はっ!」



 -教導連合国ファルスヴァール・大神殿-


 「先程、神託(オラクル)を受け取りました。世界の危機が迫っています」


 「聖女様。それは勇者の誕生という事ですね」


 「はい。先ずはリトリア共和国に協力の為の師団を送りましょう…ふぇっ!?」


 「聖女様? もしや未来視(ビジョン)で勇者が何者か見えたのですか?」


 「箱の、勇者…?」


 「はい?」


 

 -魔国ミストラル・古城-


 「ふむ、何やら懐かしき風よ」


 「ヨルム様?」


 「魔王など、今更必要無いというのに」


 



 ててーん! 幻のファンファーレが聞こえる気がする。なんてノリで軽トラが直った。


「綺麗に直るモンだな」


「ふふん、どやぁ!」


 直したのは俺でもあるんですけどね。物体同調(真)を使用してシエルから魔力を軽トラに送ると、淡い光を纏って中破した部分が動画の逆再生みたく破片やへこみが戻っていった。この説明だとシエルのおかげみたいに聞こえるけど、実物の形状を正確に把握していないと魔法生命体は直せないので、元々の軽トラの形を知っていて、かつ物体同調(真)を持つ俺が居ないと元には戻らなかったのだ。


 「コレだとシエルは単なる魔力タンクって事か。ぼよんぼよんの」


 「せめてぽよんぽよんにしてよ。ふとましい感じに聞こえるじゃないか」


 「同じだろ?」


 「響きと可愛らしさが違うかな。ピンクの丸いののイメージで」


 「勇者繋がりってか。どっちかと言えば悪魔じゃないのか?」


 「アレのイメージは大体漫画のせいだから。可愛いは境界線なんて無い(ボーダーレス)!」


 「じゃあぽよんぽよんで」


 「やった!」


 魔力タンク呼ばわりは良いのか? と思っていたがぽよんぽよんのシエル的には軽トラを直した魔力でも一割も消費してないらしいので強ち間違って無いのかもしれない。と言ってもそもそも一般的な魔力量がどれほどかの基準も分からないので驚きようも無いのだが。


 「それでシエル、軽トラは生命体になったんだよな?」


 「そうだね。変化が分からないのは生命体になった瞬間は機能停止状態から始まっていたから現在再起動、いや初期設定に時間が掛かっているんだよ。生命体と言っても基本的にはプログラムによって動くロボットの様な存在だからね」


 「そっかーロボッ『あさだー!おはよーございまーす!!』おはようございます?」


 突然、目の前の軽トラが喋った。初期設定が終わったのか。にしてもそんな口調なのか軽トラ君よ。口が無いのにどうやって発声してるか分からないけどなHAHAHA!


 「おはよう軽トラ君。車のスピーカーがあるから喋れるようにはなると思ってたよ」


 シエルが軽トラ君に手を降る。軽トラ君は前輪を左右に動かした。手を降っている様だ。


 「音楽とかラジオのスピーカーを利用してるのか。こっちの言葉はカーナビの音声認識で聞いてるのか?」


 『そうだよー。ぼくのスキルでしんかしたから、まわりのこえもきこえるのー』


 やや高音の機械的な声。何となく歌って踊れる音声読み上げソフトのキャラクターを思い出すな。アレと違って声に違和感が無いのは生命体だからだろうか。


 「スゴイな。でも進化って魔法生命体にもスキルはあるのか?」


 「勿論さ。自己進化というスキルは魔法生命体の特徴と言ってもいい。本来は鉱物を取り込む事でその特性を引き継ぐのが基本なんだけど、軽トラ君は異世界から来た軽トラという鉱物を含んだ車を取り込んでいるから今までに無い進化が見られると思うよ」


 横に居たシエルは楽しそうに答える。本当にその内、変形とかしないよな。


 『ねーねーあいぼー』


 「…相棒って俺か? あぁ、そうか。片割れだもんな。どうした?」


 『なまえつけてー』


 「名前、決まってないのか?」


 魔法生命体ってのは生命体になったのに名前が無いのか。RPGのゴーレムは製作者が居るのが大半だから名前も決まっているが、軽トラ君は製作者が居ても生命体では無かったから製作者の記憶までは無いのかも知れない。


 「魔法生命体の名前、所謂ネームドは鉱物名+ゴーレムってのが基本だね」


 「軽トラは複合金属だし何使ってるかあんまり知らないんだが」


 「ならハルキのセンスに任せるしかないね」


 『あいぼーにまかせるー』


 「名付け自体あまりした事無いから後悔すんなよ。じゃあ───」




 アルミ合金の頭取って、()()で。

 

 


 特に不満も無く、軽トラ君の名前がアルに決まった。







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