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9 勇者討伐

「やっちゃたよ、おい!マックさんやっちまったよ」


 草原に勇者が横たわっている。


 その勇者を前に保安官のマックがサブマシンガンを持って立っている。


 マックはホルスターから大口径のハンドガンを抜いて倒れている勇者に恐る恐る近づく。


『さすが勇者といわれるだけはあった。リドリー君の力がなければ俺がやられていた』


 岩陰から覗いていた人たちがマックと勇者の様子を探る。

 その視線の集まる中でマックは勇者の後頭部に向けて何度も銃弾を叩き込む。

 勇者の頭がザクロの様に砕け散るが何度もリロードをしては撃ち続けるマック。


『ここまでやれば安心か』


 マックが銃を収めたと同時に人々の歓声が沸き上がる。


「マック様、ありがとうございました」


 マックの前に聖女を始めとする少女たち3人が跪く。


「礼を言われる筋合いじゃない、これが俺の仕事だ」




 事の始まりはノートン領ガレフの街に勇者が現れたことから始まる。

 ノートン辺境伯が王都からやってきた勇者を出迎えるがこの平和な時に勇者に何かしてもらうこともなく適当に接待して王都に追い返すつもりであった。

 無論このことはマーデラス国王からも事前に連絡があり魔王討伐など寝た子を起こすようなマネをさせないように厳命されていた。


 魔王が居る限り勇者が生まれるのはこの世界では必然である。

 平和の時であってもどこからともなく勇者というものが現れてしまう。

 むろん偽勇者も現れるが教会の勇者判定の儀式で認定されない限りは勇者とは認められない。

 我こそはと思う者がしょっちゅう教会に来ては儀式を行えと騒ぐようになり、だんだん面倒くさくなってきた教会は年に1度儀式を取り計らうことにしていた。


 先代勇者もその前の勇者も特にやることはなかったのでその力を国民の為に治水や治安、医療にあてて寿命を全うしていたが今回の勇者は血の気が多く乱暴者の上に好色であった。


 勇者は街につくと早速街で目に付いた少女に手を出そうとしたが相手が悪かった。

『荒野の狼』が保護している少女であったのだ。

 当然、一緒にいた『荒野の狼』メンバーとトラブルとなる。

『荒野の狼』がらみのトラブルはマックの管轄となっていた。


 領主から無線で連絡を受け馬に乗って現場に急行したマックの目の前には勇者と向き合い泣いている少女とそれを庇うヘンドリック達がいた。


「俺は勇者だ!逆らうことは許さん。とっととその女をこちらに引き渡せ」


 マックは勇者の前に立ちふさがる。


「なんだ貴様は!」


「ここの保安官のマックです。あなたが勇者ですね」


「様をつけろ!様を!」


「領主から伺っていますが何やら魔王を討伐する途中にここに寄られたとか」


 勇者はフン!と胸を張る。


「誰の命令で魔王討伐をするんですか」


「俺は勇者だ!魔王を討伐するのが俺の使命だ!」


「いえ、ですから誰に頼まれてと聞いているんですが」


「馬鹿か貴様は!俺は勇者だ、言われなくても魔王を討伐するのは当たり前だろう!」


「では勝手にやってるんですか」

 

「ああそうだ!それがどうした!」


「帰っていただけませんか。保安官権限でここは見逃しますんで」


 言い合いになった挙句、激高した勇者はマックに決闘を申し込んできた。


 決闘の日時が決まる。


 マックは領主の息子のリドリーに勇者とは何か事細かに聞くことにした。


 勇者は常人よりも魔力量が高くそれを使って自分の体を強化することによってとんでもなく早く動き、ありえない力で剣を振りあまつさえ強力な結解を張り敵の攻撃を跳ね返すとのことであった。

 マックはリドリーを『荒野の狼』のベースに案内した。

 リドリーの見ている前で各種武器を試しうちするマック。


「勝てそうな武器はありますか」


「この銃弾というものが当たれば勇者と言われた者でもただでは済まないと思いますが結解を壊すのは無理でしょうね」


「弾がはじかれると」


「はい、ですがすり抜ける魔法を銃弾に込めておけば何とかなると思います。ですが勇者の早い動きにマックさんが付いていけるかが課題になるかと」


 マックはにやりと笑うとサブマシンガンをヘンドリックから受け取る。


 草原に向かって連続的に打ち出される銃弾。


「どうですか」


「これなら大丈夫です」


「ではお願いがあるのですが」


 『荒野の狼』のベースの中でリドリーがまるで工場でバイトしている学生がごとく死んだ目で弾の一発一発に魔法を込める姿に感銘を受ける領主。


 勇者を倒す力を貸した褒美に宇宙の戦士ガンストームの巨大立像を建てる許可を受けたリドリーではあったが『しばらく魔法は使いたくない』といって帰っていった。


 ちなみにマックにおとがめはなく、勇者に無理やり付き従わされていた聖女たちもニコニコして王都に帰っていった。


 マックの雄姿をみた公爵令嬢アレイシアはリドリーの為に作った『荒野の狼』風の皮の上下に足りないものをマックを見て思い出し肩パットの製作に取り掛かることを決意した。




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