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21 見える未来と故郷の歌

 巨大な船が大海原に浮かび時速500キロにも及ぶ列車が大陸を縦断しマッハ1近くで大空を飛ぶジェット旅客機、あらゆる建設機械が大地を変えていく。

 マックの持ち込んだパソコンで、輝いていた頃の地球の情報が動画で映し出されそれが何であるか大まかにアナウンスされる。


「約100年後に我々とメタリカ国が目指し実現する世界だとヘンドリックが言っておりました大統領。細かい内容は投資相談会で説明が有ります。その際個別に説明を受け付けるそうです」


 呆気にとられるフィリップ大統領と側近たち。


「たった100年でこの様な世界が実現されるなどと言われても」


 首相である竜族の女性が信じられない目でマックを見る。

 竜の一族の中で最も小さく弱い種族であり同じ竜族から滅ぼされる寸前に先代魔王に保護され現在メタリカ国の首相にまで上り詰めた才女。


「しかしながら環境などが心配である」


 エルフである環境大臣の男が心配そうである。


「その件に尽きましてはハンナという『荒野の狼』所属の女性がお答えするものかと思います。質問事項をまとめて大統領秘書にお伝えください」


 マックはそう言うとパソコンをジュラルミンケースにしまう。


「以上です大統領」


「うむ、このような情報が漏れた場合、これを実現できるデータがあなた達のベースにあるとわかれば大変な事になる。早急にベース全体は無理としても情報機器はこちらに移動したほうがいいな」


「はい、マーデラス王国始め人族に限らずほぼ全ての国において我々の政治体制に危惧を抱いているものと判明致しました。ヘンドリックは焦っております」


「そうだろう、我が国は長い歴史の中で政治に行き詰まり皆がこのままではと環境の厳しいメタリカの幾末を憂いていた。他の国よりも進んだ魔法というものはあったが個人の才覚に頼っていたらいつか破綻するのは自覚していた故皆勉学に励んでいたがビジョンが見えなかった。君たちが未来を見せてくれたからこそ国民が社会を変えることに協力してくれた。我が国にくらべれば安穏と暮らしている他の国ではなかなか物事を変えるのは難しい、いや変えようとすれば抑圧されるであろう云々かんぬん」


 なかなかくどいフィリップ大統領の言葉にイライラし始める『荒野の狼』一行。

 温泉に行きたくて仕方ないのだ。


「あ、すまぬなくどくなってしまった。細かいことは投資説明会で話すのであった、申し訳ない。長旅で疲れているであろうに我も気の利かない男だ。そう言えば佐々木の配下の者共が温泉旅館に着手してそろそろ一年となった、なかなかこっておってな柱などはわざわざゴジラス山までいって魔獣と戦いながら苦心惨憺して切り倒してトラックで運んだらしい。我もこの前本館が出来たので招待されたのだが、それはもう美しい木目であった、しかも時間によって木目が変わるとは驚いた。また各部屋の作りもこっておってな中には温泉風呂付きの」


 本人に悪気は無いと言うよりも親切心で話始めると止まらないフィリップ大統領の袖を妹のエミーリアが引っ張るとハッと気づきやっと口を閉じた。

 ただ単なる妹が何故大統領のそばにいつもいるのかやっと分かった『荒野の狼』一行。

 『荒野の狼』という組織は適性と本人のやる気を考えて仕事を割り振っているのでエミーリアが何故そこにいるのか疑問だった。

 こういうことだったのかとみんな思った。


 ちなみに後々理解されるのだがエミーリアの存在は生存環境が厳しいこの国において為政者である大統領にとっては大切なご意見番であり民衆にとってもメタリカ国を実質的に変えた人物だと認識されていたが、そういう人物であるが故に付け入れられてしまう事も多々あった。

 エミーリアは優しいのである。

 相手の立場に立ってものを考えられる上に『話せば分かる』という非常に平和的思考の女性なのだ。

 はっきり言ってこの世界において頭がお花畑である。

 しかも責任感があり独善的な性格を持ち合わせている。

 まさしくお姫様である。

 平和主義であり全ての生きとし生けるものは平等に扱われなければならないという信念を持っているのでベジタリアンだったのだがさすがに辛い今日この頃と思っていたとき佐々木たちに精進料理というものを教わりまだいけると頑張る健気なお姫様。

 とてもいい人そうなリベラル思考なお姫様、もし国を動かしている兄が居なければ間違いなく現実を見ない小うるさいだけの政治家になっていた可能性があった。

 友愛を説き誰の話もうんうんと聴いてしまう。

 ケーニッヒ王国に囚われたのもある意味本人の行き過ぎたリベラルな思考が原因だったのである。


 この事に気づいていないマック達の冒険は続くがここで一旦話を戻す。


 ようやく大統領の話も終わり佐々木たちが造っている温泉旅館に行くことになったその時マックが二枚の用紙を大統領に差し出す。


 いいかげんにしやがれとみんな思っていたが大統領官邸であるので抑える。

 レイチェルだけは目を輝かせている。


「これは何かな」


「はい、まずは投資説明会の日程と時間と注意事項が記入されたものです。それともう一つがここにいるレイチェル始めベースの者たちが是非ともフィリップ大統領にご出席頂き懇親会を催したいとのことで出席の可否をお聞きしたいと言ったものでこれを私が作りました」


「そうか、その気持ちうれしく思うぞ」


 そう言って大統領は『出席』と記入された個所を丸で囲んだ。

 レイチェルの目がキラリと光りぐっと拳が握り締められる。


 すべきことを済ましようやく大統領と共に温泉旅館に向かう一行。

 さすがに夕闇迫る街の中を車やバイクで爆走する事も憚られるだろうと全員馬車に乗り込む。

 のんびりと進む馬車。

 行き交う人も少なく時折明かりのついた窓から笑い声が漏れてくる。

 『この国を発展させ誰も悲しませないようにしたい』とヘンドリックは言っていたが本当にそれでいいのか少し疑問なマック。


 明かりが増え労働者らしきドワーフや巨人族などの喧騒が聞こえ始める。

 その喧騒に包まれた場所は佐々木たちがここで最初に始めたプロジェクト『居酒屋』。

 前回マック達が来たのは半年前、出来たばかりでその時は客もまばらで静かだったがいまは大盛況のようである。


 歌が聞こえてくる。

 前回来た時居合わせた他国で迫害され這々の体でメタリカ国にやってきたというドワーフたちの伝統的な歌と思い耳を澄ませるマック。


「新宿の~片隅で~ぬれた女の目を拭い~縋るその手を振りほどき、男度胸の~男度胸の~・・・」


 少し前佐々木にどんな音楽を聴いているのかと聞いたときスマホからながれてきた曲が聞こえてきた。


 

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