ろく
時間が過ぎ、夜の9時を少し回ったところで夜の部もお開きの時間となった、今度は本当に短めな挨拶を恩師が済ませると拍手で宴会は終わった。
皆が足早に店を出ていき、酒を飲まずに車で帰る者たちは駐車場へ向かい、電車に乗る者は時間を気にしながら駅へと急いで行ってしまった。
男友達のほとんどが電車で来ていたから時間を気にしながら、また会おうとだけ簡単な言葉を交わして駅へと足早に行ってしまい、俺は軽く手を振りながら見送ると、彼女が他の幹事たちと一緒に店から出てきた。
「幹事おつかれさま」
「もしかして待っていてくれたの?」
「まさか・・・俺は歩きだからな、別に明日東京に戻るだけだから、慌ててもいないし」
他の幹事たちも車で来ていたから簡単に挨拶を済ませると駐車場に行ってしまい、彼女と2人きりになった。
「旦那さんが迎えに来てくれるんだって言ってたよね、もう連絡したの?」
「まだ・・・」
「そっか、早く連絡しないと心配するんじゃないか?」
「少し酔っちゃったからな、少し覚まさないとお義母さんに怒られちゃうかな」
「厳しい人なのか?」
「そうでもないけど・・・ちょっと息が詰まるときはあるかなぁ」
「嫁姑問題か・・・俺にはわからないけどな」
少し空気が冷たかったから、自動販売機で温かい缶コーヒーを買って彼女に渡した。
「温かいね、もう少し話がしたいんだけど、良いかな?」
「俺は良いよ、少し家の方に歩きながらで良いか?」
「うん、それなら実家まで行って、そこに迎えに来てもらう」
彼女は缶コーヒーを両手で握りしめながらゆっくりと俺の横を歩いている。
「小さい頃は寒いときには必ず手を繋いでくれたのになぁ」
「何言ってんだよ、この年で恋人同士でもないのに手なんか繋げるかよ、こんな田舎じゃ誰が見てるかわからないだろ」
「そんなにムキにならなくたっていいじゃない、昔の話をしただけなのに」
俺は何かを見透かされたような気がして黙ってしまった。
「なんかカッコイイ大人になったよね、同窓会の会場でもちょっと浮いている感じでさ、最初話しかけるとき少し緊張したんだけど、話をしたらやっぱり変わらないところもあって良かった」
「なんだよ、変わらないところって」
「友達と話しているときの口調とか、癖とか・・・」
「癖?」
「そう、私と話をするときには目をほとんど見ないし、口調も少しぶっきらぼうなんだけど、私を見守るように見てくれるときはすっごく優しい目をするんだよ」
「そうかなぁ」
彼女の家に向って歩いていると、やがて思い出のあの場所に来た。




