うそとなりらん
何回まで嘘を吐いていいと
決まっていたなら
そうしたら君の
ホントの言葉を聞けたかな
それとも黙って
何も言わなかったかな
今でも
君がわからないまま
僕はまた
君に問おうとする
「初めまして」って
挨拶もできない頃から
僕らは一緒に大きくなった
親友とか竹馬の友とか
そんな言葉の通りの関係
互いの癖を言い合ったら
きっと日が暮れてしまうくらいに
「これからもずっとずっと一緒だよ」
なんて言う必要もないほど
いつまでも隣に居てくれた
僕はぎゅっと君の手を握って
小さくありがとうと呟いた
時が過ぎると共に
僕らも大きくなって
それでも一緒に歩んでいた
はずだった
いつからだろうか君は
まるで駆けていくように
僕を置き去りにして前へ進む
輝く君はあまりに眩しすぎた
初めて君に嫉妬して
そんな自分が嫌いになって
どうにかしたいと思っても
追い縋れるほど器用じゃなくて
ああもう無理だと
僕は君の手を離した
ゆっくりとゆっくりと
開いていた隙間は
気付いたら手も届かないくらいに
僕らは引き裂かれて
君と関わらない日々に
退屈する間もなく僕は
自分のことばかりやっていた
隣が空いているのがいっそ
清々しく感じられて
それは異常と言うべきものなのに
日常になってしまったから
開いている左手は
僕のものになった
一緒に居たかった
それを口に出せなかった
そんな奴だから
そんなバカな奴だから
君が学校からも消えたことさえ
僕は気付かずにいた
まっさらな部屋の真ん中で
笑っている君は痩せていた
ベッドの中にいるけれど
もう天国に行った後かと思うほど
優しく微笑んでいた
君はごめんねと謝った
僕はごめんと泣き崩れた
君が急に駆けだしたのは
残り時間がもう無いからだと
今さら知ってしまったんだ
僕はのんびりしすぎていた
疲れるからと追いかけなかった
時間は沢山あると思っていた
そして君にも同じだけあると
君に置いて行かれた時
もっと必死に走れば良かったんだ
少し追いかけるだけでも辛かったんだ
きっとそれは苦しいだろう
それでも走れば良かったんだ
君の横で笑っていられるように
君は小さな声で僕を呼ぶ
「これは僕の最期のお願い」
そう言って出された手を
僕は優しくもしっかりと握った
そこに温もりは無くて
力も無くて消えそうで
ただ感触だけが懐かしかった
泣いてばかりの僕を見て
変わらないねと笑った
君は小さくありがとうと呟いた
季節は過ぎて
僕は大きくなって
その横にはもう誰もいないし
君の言っていた癖は直らないし
僕はきっと僕のままだ
君が隣に居なくても
僕は
君は嘘つきだ
小さい頃から嘘つきだった
誰かの為だと嘘を吐いて
自分を隠して生きていた
隣に居た時にはすぐにわかった
僕がすぐにバラすから
君は少し怒ってたっけ
君に両親に聞いたよ
君が駆け出すずっと前に
君は残り時間を知っていた
じゃあどうして僕の隣で
のんびりしていたの
君の本当の言葉は
君の本当の気持ちは
君の本当の思いは
ねぇ
君は
主人公は女の子かもしれないし、男の子かもしれません
もちろん君の方も
最後まで読んでくださりありがとうございました