猫を飼ったら少し人生が変わった話
うちにはマロという名前の猫がいる。私のペンネームであるまろんも、ここから取った。
マロはキジトラの男の子で、今年4歳になった。顔が小さく、いつも伸びをしているからか胴が長い。立ち上がると8頭身ほどはあると思われるため、我が家では別名もこみちと読んでいる。
そんな彼は人間に媚びない性格をしている。うちに来たときから可愛い可愛いとちやほやされ、自ら甘えにいかなくても人間が次から次へと構ってくれるのだから、そうなるのも無理はない。彼に好かれたくて、皆おもちゃやおやつをどんどん献上する。でも、彼はおもちゃが気に入らなければ全く興味を示さないし、不満そうな目つきをする。それはおやつに対しても同じで、気に入らなければ手でおやつの入った皿の近くの床をガリガリ引っかき、いらないという意思表示をする。
人間たちは、そんな彼にイラつく様子もなく、また別のものをせっせと買い、献上する。お気に召してもらえると、もうたまらず、楽しい?美味しい?と何度もデレデレした顔で聞いてしまうのである。もちろん返事もないし、飽きるとすぐどこかへ行ってしまうのだが。
そんな彼と一緒に暮らしているうちに、私は自分自身ももっとはっきりと意思表示をしてもいいのではないかと感じ始めた。嫌なのに無理して笑ったり、我慢していてもいいことは何もない。そういう態度は相手を調子に乗らせ、かつ自分の価値を下げることにもなるのだ。その分、嬉しいときは思いっきり喜ぶし、楽しいときは思いっきり楽しむ。要は、自分の腹の底の気持ちと言動を一致させるのである。そうするようになってから生きるのが楽になった。今まで皮膚呼吸だけで生きていたところに、口呼吸もできるようになった気分である。それに、今までは素の自分でいると嫌われると思い込んでいたのだが、こっちの方が好きだと言ってくれる人もいて、少し自分に自信が持てるようになった。
何が自分の人生を変えてくれるかわからない。今まで自分を変えたくてカウンセリングに行ったり、本を読み漁ったりしていたが、まさか猫を飼ったことによって自分自身がこんなに変わるとは思っていなかった。意外なところにこそ悩みを解決する種が落ちているのかもしれない。