俺の心
驚く事は沢山ある。
当たり前だ…記憶を無くして全てが初めてなんだから。
彼女が、香夜が勉強会をやめると言った時こうなるなんて想像もしていなかった。
「まだ、車もバイクも免許取れる歳じゃない無いから、近場でごめんね…」
そう言い握った手を離そうとせずにそのまま歩き続けた。
なぜ、外に出て歩いているのかも何故行き先が海なのかも分からない。
ただ、この手を振りほどこうとしない自分がいる。
2人で居るととても心地よく、顔が緩みそうなのを抑えるので必死だ。
「ね、着いたよ!
見えてる?」
あたつの間にか着いていた。
香夜の顔が近く、また顔を引き締めた。
「なんで、急に…」
呆れ半分、見た事ない海を見るのに興味半分で顔を香夜から逸らした。
もう夜だ。
日が沈むのが早い…
月も、星も見える…
海に映るのそれは自分の中の眠っている記憶にも無かったのか、それとも前に見たことがあったのか鼓動が早くなるのがわかった。
それでもって、目が離せなくなった…
「よかった!
喜んでる…よね?
そのまま聞いてて…
手術がね、終わったら外に沢山色んなとこに連れてってあげるって約束してたの。」
そんな話、聞きたくない…
俺はもうその時の俺じゃない…
「でも、目を覚ました君は忘れてたよね。
で、どうしようか悩んだんだけどこれは約束を守る意味でも、私が勉強をする以外に夏津に会いに来れる口実にも使えないかなって…
夏津にとって、私は全くの赤の他人で馴れ馴れしい女で、私の事なんて好きじゃないと思う。
でも、私は夏津が好きだよ。」
…何も言えない。
知ってる。昔の、優しい"夏津"が香夜は好きなんだ…
「記憶無くす前の夏津はずっと好きだった。
記憶無くして、知らないって相手にしてもらえなくて寂しかった。
でも、夏津は私の事分からない。って思ったら、これが素なんじゃないかなって…
ずっと、演技だったのかなって…分かんないけど…
でも、どっちも夏津なんだなって最近思ってきて、都合いいかもしれないけど…
今、凄い好き…
ツンツンしてる夏津が。
このまま、他人はヤダ。
せめて、友達にして…
私を、君の友達にして…」
泣いてるのかな…声が…
それは、一体どんな気持ちで言っているの…
俺は、君に嘘をついてまで家に通って欲しかったんだ…
嫌いな相手にそんな事しないよ…
なんで、俺の口は開かないんだ…
「ダメだ…」
君は笑った顔が一番綺麗だね。
涙が際立たせてるのかな…
少し、周りの同級生より大人びてしまった俺と君。
死を近くで感じると悟りを開くのかな…
そんな記憶、俺にはないのに…
「友達じゃ、ダメだ…
会いにいく…
付き合って欲しい…
でも、再発したらちゃんと別れて…」
あぁ、そんなに泣かないで…嬉しそうにしないで…
俺は、最低なんだ…
都合がいいだろ…
お願いだから…そんなふうに笑わないで…




