今と昔
流石に、私だって人間だから傷つく…
覚えてなくたって、周りの人と同じように接してほしい…
それは、我儘なのかな…
「ねぇ、夏津。」
呼びかけも虚しく。
目の前では、真っ白くフワフワと綺麗に粉々にされた氷に色の付いた液体を乗せただけの家でも作れるそれに少しばかりお金を出した彼は表情は変わらぬもののとても満足そうに食べてこちらを見ない。
私は食べ終わるのを待った
「夏津…」
すると睨むようにこちらを見て
「香夜。」
と、小さく口を開いた。
私が問いかけているのにと思いながらも目を見つめると静かに
「俺、どんなだった?」
不安が浮かぶ瞳に私が写っているのが見える。
考え込んでしまった。
どのくらい黙っていただろう。
私が口を開くのを急かすこと無くじっと待っている彼に向かって少し緊張しつつも話した。
私が初めて彼にあった日のこと。
母親も、父親も知らない自分。
彼女だけが知る俺を彼女は大切そうに語った。
途中、手を伸ばして溢れ出る涙を拭いとりたかった。
止めたのは、彼女は昔の俺をすきだから…
自惚れじゃない。
まぁ、この場合自惚れやなんだは記憶が無い俺には少し違うかもしれないが…
彼女の涙も、笑顔も、全部全部。
今の俺に向けられるものじゃない…
悔しいけど、仕方がない…
目を覚まし、記憶が無いと知った時から前の記憶は思い出さなくてもいいと思った。
困る事は知り合いが分からないことくらい。
他は何も困らないと思っていた…
彼女は俺にもう1人の俺を教えてくれた後、もう会わないと言った…
そんな気はしてた。
ずっと、何かを言おうとしていたから。
今日だって、母親が行けと言わなかったら来なかったくらいだ。
別に会えなくて困る事は無い。
そう、思った…
でも何故だか、心臓が痛んだ…




