秘密は秘密
特に、変わることは無い…
そばにいて、愛おしいと思っても気が引けて何も出来なくなる…
寝ている彼女を見るのが、唯一の楽しみになってきてしまった。
「ん…夏津…」
薄く目を開くとまだ寝ぼけているのだろう、手を伸ばしむにゃむにゃとしている。
「香夜、起きろ…」
別に起こす気なんてない、小さい声で何度か言うんだ。
言わないと、起きた時に何故起こさないと怒るからだ。
「夏津くん、入るわよ〜」
ドアの向こうから彼女によく似た声が聞こえる。
クッションに座ったまま返事をする。
ドアが開くとニコニコの彼女の母親が見えた。
「どうかしましたか?」
母親は横で眠っている香夜を見て膝をついた。
真剣な眼差し、いつもは何も無い限り入っては来ない。
何かあったんだと気づいた。
「あのね、香夜の事で知っておいて欲しい事があるの…」
話は分かりやすく簡潔に、それでもって冷静に話してくれた。
彼女の秘密…
きっと、記憶があったら彼女が話してくれていたと思う…
こういう時、母親に聞くなんてと思いながら何も言えずに聞いていた。
そして、最後の言葉を受け止められなかった…
「…香夜と、別れて欲しいの…
言い方は悪いけれどね、いつ死ぬのかもわからないから…
この子の為にも、夏津くんの為にも…
別れてあげて…
分かってほしい…」
分かってるつもりだった…
受け入れられると思ってた…
好きだから、ずっと愛しいから、それだけで大丈夫だと思っていた…
何も返せない自分が情けなくて、俺達が出会ったのが病院じゃ無ければといくら思ったか…
涙も出ない俺は土下座をする様に座ったまま頭を下げた。
「まだ、中学生で、安い戯言だって笑ってくれていいです。
ちゃんと、引かなきゃいけない時に別れます…
だから…だから、少しの間このままじゃダメですか…
誰よりも好きなんです…
親より、生きる事より…
お願いです。まだ一緒にいさせてください…」
母親は呆れたような、ホッとしたような顔で微笑んで立ち上がり部屋を出ていった。




