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渇望  作者: 水城雪見
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友人達




「今日は、どっちの愛妻弁当なんだ? 羨ましい」



 昼休み、自分の机で弁当を広げていると、一緒に昼飯を食べている友人の一人が、弁当に箸を伸ばしてくる。

 一人で食べきるには大きい二段の弁当箱なので、好きにさせながら卵焼きを食べた。



「今日は姉の方。羨ましいって言われても、従姉妹だしな」



 羨ましがられるほどのものでもないと、淡々と返しながら、マグボトルのお茶を飲んだ。

 毎日つまみ食いしているくせに、姉が作っても妹が作っても同じ味の弁当だということに、気づいていないんだろうか。

 あの二人の作るは、正確には作る手伝いをする。だ。

 だから、美人の手作りと感動している友人は気の毒だが、この弁当は家政婦の野木さん(55歳)の手作りだ。

 あえて幸せに水を差すこともあるまいと、真実は教えず、たけのこの炊き込みご飯を口に運ぶ。

 


「俺も美人で料理上手な従姉妹がほしかった……」



 弁当を羨ましげに見、唸るように言う、ちょっと残念な友人の名前は大矢という。

 俺を迎えに来た二人を何度も見かけていて、散々羨ましがっていた。

 俺も他人事なら羨ましがっていたかもしれないけれど、当事者となると、それなりに苦労もあって複雑な気持ちだ。



「神埼、エロゲの主人公みたいだな。他に小さい頃に離れ離れになった幼馴染とか、美人な家庭教師の先生とかいないの?」



 18禁のゲームにも手を出している廃ゲーマーのくせに、頭脳は学年一というわけのわからない変態、佐々木に問いかけられて、零れそうなため息を押し殺した。

 佐々木とはお互いにゲーム好きということで親しくなったけれど、俺の鞄に18禁のゲームをこっそり入れるのだけは、本当にやめて欲しい。

 以前、佐々木の悪戯で鞄に入れられたソフトを姉妹に見つかって、大騒ぎになったことがある。

『そんなゲームをするくらいなら……』と、変な方向に姉妹が張り切ってしまい、誤解を解くのに苦労したので、あれ以来、佐々木の悪戯に引っかからないように気をつけている。

 佐々木の事だからその辺を察して、面白がってやっているような気がしないでもない。



「いないし、いても面倒だろ」



 小さい時に海外にいってしまった幼馴染はいたりするが、戻ってきた時には、両脇をがっちりと姉妹が固めていたので、まともな交流を持つ事を諦めたという事情は、わざわざ話す事でもないだろう。

 家庭教師は、二人がうるさいので男の家庭教師を頼んだ。

 あの二人は我侭で、自分の思い通りにならないといつまで経っても不機嫌なままで扱い辛いんだが、外面がいいから、話しても誰も信じてくれないか、そこまで好かれてるのが羨ましい。と言われて、終わってしまう。

 幼馴染の件に関しては、二人を刺激してまで交流する必要もないかと、諦めてしまった俺にも非がある。



 両親が亡くなっても生活に困るわけでもない、恵まれた環境には感謝している。



 だけど、時々、無性に一人になりたくなる時がある。

 それを口にすれば、贅沢だといわれてしまうのがわかるから、俺はいつしかすべてを飲み込むようになった。

 




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