青龍の刀
2つ結びの女の子が去ってから、俺は考え事をしていた。
千代のこと、佐倉家当主のこと、それから佐倉の娘のこと。
そんな時だった。
廊下から女の子の悲鳴が聞こえたんだ。
教室から出ると、そこにはあの少女が。
桜の香りの少女と妖魔…
しかもB級妖魔のようだ。
「いやだ…こっちにこないで……」
桜の香りの少女は涙目になって後ずさりしていた。
妖魔は御構いなしにその少女に近づいて、手を、掴もうとした。
「待て」
俺のその声に妖魔の動きはぴくりと止まった。
俺は懐から刀を取り出す。
妖刀《青龍》だ。
『ほぅ…その刀を持っているとは…ただの人ではないようだな…』
妖魔がこっちをジロジロ見ながら言う。
「そうだ。俺は紺屋家の血を継ぐものだ」
『なんと…あの紺屋家のものか…面白い…ワレを倒せるものなら倒せ』
俺は刀を構えて距離を詰めた。
妖魔が襲いかかってきた瞬間、俺は刀を十字に入れた。
『ウアァァァァァァァァァ…』
妖魔は霧のようになって消えた。
「あ、あんた何者なのよ…」
すっかりひびった様子の桜の香りの少女が言った。
「別にただの人だよ。それよりあんた、パンツ丸見えだぜ」
「!?」
座り込んで脚を開いてるもんだから、黒のスパッツから透けて白とピンクのしましまパンツが丸見えになっていた。
「死ね!」
パンチが飛んできました。
早すぎて避けれなかった…
「ったく、あんた最低ね。……けど、一応助けてもらったし、例を言ってあげるわ。……あ、あり…」
「蟻?」
「……さっさと死になさいよ……あ、あんた、名前なんだっけ?」
「紺屋和月だ。こんは紺色の紺、やは屋根の屋。それからかずきは和風の和に、そらで光る月の月だ。よく覚えとけ小紅様」
「…小紅でいいわ、小紅で」
「それにしても小紅、キャラ変わりすぎじゃね?」
「まぁね、ちょっと家が厳しくて、学校では真面目で優しくて優秀で美しくて完璧なお嬢様を演じなくちゃだめなのよ」
「俺も朝ぶつかったときは騙されたわ…」
「ふふん。当然よ。あたしの演技は完璧だもの」
「なるほど、それでストレス発散のためにいじめ…ねぇ…」
「な、なによ」
「そんなことしてたらあんた、またさっきみたいなやつに襲われるぞ」
「え…うそ……」
「これにこりたらやめろよ」
「う…ん……」
「じゃあ俺行かなくちゃいけないから」
「ま、待ちなさいよ!あんたは結局何者なのよ…」
「またな、小紅様」
俺はそう言って逃げた。
彼女が見える人だとしても、言ってはいけないこともある。
俺の任務は秘密裏に行わなくちゃならないからな。
さて、これから佐倉家に行くんだが…気が進まないな…




