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掃除

 目を覚ますと、車はもう家に着いていた。車の中にいたのはぼくだけで、赤い屋根が印象的な家が、窓からのぞくように、ちらりとその屋根を見せていた。

 思いっきり伸びをしたら、車を降りる。ロイさんとクレアさんを探すんだ。

 あのときのぼくには、その全てが新鮮だった。新鮮な空気。ゆっくり、あたりを見回す。ここが高台で、見晴らしがいいせいもあってか、あのときのぼくには、それは本当に壮大な景色だった。

「起きたのですね。」

 その声とともに、玄関からクレアさんが出てきた。ぼくが振り向くと、クレアさんはにっこり笑った。

「ようこそ、私達の家へ。」

 ぼくはクレアさんに続いて、家に入った。赤い屋根の家は結構大きくて、玄関も広かった。 この家が広いこと、あの時は知らなかったんだよ。友達の家を見たとき、『小さいな。』って思ったぐらいのことだよ。

 ここは日本じゃないから、玄関で靴を脱ぐ習慣はない。つまり、ぼくはそのまま部屋の中に入った。リビングや廊下。絨毯がしいてある。なんだか無造作な模様の、綺麗な絨毯。

 クレアさんは絨毯のしかれた階段を登り、時々ぼくがついて来ているか確認をしながら、また廊下を進んだ。家のものに興味を持って、ぼくは何回か遅れを撮ってしまった。

 そして着いたのは、少しほこりっぽいけれど、人は住める程度の広さの屋根裏部屋だった。木で出来た質素なベッド。布団はまだない。

 そしてクレアさんは、なぜかにっこりして、ぼくにこう言ったんだ。

「ここが、あなたの部屋ですよ。」

「掃除は出来ますか?」首をかしげたクレアさんに、ぼくは頷く。掃除の仕方はぼくも分かる。実際にした記憶はないけど、なんだか潜在記憶ってものみたいに分かるんだ。

「でも、道具の場所が分かりません…。」

 ぼくはそう言い、すこし笑ってみせた。居候の身だから、失礼な態度は取れないよね。(でもちょっとこれは失礼かな?)

 クレアさんは、「ああ。」と二回ほど頷いて、

「場所を教えてあげましょう。」

 といった。ぼくは頭を下げた。

 さっきとは逆に、クレアさんとぼくは、絨毯が敷かれた階段を下りた。それが終わったら、今度はどんどん家の奥に歩く。

 クレアさんはある扉をあけた。そこには物置部屋のように、沢山のものたちが並べてあった。

 掃除用具は、その部屋の中の、すぐ手前においてあった。ほうきとバケツ、スポンジ、雑巾。クレアさんはそれを取って、ぼくに渡してくれた。

「有難うございます。」

 大きなほうきを持って、階段を登る。バケツも少し大きめだったから、全部持てないかなと思ったけど、全部を持って階段を登ることが出来た。

 部屋に戻ったら、さあ、掃除だ!ぼくは気合を入れる(つもり)。

 壁を雑巾で拭いた。汚れがついていたけど、たいていのものは拭いても落ちなかった。何だか悔しかったけれど、一箇所がんばりすぎて壁紙が削れてしまったので、あとはあきらめた。

 棚の上の様子を見てみる。思わず、わー、と声を上げた。だって、埃がいっぱいあって、棚の上は白っぽくなっているぐらいだもん。しかしぼくは諦めなかった。

「よし!!」と声を上げて、棚にほうきを突っ込んだ。こうして、埃をかき出す…つもりだった。

 ぼくはどうなったと思う?

 今考えると当たり前なんだけど、窓を開けていなかったから、くしゃみとせきを何回もした。幸いぼくには喘息はないから、窓を開けて解決したんだけどね。

 窓を開けて、掃除を再開した。また鼻がムズムズした。何とか終わらせたけど、今度は床の綿ぼこリがすごい。ほとんどは棚から落ちたものだ。

 床をほうきで掃く。本当に埃がすごくて、一回では掃き切れない。しかも軽い砂が舞う。

 また、大きくくしゃみを一回。くしゅん。

 部屋の真ん中に集めたら、その埃や砂なんかをちりとりで集め、そのまま袋に入れる。袋は口を結び、取り合えず部屋の隅に置く。これは後で捨てなくちゃいけない。溜めるなんて、ちょっと汚いもんね。

 今度は雑巾で床を拭いた。雑巾を固く絞り、ごしごしと力を入れて床を拭く。汚れた床だったけれど、意外と綺麗になった。

 ぼくはパジャマの袖で汗を拭き、ベッドに寝転んだ。まだ布団はしかれていないけど、自分が掃除した、と言う達成感もあり、寝転んだ時、気持ちが良かった。

 そして、ぼくはだんだん眠くなって………。

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