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第一話 僕、拾われる(1)

 体中が痛い。手や足を動かそうと思っても、少しだけしか動かせない。

 周りを見ようにも、何も見えなかった。世界が暗い。息をするのも苦しい。なぜ、僕はこんなことになっているのか。


 ――分からない、思い出せない。僕は誰だ。


 思い出せないことに苛立ち、唇をかむ。血の味がした。

 僕から血が流れているのか? それとも、今かんだことで唇が切れたのか?

 血の匂いに、頭が混乱する。意識を持つことに疲れて、手放す。

 そのとき頭上で女の声を聞いた気がしたが、もう僕には関係のないことだった。



 声がする。うるさい話し声だ。僕は静かに、このフカフカなところで寝ていたいのに。


「ねえ、こんなやつ助けちゃって大丈夫? あたし、厄介事はきらーい」

「私にとってはあんたの方が厄介事の種よ」

 話しているのは二人か? 僕のことを話しているらしい。それにしても、僕をこんなやつ呼ばわりするのは誰だ。 

 喋り方からして女っぽい。……様子を見ることにして、女(仮)の話し声に聞き耳を立てる。


「そもそもこいつ人間? 瞳が赤かった、森の人かもしれない」

「この人は肌が白いもの。森の人なら褐色のはず。それに髪が黒いわ、黒は森の人には珍しい色よ。瞳が赤いのは人間にもいるでしょ」

「でも、体中傷だらけで死にそうだった! もし犯罪者とかだったらどうするの」

「とりあえず助けただけよ、害があるなら元いた場所に置いてくればいいわ」


 喧嘩腰で喋る女たちのおかげで、なんとなく自分の立場を理解することが出来た。

 傷だらけで倒れていたのを、助けられたらしい。そして今は、これからの僕への対応を相談しているようだ。

 たぶんこのフカフカな場所はベッドだろう。温かい。このまま眠ったふりをするのでは埒が明かないので、慎重に目を開けた。


「あら、起きたみたいよ。――大丈夫?」

 僕にいち早く気づいたのは赤い髪の女だった。腰まである長い髪を三つ編みにして一つにまとめている。

 それに続いて僕を見たのは、警戒心を隠そうともしない銀髪の女だ。美しい顔をしているが、なんとも性格の悪そうな女である。とりあえず両方とも女のようなので、僕としては一安心だった。


「あ、えーと、うん、大丈夫」


 思っていたよりも小さな声で答えてしまった。自信がなさそうに見えたか? いや、傷が治った後だし、こんなものか?

 うまく話せない。なんとなく、自分が喋ることに抵抗があった。


「ったく、はっきりしない男ー。一言で言えばいいのに」

「あんたがはっきりしすぎなの。……ごめんなさい、起きたばかりなのに。なんで自分がここにいるのか分かる?」

 赤毛の女は銀髪の女をいさめると、僕を心配そうに見つめた。

 僕は首を横に振る。本当は知ってるけど、僕は寝たふりをしていたのだ。優しい赤毛の女性に、なんとなく罪悪感がこみあげた。


「三日前に、近くの川辺に倒れていたのよ。傷だらけでね、一応傷は治しておいたんだけど、まだどこか痛む?」

 てことは、僕は三日間も寝ていたのか。手を動かし、痛みがないのを確認する。大丈夫そうだった。

「……痛くない」

「そう、良かった。……言いにくいんだけど、髪を切らせてもらったわ。長すぎてね、治療がしにくかったの」

 本当ごめんなさい、と彼女が謝るのを聞きながら、僕は自分の髪を触った。なんだか短い。

「仕方ないんだから謝んなくていいの! それよりあんた、誰なの? 名前は? 森の人と人間、どっち?」

 質問攻めだ。少しだけ考え、首を振った。


「分からない。僕、自分の名前すら思い出せないんだ」


 それを聞いた二人は、ただ静かに眉を寄せた。


少年と女二人登場^m^

突発的に始めた話ですが、読んでいただけると嬉しいです。

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