俺の青春、余命半年
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思えばケチが付き始めたのは中学からだった。
六年培ってきた人間関係をリセットされて右往左往してた俺は気づいたら孤立していた。
入学式から一週間で早くも作られるグループライン。
遅まきながら友だちを作ろうとするも中学生特有の気恥ずかしさが邪魔をして何もできずに三年間は終わる。
高校からは心機一転陽キャになろうとあがき始めた。
陽キャ=運動部という浅い考えで空手部に所属。
必死で練習に喰らいついた一年、慣れない上下関係に頭を悩ませた二年、そしてあっという間に高校三年になって今に至る。
もちろん空手部に入ったことに後悔はない。
毎日汗だくで体を動かし泥のように眠る、そこにはすさまじい疲労感とともに確かな充足感があった。
夏のインターハイも自分にしてはいいとこまで行けたと思う。
しかし部活も引退した高校三年の秋、俺には大きな悩みがあった。
そう、青春への未練だ。
別に高望みはしていない、友だちとボーリングをしたり彼女と制服デートしたりそういう普通の青春がしたいんだ。
俺の心の叫びは誰に拾われることなく今日も今日とて電車に揺られ学校に向かう。
◇
錆びた校門を通りペンキの禿げかけたドアをガラリと開ける。
背負ってたリュックをロッカーに押し込み席に座って本を開く。
ここまでが毎朝のルーティーン。
「よう佐々木、何見てんの?」
こいつは山本結城、数少ない気を遣わずに話せる俺のクラスメイト。
地下アイドルが三度の飯より好きで二時間弱あるプレイリストを俺に送ってくることを除けば完璧人間だ。
「おはよう山本、今読んでるのは少女戦記だ。サラリーマンが軍国主義の国に少女の肉体で転生するっていう話。面白いぞ!」
「お前そういうのばっか読んでるから彼女できないんじゃねぇの?」
「うっ」
なんでこんな酷いことが言えるんだこいつは、あんまりひどいこと言うと泣くぞ。
「うるせぇな!そんなこと言われなくてもわかってるわ!いいよなお前は女子とも気軽に話せるし勉強もスポーツも上の中くらいにできてさぁ。お前にはバレー授業の憂鬱がわからないだろ。」
全く世の中不公平だ。こっちは女子としゃべるだけで目は泳ぎまくり舌は石化したまま動かないのに。
こいつら陽キャは家族と話すみたいに気軽に女子と会話するし、レシーブに苦手意識を抱かず大人になるんだろうなぁ。ふざけやがって。
「俺だって悩んでるんだ、なぁどうやって彼女って作るんだ?」
「うーん、やっぱり自分から行くしかないだろ。」
「そんなの無理に決まってんだろ!こっちは業務連絡するだけで心臓が張り裂けそうになるんだぞ。」
委員会活動で女子と話すだけでなぜこんなにつらいのか、なんだか陰で悪口を言われてる気すらするんだ。
こういうこと言うと、だれもお前のことなんか気にしてない!考えすぎだとか言われるけどそんなことわかってんだよなぁ。
「いいか?佐々木、何事も受け身じゃ始まらないぞ。受け身で彼女ができんのは金持ちか美男美女だけだ。お前は逆立ちしたってイケメンにはなれない、だったら自分から行くしかないんじゃねぇの?」
言い方はキツイが内容はぐうの音も出ない正論だ。
「もう高校生も残り半年だし大学で恥かくより高校でチャレンジしたほうがいいのかもな」
「おお!その調子だ佐々木、お前好きな人とかいないの?」
「好きな人ねぇ」
いるっちゃいる。忘れもしない、高一の頃の話だ。
その日もいつも通り教室で読書していた。
そんな俺に、なに読んでるの?と話しかけてくれた人がいた。
彼女も本が好きだったみたいで好きな本の話で盛り上がった。
夢のような時間はあっという間に過ぎ去っていった。
これだけだ、わかってる自分でもちょろいのはわかってるんだ。
でも女子と関わりのない俺はこれだけで一撃だった。
無自覚俺TUEEE系のヒロインをチョロインと鼻で笑っておきながらこのざまである。
「SNSはつないでないの?リインとかウンスタとか。」
「リインはつないでないし、ウンスタはインストールもしてない。なんか一般人が日常上げて何がしたいの?って感じ」
「絵に描いたような拗らせ陰キャだな、どうせトイッターはいれてんだろ?黙ってウンスタ入れろ。」
「はい…」
言われるがままスマホにウンスタを入れる俺、ガラスハートが粉々に砕け散った音が聞こえた気がした。
「お前が好きな子って名前何?あとクラスも教えて」
「名前は遠坂みゆき、クラスは…高一の頃五組だったのは知ってるけど今のクラスは知らんな」
山本の問いに答えながらウンスタでそれらしい人を探す。まぁ、そう簡単には見つからないよな。
「うーん、ないなぁ。やっぱりウンスタなんて入れる意味ないよ。」
「あ、フォローしてた。」
「え?マジか!」
これから始まるであろう青春に思いをはせていると、教室の窓から初秋の乾いた風が吹いてきた。
俺の青春、余命半年




