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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

遠い記憶と君の愛

作者: 実瑠さくら
掲載日:2025/08/24

 「ごめんなさい。ごめんなさい。誰か助けて……」


 遠くの方で雷が鳴っている。

 音がかすかに聞こえるだけでも恐ろしい。

 雷の音が聞こえるだけで、あの時のことを思い出してしまい、号泣してしまう。

 悲劇が起こったのは、私が幼稚園児の時だった。

 今でも鮮明に覚えている。

 いや、忘れられないのだ。


 「嫌だー‼︎ 公園で遊ぶの! 約束したのに嘘つき!」


 全ての原因は、私の我儘からだった。


 「優美! 今は雷が鳴ってるから外に出たらダメって何度言ったらわかってくれるの。あなたが危険な目に遭わないように言ってるのよ?」


 いつも優しい母が、少しきつめに怒っている。

 私のためを思って言ってくれていたのだと、今なら理解できる。

 なのに、小さい時の私は全く分かっていなかった。


 「もういい! 一人で遊びに行くから!」


 小さい時の私は、言うことを聞かずに玄関を飛び出してしまった。

 私は雷が鳴り響いている中、無我夢中で公園に走っていった。

 ブランコに乗り、一息つく。


 「……遊ぶ約束、してたのに」


 走り疲れたからなのか、気づいたら眠っていた。

 雷が鳴っていたのが嘘のように、天気は晴れ晴れとしていた。

 

 「お母さんが待っているかも!」


 家に帰ったら、いつものようにハグをしてもらおうと思い、スキップをしながら帰って行った。


 家に帰るとなぜか、救急車が家の前にある。

 どこを見渡しても大好きな母はいない。


 「お父さん、お母さんはどこにいるの?」


 これを言った途端、気まずいような、悲しいような 顔をしていた。


 「お母さんはね、遠い遠いところに行ったんだ」


 「へー、早く帰ってきてほしいね!」


 父は目に涙を溜めていた。

 

 この出来事の数日後、私は儀式に連れて行かれた。

 みんなが黒色の服を着ている。

 呪文みたいなのを言っている人や、手を合わせている人などがいた。

 泣いている人もたくさんいた。


 今なら分かる。

 大切な母は天国に行き、謎の儀式は葬式だったということが。


 雷が鳴ると思い出してしまう。


 誰か助けて……


 部屋のドアが開いた。

 私は思わず振り向いた。


 「優美!」


 「律くん……」


 彼は私の大切な彼氏だ。

 彼と出会った日も、雷が鳴っていた。


 残業をしている時に雷が鳴っていて、怖くて泣いていた時だった。


「……助けて」


「大丈夫ですか?」


 心配そうに、上司が顔を傾けている。


「……すみません。雷が怖くて…………あっ」


 暖かな手が両耳を塞いでくれた。


「すみません。女性に急に触れるのは失礼なのですが、こうすれば落ち着くと思って……」

 

 この出来事のおかげで話す機会が増え、私と彼は付き合うことになった。

 

 困った時も、悲しい時も、嬉しい時も全てを分かち合える人。


 「俺がいるから大丈夫だよ。安心して」


 今も暖かい手で両耳を塞いでくれている。

 そのおかげで、心が落ち着いてきた。


 「……ありがとう」


 彼がいるから、心が折れないでいれる。

 ずっと一緒にいてほしい、大切な人。

 絶対にいなくなって欲しくない人。

 

 「いつもありがとう。……愛してる」

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