表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/89

憧れるもの29


 門周りや集落内部の確認を騎士たちと銀狼にまかせ、私はセシルたちに合流する。

クリスとセティは少しの間休憩だ。奥にある魔素溜まりを浄化しないことには調査を再開できない。


「ゲイル、すぐにやれる?」

「えぇ。そのつもりでした」


 魔力回復のポーションも飲みました、と、苦笑しながら喉の辺りを摩ってみせる。彼もあの甘ったるいポーションが苦手らしい。こっちも飲んだ、と、にやり笑ってみせれば、炭酸水とか飲みたくなりますよね、なんて返ってきた。


「規模的に二人で足りるね? セシル、介添えをお願い」

「承知した」


 魔素溜まりの浄化には通例的に介添え役をつけることになっている。

浄化を行う司祭が、汚染の規模や己の力量を見誤って倒れた場合などに備えるためだ。

戦乱期やその直後は、今とは比べ物にならないほど魔素溜まりも発生していたという。その浄化に駆り出された司祭たちの犠牲から出来た通例は、今もひっそりと私たちを守っている。


「あの! 近くで見学しても良いですか?」


 走ってきたらしいセティが訊いた。弟子の後ろからゆっくりとクリスがこちらに向かって歩いてきている。目を合わせれば、微笑みと共に会釈された。


「えぇ、いいわ。でも、ここまでって言われたところからは絶対近づかないこと」

「はい!」


 少年のいい返事に場が和む。


「あぁ、そうしたら……」

「ん?」

「主旋律は一の聖騎士殿にお願いできますか? その方が見栄えもしますし」


 少年の様子にくすくすと笑いながら、司祭のゲイルが提案した。


「リチェも浄化できるんですか?」

「えぇ。我らが一の聖騎士殿は司祭としての修行も積んでおられますから。浄化に関しては実はその辺の司祭よりもずっと得意ですよ」


 もちろん、私よりも、なんて器用にウインクしてみせる。少年のきらきらした目が私の方に向いた。いや、そんな期待をされても困るのだけども。


「ちょっと、ゲイル!」

「いいんじゃないか。たまにはまともな方法もやらないと忘れるだろ」


 いつも力任せに剣で薙ぎ払ってばかりだろ、なんて失礼なことを言ったのはセシルだ。私が普段から手抜きをしているような言いっぷりはやめて欲しい。先日のモーゲンの山奥のだって、あれが効率的だと思ったからああしただけだ。

文句を言おうと顔を上げれば、セシルより先にセティの期待に満ちた目を見てしまって、私は、息を吐く。項垂れたと同時に落ちてきた髪を、ぐいとかきあげる。


「そうしたら、私がメインでゲイルは補佐を。セティはクリスと一緒にいて。近づいていい距離を確認したら呼ぶから」

「はい」

「はい!」


 にこやかに頷く司祭と、好奇心を隠そうとしない少年に一度クリスの方を見る。……ゲイルと同じ顔で笑っている。私は八つ当たりとばかりにセシルの横を通り、ぼそりと言った。


「後で覚えてなさいね」


 鼻で笑われた。本当にむかつく男だ。




 魔素溜まりは、奥の方、予想した通りのところにあった。

具体的には数日前、『何か』があったそこだった。

集落内を一巡りして残った魔物を狩ってきた銀狼が、何か言いたげに私を見る。私はその背中をぽすぽすと軽く叩く。今これについて考えても答えは出ない。まずは溜まってしまった魔素を散らさないことには調べようがない。


「後でね」


 言って、離れる。すたすたとみんなの前に出れば、私の横にゲイルが並んだ。

ここの魔素溜まりはさほど大きくはない。でも、先日モーゲンにあったものに比べれば大きい。

一人でも浄化できる大きさではあるが、安全をとって二人で浄化を行う。過信はしない。魔素溜まりの怖さは養母から散々教えられている。

 それにしても、数日前は影も形もなかったのに、私たちが離れていたたった数日でここまで育ったのか。今までこんな事例は聞いたことがない。あの時、騎士たちを常駐させるなどと言わなくて本当に良かった。この先もこんなペースで新たな魔素溜まりが出来るのだとしたら頭が痛い。


「危険はないと思うけれど、何かあってもセシル以外は距離をとってて」

「はい!」


 元気に返事をくれるのはもちろん魔導士少年だ。門の確認を終えた騎士二人も合流して、こちらが教えた場所に並んで立っている。銀狼も少年の隣へと歩いていき、大人しく座った。クリスが少年の肩に手を置いているのが見えた。

二の聖騎士セシルが私の右側に立つ。司祭ゲイルが左側で杖を構えた。

二人に一度ずつ視線を向けると、目で頷きが返ってくる。


「……」


 私は、剣を鞘から抜くとその刀身に左手を当てる。


「光よ、ここに」


 ゆっくりと左手を細剣に這わせていく。剣は私の言葉を受けて静かに光を放ち……錫杖へと変貌した。

左手を元の位置に戻し、確かめるように錫杖の柄を握る。右手の位置をずらしてから左手を離し、錫杖を立てる。


「それじゃあ、浄化を始めましょう」


 とん、と先を地面につければ、上部についた四つの輪が、しゃん、と澄んだ音で鳴った。



リチェの錫杖についてはあらすじにもありますが、短いお話を番外として書いています。

もしまだ読んでいない方いらっしゃいましたら、良ければこちらもどうぞ。

▼▼▼

https://ncode.syosetu.com/n9890ju/47


本来六個あるはずの輪が四個しかないのは、前作の戦闘中にて弓師の弓に光属性をつけるために使った一つと、番外編にて聖女が魔王シルバーに贈った一つが書けている為。

前作の戦闘シーン:

 https://ncode.syosetu.com/n5681jd/244

魔王シルバーに贈ったシーン:

 https://ncode.syosetu.com/n9890ju/43

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ