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最後まで見ていただけると幸いです!
次の週の月曜日、今はホームルームの時間だ。
「再来週は初めての期末テストだ。文化祭の準備でテスト勉強を怠らないように。また、テスト一週間前になったら文化祭の準備と部活動が停止になるから、覚えておくように。」
うちの学校には1学期に中間テストがない。
体育祭が五月開催で忙しいのもあるが、中間テストがない分期末テストの範囲が広くなるため、そこの計画性を見るという意味もあるのだろう。
「夜瀬ぇ、助けてー。やばいよ期末テストなんて忘れてたよぉ。俺どうしてもこの高校入りたくてめっちゃ頑張って勉強してほぼ奇跡みたいなもんでギリギリ合格しただけだからバカなんだよ。課題も全然終わってないし。俺に勉強を教えてくれー。」
先生の話が終わるなり、神沼が僕に助けを求めてきた。
「急に言われても。放課後は生徒会で忙しいからな。かといって一週間前じゃ間に合わないし。」
「日曜日とかは?俺今週の日曜空いてるし。」
神沼が上目遣いになって懇願してくる。
「今週の日曜日か。近くの大きな図書館はちょうど休みなんだよな。神沼って僕と結構家近かったよね。」
「隣町ではあるけど結構近いよなー。」
「じゃあ、家来る?どうせ母さんは部屋にいるからリビング使えるし。」
「いいの?やったー!あとで住所送って!やばいめっちゃ楽しみになってきた。」
「目的は忘れないでよ。」
「わかってるって。ちゃんと勉強しますぅー。」
そんなこんなで神沼が今週の日曜日家に来ることになった。
家は基本片付いているので特に準備することはない。
母さんのことは自分から出てくるまでは無理に出て来させたりはしないと決めているし、今のところそんな気配はないのでリビングを使っても大丈夫だろう。
逆に僕の部屋を使った方が声が聞こえやすくなってかえって邪魔になってしまう。
勉強を教えるなら、それなりに何かあった方がいい気がするので、家にあるいくつかの参考書を準備しておこう。
日曜日の朝、神沼は十時に来るとのことだったので準備をする。
準備とはいっても、リビングに参考書を持ってくるくらいだ。
せっかく準備したので、待ち時間に勉強することにする。
勉強していたら、いつのまにか約束の十時になっていたらしく、インターホンの音が鳴り響いた。
ドアを開けて神沼を家に招き入れる。
「おじゃましまーす。おぉーすげー!夜瀬の家って結構広いんだな‼︎」
「そうか?それより早く勉強始めるよ。もう準備してあるから。」
「はーい。って夜瀬、まさか俺が来るまで勉強して待ってたの?偉すぎる。」
「僕のことはいいからそこ座って。とりあえず課題終わらせなきゃでしょ。」
「そうだったー。この学校課題の量とんでもないよなー。」
「しょうがないだろ。進学校を選んだんだから我慢しろ。」
「うー。早速わかんないー。ここってどうやってやるの?」
「これは応用編だけど、ここの公式を当てはめれば・・・。」
「おぉー。夜瀬って教えるの上手いな!先生よりわかりやすかった‼︎」
「それはどうも。さ、どんどん片付けちゃうよ。」
「教えるのは上手いけどスパルタだー!」
「ためてた神沼が悪いんだから文句言わない。ほら、この問題解いてみて。」
神沼はそのあともぶつぶつ言いながらも休憩を挟んで着々と課題を片付けていった。
「やっと終わったー。ってもう六時じゃん!」
「じゃあ夜ご飯も食べてく?」
「いいのー?やったー!」
急遽一人分多く作ることになったが、特に問題はないだろう。
神沼を長時間待たせるわけにもいかないので簡単な焼きそばを作ることにする。
肉と野菜を切って炒めている間、神沼はずっと僕をみていた。
「なんだよ神沼。ずっと僕の方見て。」
「いや、夜瀬って飯作るの上手いんだなと思って。」
「そう?ほぼ毎日作ってるからわかんないな。」
「ほぼ毎日⁉︎すごすぎるだろー!」
「それはどうも。ほら、できたから食べるよ。」
「はーい。ってうま!焼きそばってこんな美味かったっけ?」
「だいたいこんなもんだと思うけど。」
「いーや、これは絶っ対夜瀬が作ったからだ!」
こうやってワイワイしながら夜ご飯を食べるのは久しぶりで、少し楽しかった。
神沼が帰った後、いつも通り母さんの部屋の前に焼きそばを置いておく。
神沼が家に来て、にぎやかで少しうるさかったけど、たまにはこういうのも悪くないと思った。
期末テスト当日。かなり勉強してきたので大丈夫だとは思うが、クラスの雰囲気的に不安になってしまう。
「夜瀬、俺あれからだいぶ解けるようになったよ!赤点は回避できそう‼︎」
「赤点はって。平均超えるくらいでいないと結果出ないよ。」
「平均ごえなんて無理だよぉ。」
「そんなこと言わない。できないと思ってたらできないでしょ。」
「なんか夜瀬がお母さんに見えてきた。」
「くだらないこと言ってないでもうホームルーム始まるから、前向いて。」
「はーい。」
「今日から三日間、期末テストだ。最善を尽くせるよう祈っている。ホームルームの後、すぐにテストの準備をしてくれ。」
今日のホームルームは基本的にテストの説明だけで終わった。
小休憩を挟んで、期末テスト本番を告げるチャイムが鳴る。
最初は数学からだ。
問題と解答用紙が配られ、先生の合図で一斉に取り掛かる。
正直言って少し不安な部分もあったが、難なく解くことができた。
それから三日間、僕たちは期末テストを受けた。
神沼は休み時間のたびに難しいなどもう嫌だなど文句を言っていた。
でもぶつぶつ言いながらもそれなりに勉強の成果が出て、全部とはいかなくてもかなり埋められたようだ。
次の週、一限の学活でテストが返却された。
本当は全教科満点をとりたかったけど、それはできなかった。
ちなみに返却されると同時に成績優秀者が廊下に張り出されるらしい。
今回は初めてのテストだからないが、次回からは点数が上がった順位もあるらしい。
授業が終わった瞬間、クラスメイトが一斉に廊下の成績優秀者の張り紙を見に行く。
僕は興味津々の神沼に廊下に連行されていた。
「夜瀬すげーじゃん!入試の時もそうだったけど学年一位って。もっと嬉しそうにしなよー!」
「全教科満点目指してたのに、ケアレスミスしちゃったから。」
「全教科満点って意識高すぎー!たしかにケアレスミスは悔しいけどさぁ‼︎」
「そういう神沼はどうだったんだよ。」
「赤点は回避できた!平均は超えられなかったけど。」
「じゃあ次のテスト前は平均超えられるようにみっちり教えてあげようか?」
「やっぱり夜瀬はスパルタだー!でも教えて!」
「その話はまた今度な。ほら、授業始まっちゃうから教室戻るよ。」
「はいはい。」
僕も、次はケアレスミスをなくせるようにもっと勉強しないとな。
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