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ご覧いただきありがとうございます!
今回はだいぶ長めですが、ぜひ最後まで見ていってください‼︎
そしてやってきた体育祭当日。
空は見事に晴れていてまさに体育祭日和だ。
なんなら太陽が照り過ぎていて、少し暑いくらい。
教室では皆少しソワソワしていて、落ち着かない様子だった。
教室に荷物を置いてから、最終確認のため生徒会室に向かう。
セリフの確認と、マイク等を受け取った後、校庭へ移動した。
校庭にはすでに大量の生徒と保護者で埋め尽くされていた。
僕の担当は最後なので、とりあえずクラスのメンバーと合流する。
「絶好の体育祭日和だな!お互い全力で頑張ろうぜ‼︎」
神沼は選抜リレーの選手なのでやる気満々のようだった。
「僕が出るのは団体競技と借り物競走くらいだけどほどほどに頑張るよ。」
「夜瀬は団体競技一番前でやるんだろ?うらやましいなー。頑張れよ!」
「それは生徒会役員だからってやらされるだけだろう。僕だって本当はやりたくない。神沼ができるならやってほしいよ。」
僕と安斎さんは生徒会役員だからという理由で、二人だけ一番前でやらなくてはならない。
神沼のようにやりたい人がいるんだからそっちに任せてくれればいいのに。
開始五分前になったので僕達は校庭の真ん中の方に並び始めた。
僕も神沼も白組なので同じ場所に並んぶ。
生徒会役員で白組なのは、三年生の先輩が一人と、麗奈先輩と田中先輩。
あとのメンバーは全員紅組だ。
最初は校長先生と生徒会長の話から始まる。
まずは校長先生からだ。
「えー、みなさん。今日は絶好の体育祭日和ですね。えー、。」
校長先生の話はいつも長く、暇なので大体の生徒が聞いていない。
誰もが早く終わらないかと思っているであろう。
長かった校長先生の話が終わり、次は生徒会長である麗奈先輩の開会の言葉が始まる。
「おはようございます。生徒会長の矢神麗奈です!まず保護者の皆さん、今日は来ていただきありがとうございます。そして皆ー、今日はめいいっぱい楽しもうねー‼︎」
「フゥー‼︎」
麗奈先輩の挨拶ですごい歓声があがった。
さすがというか何というか。
挨拶だけでここまで盛り上げられるのは麗奈先輩くらいしかいないだろう。
続いて、三年生の生徒会役員がプログラムを発表していく。
その後は各自移動となる。
僕や神沼の出番は後の方なので待機場所へと移動する。
最初はたしか障害物リレーだ。
実行委員の一人が種目説明をしている間、他の実行委員の人たちが準備に駆け回っている。
障害物リレーは一年生は紅組、二年生の紅組、三年生は白組が勝った。
今のところ、僕達白組は負けていることになる。
しかし、まだ一種目目。これからどうなるかはわからない。
それから様々な種目が終わっていき、ついに僕が参加する借り物競走が始まった。
借り物競走は運要素もあるので、なかなか難しい。
箱のところまで走り、中の紙を一つ取る。
僕のお題は「友達」だった。
みんなが誰に借りようか迷っている間に僕は神沼のもとへ行く。
僕の友達は神沼くらいしかいない。
「神沼、来てくれ。ゴールまで走るぞ。」
「俺?まあいいや。飛ばすぞ!」
「本気出してもいいよ。着いていけるから。」
僕は今では好んで運動しないが昔は運動が好きだったし、足の速さも学年一だった。
最近では体育の授業で本気を出したことはない。
「本気出していいのか?追いつけなくても知らねぇぞー。」
「本当に大丈夫だから。安心して。」
神沼の後に続いて僕も走る。
このスピードなら余裕で着いていけそうだ。
ただ、クラスメイト達は普段そこまで体育で活躍していない僕が、リレーに選ばれている神沼のスピードに僕が平然と着いていっていることに驚いているようだ。
僕達は一位でゴールする。
「夜瀬、はぁっ、お前なんで、はぁっ、そんなに平然と、はぁっ、してんの?」
「これくらいなら問題ないよ。それより神沼のほうこそ大丈夫?リレーまでには体力回復させときなよ。」
「言われなくてもするよ。まさか夜瀬がこんなに運動得意だと思ってなかったよ。」
「よく言われる。昔は全然勉強出来なかったし。運動だけが得意だったから。」
「夜瀬が勉強出来ないとか全く想像出来ないわ。というか、こんなに運動出来るなら体育もこれくらいやれよー。」
「本気で運動するのはそんなに好きじゃないんだけど。まあいいか。もう全員に知られちゃったしね。」
今走ってきたことで先生とクラスの全員に運動が出来ることは知られてしまったので手を抜いたらバレるだろうし。
僕達白組が一位でゴールしたので白組に点数が入る。
僅差で負けていたが、また少しだけ白組がリードした。
さっきからこういうのばかりだ。
紅組が抜いたり白組が抜き返したり。
勝負の行方は最後の最後まで分からなさそうだ。
この後は各学年の団体競技に入る。
団体競技は勝負ではないので、点数の変動は特にない。
僕の学年はフラッグを使う。
前で行う僕達は一際大きなフラッグをもつ。
大きいフラッグは重たいし動かしにくい。
安斎さんは、最初の方は重さで何度も転けそうになっていた。
それでも、練習するうちにその重さにも慣れてきて、フラッグを思うように動かすとこができるようになった。
それぞれの位置につき、準備が整うと音楽が流れ出す。
それに合わせて、僕たちはフラッグを振る。
僕たちの学年が終わった後、続けて他の学年も競技を披露していった。
残すは一番盛り上がる紅白対抗リレーと大玉転がしのみだ。
リレーには神沼や麗奈先輩が出るはずだ。
声をあげて応援するのは好きじゃないので、心の中で応援しておこう。
神沼は一年生の最後の走者であり、二年生の走者に繋がなければならなく、麗奈先輩はアンカーだ。
二人ともとても重要な役割である。
第一走者が位置につき、ピストルの音と同時に一斉に走り出す。
今のところ実力はほとんど互角だ。
第二走者になると白組が少しずつリードし始めた。
次の第三走者は神沼だ。
白組のリードで神沼にバトンが渡ると圧倒的なスピードでどんどん紅組との差を引き離していった。
それからも白組はリードし続け、ついにアンカーである麗奈先輩の番になった。
麗奈先輩がバトンを受け取ると同時に走り出す。
さすが、アンカーなので両者ともかなり速い。
だが、麗奈先輩がいつもの調子が出ていないような気がした。
麗奈先輩が走っているところを一度だけ見たことがあるが、そのときはもう少し速かった気がする。
僕の気のせいだろうか。
疑問に思いつつも、紅白対抗リレーは白組の勝利で終わった。
次は最後の種目である大玉転がしだ。
今のところ白組が勝っているが、点差はほとんどないため、勝敗はこの競技にかかっている。
しかし、僕は司会の担当が大玉転がしなので、参加しない。
みんなが位置に着こうと移動している間に、僕は急ぎ足で朝礼台の方へと向かう。
「お〜、来たきた。春哉くんもうすぐ始まっちゃうから早く準備して〜!」
「わかりました。」
マイクと台本を持ち、話し始める準備をする。
「最後の種目は大玉転がしです。紅組と白組でどちらが早く大玉をゴールまで持っていけるかを競います。全部で三回勝負し、勝ちの多かった方が勝利となります。それでは第一回戦よーい、スタートです!」
大玉転がしはかなりの人数で行うので、割と時間がある。その間は休憩だ。
しかし、休憩とはいえどちらが早くゴールに着くかはこちらで判断するので、あまり休めない。
そして、勝敗の判断は僕と麗奈先輩で行う。
一人ですると、見間違えることもあるので、それを防ぐためだ。
ただ、今回は二人で見る意味はあまりなかったようだ。
なぜなら、紅組が大幅にリードしていたからだ。
白組は途中で大玉の軌道がかなりずれてしまったようで、そこで一気に差をつけられたからだった。
やがて、紅組の圧勝で第一回戦は終わった。
「第一回戦は紅組の勝利です。続いて、第二回戦に移ります。それでは、よーい、スタートです!」
大玉は一周して同じ場所に戻ってくるので準備の必要がなく、次の試合がすぐに始まる。
「大玉転がしって意外と難しそうですね。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・麗奈先輩?」
暇だったので麗奈先輩に話しかけてみると、なぜか返事がない。
不思議に思って麗奈先輩の方を見ると、顔色があまり良くなく、息も少し荒かった。
「麗奈先輩。だいじょう・・・。」
僕が言い終わる前に麗奈先輩の体がぐらりと傾いた。
倒れるギリギリのところで麗奈先輩を支える。
「麗奈先輩、休んだ方が。」
「ダメ、入学式も始業式も休んじゃてて全然生徒会長として行事を行えてないからせめて今日だけは最後まで出たいの。終わったらちゃんと保健室に行くから、お願い!」
「・・・わかりました。でも、終わったら必ず保健室に行ってくださいよ。絶対ですからね!」
「そんなに念押ししなくてもわかってるって。」
そう言って弱々しく笑う麗奈先輩はいつもの元気で明るいイメージとはかけ離れていた。
いけない、そらそろしっかり見ておかないと見過ごしてしまう。
今回はかなりの接戦のようだ。
追い抜かしたり追い抜かれたりという感じだ。
ほんの少しの差で白組が先にゴールする。
「麗奈先輩、この試合は白組でいいですよね?」
「うん、大丈夫だと思う。」
一応、麗奈先輩にも確認しておく。
「第二回戦は白組の勝利です。それでは、最後の第三回戦を始めます。この試合の結果で勝敗が決まります。よーい、スタートです!」
麗奈先輩のことはずっと考えていてもしょうがないので一旦忘れることにした。
だが、体育祭が終わってある程度落ち着いてきたら保健室に様子を見にいこう。
後、田中先輩にも伝えておかないと。
一ヶ月に一回ほどのペースで体調を崩すということは相当体が弱いのだろう。
幼馴染の彼女なら、そのことについても良く知っているはずだ。
しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
今は勝敗を見極めることに集中しなければ。
大玉転がしはまたもや接戦だ。
しかし、白組の方が少しリードしているように見える。
その差は少しずつ開いていき、白組が勝利となった。
「第三回戦は白組の勝利です。よって、大玉転がしは白組の勝利となります。これから、最終結果発表に移ります。紅組、124点、白組、132点。よって、今年は白組の勝利となります。」
「ウワァーーーーーー‼︎」
白組の勝利が宣言された瞬間、あちらこちらで歓声が上がった。
「では最後に、校長先生、生徒会長からの挨拶で体育祭を終わります。ではまず、校長先生、お願いします。」
「えー、みなさん、体育祭はどうでしたか。みなさんは・・・」
校長先生の話になった途端、みんなのテンションが下がるのがわかった。
みんながみんな、早く校長先生の話が終わらないかと思っているようだ。
三分ほどの話があった後、次は麗奈先輩の話の番となった。
「次は生徒会長の挨拶です。生徒会長の矢神麗奈さん、お願いします。」
「みんなー!体育祭はどうだったかな?楽しかった?みんなが楽しめていたら嬉しいな!保護者の皆さんも今日はお越しいただきありがとうございました!」
前にたった麗奈先輩は笑顔だったけど、その笑顔は無理して作っているものだということがわかった。
でも僕はこの笑顔に見覚えがある。
そうだ、あの人だ。
麗奈先輩はもしかしたらあの人に似ているのかもしれない。
いけない、あの人のことは日常生活では思い出さないと決めたんだ。
早く忘れないと。
「以上持って、体育祭を終わります。保護者の皆さんは帰っていただいても、生徒を待っていただいても構いませんが、校舎には入らないでください。生徒の皆さんは速やかに教室に戻ってください。」
片付けは実行委員の仕事のはずだ。
僕はクラスのところへと戻る。
「やったな、夜瀬!俺たち白組の勝利だぜ‼︎」
戻るなり、神沼が声をかけてきた。
「そうだな。でも悪い、神沼。僕ちょっと行かなきゃ行けないとこあるからまた後で。先生には適当に言っといてくれ。」
「えちょ、どこいくんだよー。夜瀬ー?」
神沼がまだ何か言っていたが、そんなことを気にしている場合ではない。
早く田中先輩を探して保健室に行かなければ。
麗奈先輩は無事に保健室に行けているだろうか。
そんなことを考えながら二年生の待機所へと向かう。
田中先輩は・・・、いた!
「田中先輩、ちょっといいですか?」
「夜瀬さん?どうしたの?」
「麗奈先輩が体調悪いみたいで。保健室に行くようには言ったので一緒に行ってくれませんか?」
「麗奈が?だから朝もあれだけ体調悪くないか聞いたのに・・・。わかった、すぐ行く。」
その後田中先輩はクラスの人に断りを入れて僕のところに来てくれた。
「先輩、いきましょう。」
「わかった。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。
無言で、田中先輩と保健室へと続く廊下を歩く。
やがて、保健室が見えてきた。
田中先輩がガラリと音を立てて保健室のドアを開ける。
「麗奈、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫、ただの風邪だから。いつものことだし、休んだら良くなるよー。」
「麗奈先輩、本当に大丈夫ですか?」
「春哉くんも心配しすぎだって。私は大丈夫だから。」
「わかりました。クラスにも戻らないといけないので僕はもう帰ります。田中先輩、麗奈先輩のことはよろしくお願いします。麗奈先輩も、お大事に。」
その後クラスに戻り、担任の先生からの話などがあったが、麗奈先輩のことが気になって全く頭に入ってこなかった。
最後までご覧いただきありがとうございました!
次回もぜひ見てください‼︎