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No.8


僕はワクワクと同時に緊張感をもち、

僕がこの世界に来て気が付いた森の入り口に着いたのだった。


魔物は見かけたら基本的に討伐しても全然問題ないらしい。

けど、生態系を脅かすほどの虐殺をしなければ大丈夫だと、ギルドでも張り紙に書いてあった。


入り口につくと魔物を探すためにスキル使って近くを偵察することにした。

使うスキルは『ソウルバード』。

未知の領域だ。


ソウルバード。


だが、

心の中でソウルバードと言っても一向に変化がなかった。


カールが言った通り難しいようだ。

なにか起こる気配すらみせてくれない。

すこし不安だ。


もしかしたら唱えたら発動できるのかもしれない。

そう思って恥ずかしながらも言ってみたが、これまた空振り。

残念。


どうしたらいいか悩んでいると、鳥の鳴き声が聞こえた。

みると、タカが縛られるものがないかのように自由に空を羽ばたいていた。


そうだイメージだ。

ステータス画面もほとんどイメージしたものが出てきた。

スキルもそんな感じだろう。


こんどは心を落ち着かせ、なにを作りたいかをイメージする。

そして、唱えた。


「【魂王鳥(ソウルバード)】」


言葉に魔力がこもっているのがわかった。


体から黒い靄が出てくると、少しずつ形を取り始めた。

爪、翼、くちばし。すこしずつ体が作られていく。


現れたのはタカだ。

猛禽類のシャープな目つきでこちらを見つめてくる。

手に乗るぐらい小型で、雪のように真っ白な姿をしていた。


感動した。その一言だ。


感動でタカをみつめていると、急に肩に飛び乗ってきた。


ふわりとした柔らかい羽根が頬をくすぐる。ひんやりして気持ちよく、自然と笑みがこぼれた。


「名前、やっぱりつけたいなあ…」


いいよとでも言うように、ただ僕を見つけてきた。


かわいい。

手を伸ばせば、そこに飛び移る。

とっても可愛くて、本当にもふり甲斐がある。


「そうだ、リューイにしよ!リューイだよろしくね!」


スキルにより出てきた鳥だけど、名前をつけてみた。

リューイもなんとなく喜んで気がする。


「リューイ、偵察よろしく。頼りにしてるよ」


もう少しこの時間を楽しみたいが、今は危険な森だ。

どこから魔物がくるか想像できな状況で時間はかけれないと、心を鬼にするのだった。


しばらくすると、自分の頭の中に上空から見た景色が見え始めた。


空を飛んでいる!

と思ったが、これがソウルバードの能力なのだろう。

探索も進み、すぐに危険を察知することもできるだろう。

僕のリューイは実に優秀であるようだ。


この子は大きくなってくれるのかな?

成長したらこの子の背中に乗って空を旅してみたいな。

一度は空を飛んでみたいという夢が叶うかもしれない。

ほんとになんでもできそうだ。


遠くに目を向けると、広大な森の中に少し開けた場所があって、動物たちが距離をあけて草を食べているのが見えた。


やっぱりうちのリューイは優秀だ!

ほんとうに凄い。


そう褒めまくっていると、なんとなくリューイが喜んでいる気がした。僕もうれしいよ。


僕はとりあえずその開けた場所を目指して歩き始めるのだった。


ちなみに、スキルを使ってさいに、消費した魔力はなんとなくわかる。感覚的なものだ。

まだまだ魔力には余裕がある。


10分もしないうちに草花が咲き乱れる開けた場所に着いた。

周りを見渡すとウサギが何匹もいてのんびりとご飯を食べていた。


だがそのウサギは鋭く尖った小さな角を持っていて魔物だとわかった。

少し緊張を胸に、忍び足で彼らに近づいて行く。


ちょうど孤立した小さなウサギがいたので気づかれないようにそっと近づいて行く。


「【ブラックアウト】」


先手でウサギの視界を塞ぐ。


周りにはウサギたちに気づかれる心配がないと思うが、

念のためにスキルを使って丁寧に、焦らず仕留める。


兎の首へ剣を滑らす。小さな断末魔と共に命が消えていくのがわかった。


「重い…」


たった一振りである。だが、慣れない剣は重かった。

筋肉が痺れる。僕の細腕には長時間持ってはいられないようだった


剣で切った時の感覚がまだある中、魔力は半分近くまで減っているのがわかった。


「【黒箱(ブラックストレージ)】」


利き手とは反対に出てきた黒い靄の塊を倒したばかりのウサギにつけると、徐々にウサギを飲み込んでいき、目の前の靄と一緒に消えていった。


黒箱は魔力を消費しないみたいで、もともとの量が少ない僕としてはとてもありがたい。かなり便利なスキルだ。


精神的に疲れた僕はまた明日こようと、上空から来た道を探して、歩き始めてその時だった。


50メートル先から、カマキリが迫ってくるのに気づいた。

大きさは大体1メートル。怪物(バケモノ)だ。


凶悪。

その言葉が似合う大きな鎌を持つ巨虫だ。


慌てて後ろに大きく距離をとる。


その直後、さっきまで立っていた場所に大きく鎌が振り下ろされた。


周囲一帯の草が薙ぎ払われる。

草花が宙に舞い、幻想的な景色を作るが、今はそれどころじゃ無い。


大きな三角形の複眼がこちらを睨みつけて来る。


折りたたまれた鎌はいつでも獲物を捕らえられるように構えて、獲物をバリバリと食べる鋭く大きな顎が閉じたりしている。


長い体には6本の長くて力強い脚が生えてその大きな体を支えている。


冷や汗が止まらない。

鼓動は今まで以上に早くなり、緊張が剣が震えている。


魔力も残り少ない状態で好戦的なヤバそうな奴に勝負を挑まれてしまった。


そうだ逃げよう。今なら間に合うかもしれない。


全速力で走ればどうだ?

さっきのカマキリの速度じゃすぐに追いつかれておしまいだろう。

スキルを全力で使ってもすぐに追いつかれる。


ブラックアウトを使って逃げようとも思った。

が、あまりスピードのない球を打ち出してもよけられてしまうのが目に見えてる。


逃げるのは無理だ。


「じゃあやるしかないじゃん」


すぐさま仕掛けることにした。


「【魂弾(ソウルボルト)】」


豪速で半透明な球体が飛ぶ。

ブラックアウトとは違いものすごい速さであった。


カマキリはよける暇もなく命中する。

命中したことで体は大きく空へ向き、後ろへ倒れそうになる。


その隙を見逃さずに攻撃を仕掛けにいく。


両手で強く剣を握り締める。

下から上へ、渾身の力で、大きく斬り上げた。


「ギャラシャァ!」


だが、予想より硬く、相手は素早い。

惜しくも、前足を一本切り落とすだけだった。


倒すことは出来なかった。しかしそれは予想していた。

だが、倒すことはできなくても大ダメージを与えられる。

そう思っていた。


カマキリは不快な鳴き声をあげ、その場から距離を取った。


前足を失ったカマキリはこれまで以上に警戒をした。

しかし、逃げ出そうとはせずに、必ず獲物を仕留めるといった雰囲気を出して、お互い睨みあっていた。


先制攻撃で相手に前足を失わせる。


だが、こちらは魔力はほとんど残っていない。


さらに言えば、剣が重い。


かなりピンチだ。


次に仕掛けてきたのはカマキリのほうだ。

体が光り出し同時に意気よい良く飛び出してくる。


自慢の大きな鎌でヒュッと風を切る高い音を出す。


鎌を振り下ろし僕を捕まえようとしてくる。

が、

同時に後ろへ僕も下がるとギリギリのところで避ける。

しかし、完全には避けきれず、お腹の服が破れる。


魔物もスキルを使うことができるのか、明らかに動きが速くなっていた。


「......ッン!【魂交換(ソウルチェンジ)】!」


攻撃が止まる。


すぐにはまた攻めてこないだろうと思った僕は、近くに動けずにいたウサギに向かってスキルを使う。


半分以上まで魔力を回復させることができた。


ソウルチェンジを食らったウサギは「きゅい~」とおびえながら逃げていく。


「キャシャシャア!」


するとカマキリは1対1の途中だろー!と言うように怒った。


そして、さっきより勢いを増して攻めて来た。


「痛ッ!」


無数の攻撃が来る。徐々に服が破れ始めて、腕やお腹を出血してしまう。


痛みに顔をしかめる。それでも動き続けた。


どうしたものかと一生懸命よけ続けていた。

その時ブラックストレージにしまったウサギを思い出した。


奴は、強い。

そこらの昆虫とはあり得ないぐらいにデカく、知恵もある。

しかし、それが弱点だ。

脳も大きくなり、感情が芽生え、複眼のくせして目が悪くなった。

なら利用するしかない。


思い切りカマキリの顔に向かって投げつけた。


「キャシャァ!?」


カマキリはそれを反射的に捕まえる。


そして攻撃を止めてしまった。

カマキリは大きすぎる隙を作ってしまったのだ。


大きなチャンス。


カマキリはすぐにウサギを離した。

もちろんそんな隙を見逃すはずもなくどんどん攻める。


そして確実に倒すためにスキルを使うことにした。


剣を大きく振り上げる。


「【黒剣付与(ブラックオーラ)】!」


魔力が今までより消費したのが分かる。


禍々しい黒い(もや)が剣を包みこむ。

炎のように、バチバチと火の粉を飛ばす。


精一杯の力を入れて振り下ろした。


「はあぁぁあ!」


剣が何かを斬った感覚の後に、地面を叩きつけた。


顔を上げる。


「......!ギョエェ...]


僕は、カマキリの顔と体を真っ二つに斬っていた。


それでも僕を殺そうと鎌を伸ばしている。

それが最後のあがきだった。


フグの帽子を被った人を思い出させるような鳴き声で倒れる。


初めての討伐はギリギリのところで勝つことができた。



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