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No.4


「おつかれアニエス。今から飯を食べに行こうぜ。

 中央からは少し離れるが、肉料理がうまいとこを知ってるんだ」


 ギルドを出たところでカールに誘われた。

 カールもお腹が空いていたのだろう。待ってましたとばかりに、歩みが速くなった気がする。


 食に関してこの街は実に敏感だと思う。

 それは街に入っていた頃から感じていた。

 屋台からの香りと、人々の熱気は日本の祭りと似通った雰囲気。


 全く知らない土地で、こんな親近感を覚えることなんて想像をしなかったや。驚き。


 そして、向かった場所は宿が多く密集するエリアだった。

 それぞれ違った建物でも、看板には「宿屋」とわかる彫刻が彫られているからだ。


 その中でも一際目立つ、オレンジ色の宿屋の目に前に来て足を止めた。

 

「宿屋ですか」

「おう。ここらへん一帯は宿屋なんだが、泊まってる奴以外でも昼と夜は飲み食いできて、飯を食べるには最高の場所なんだ」


 中に入ってみると、大半が冒険者と思われる人たちで溢れかえっていた。

 陽気に肩を組んで歌を歌って、腕相撲で力比べをしている人も。


 あまりはしゃぐんじゃないよと、宿屋のおばさんらしき人に注意されても、またうるさくし始めるというとても賑やかな場所だった。


「ベリーの宿屋だ。ここは良い」


僕らは空いてる席に座った。

カールはここは日替わり定食がうまいぞと言い、僕もそれを一緒に食べることにした。


運ばれてきた料理はお肉やパンだった。

肉は優しくナイフを入れれば肉汁が溢れ出て、スパイシーな匂いが食欲をそそり、勢いよく食べる。


「…おいしい!」


だろ?とでも言うようにカールは笑った。

皿の上にある料理をみるみる平らげていく。美味しい。

でも、一体何の肉なんだろう。牛でも豚でも鳥でもない。


「これは何のお肉なんですかカールさん」

「猪だ。少し変わってる、普通の猪だ」

「美味しいんですね」

「ここで出す肉は、ミシン草という調味料で臭みと肉を柔らかくしてるらしい」

「カールさんも料理を?」

「いや、恥ずかしい事に料理はからっきし」


でも焼くことぐらいは流石にできると話した。


それと、今後泊まる宿について話してみた。

この宿は冒険者であれば泊まる際に証明書としてギルドカードを見せさえすれば少し安くなるというので、お金をあまり使えない時はここが絶対にいいとのことらしい。


だが、もしかしたら貴重品を盗まれてしまう可能性があり、気をつけた方がいいとも言っていた。


ここに来る途中見てきた宿は、高そうなところばかりだったしカールが言ったとおり、一時はここに泊まることにした。


それともう一つ。

僕はスキルについてカールに聞いてみることにした。


スキルはたくさんの種類があって今後冒険者必要なスキルもたくさんあるという。


武器をうまく扱うために補助などもしてくれる戦闘スキル。

一時的にステータスを上げてくれる身体強化スキル。

物理攻撃に魔力を乗せて特別な技を使える物理攻撃スキル。

魔力を消費して多彩な攻撃ができる魔法スキル。

攻撃や薬物、状態異常に対して耐性を付ける耐性スキル。

周囲や個人を状態異常にさせる状態異常スキル。


など数えきれないほどスキルがあるらしい。

多種多様なスキルがあり、組み合わせで同じ職業でも戦い方が人それぞれだと言う。


「アニエスは魔法を使えるのか?」

「どうなんでしょうか。わかりません」

「まぁ魔法が使えるほうが珍しいほうだ」


カールが言う珍しいとは。

魔法を習うことができる人間は限られてるということらしい。


魔法は誰かに教えてもらわなければ、

発動することすら困難である。

しかし、学校に通うか、家庭教師に教わるためには、

高額なお金を払う必要がある。

つまり、

裕福な家庭だけが習うことができるものだそうな。


そういった意味で珍しいということだ。


「知り合いの魔法使いにも少し変わった戦い方をしてるやつもいるぞ」


魔法を操る魔法使いは、基本的に味方の後ろで守られている。

だが、一部の魔法使いは先頭で戦う猛者がいるらしく、

味方を盾で守る騎士のように鋼の硬さを持つ魔法使いがいるそうだ。

戦闘の様子はまるでバッファローのようで、

敵陣に突撃して、そのまま壊滅させることもあったそうな。


この世界の魔法使いってそんな感じなのか。

魔法使い知的で、クールなイメージだったけど。ゲームの世界だけだったのかも。


すでにアニエスの中には、

魔法使いは厳ついおじさんのイメージが植え付けられた。


だが、そんなことができるのは世界に1人しかいないようで、

実際には魔法使いは杖を持って味方の後ろから援護をする役割であっていた。

この例えは流石にカールが悪い。


で、宿泊日数はとりあえず一週間。

宿泊料は安く、連続で一ヶ月以上泊まることができるが、

冒険者をやっていくんだ。

今はお金があったとしても、今後なにがあるか分からないのが冒険者という職業である。お金は大切に使っていきたいのだ。


「じゃ、俺はここまでだ」


その後、カールと僕は解散した。


なにやらカールはギルドに行かなといけないらしい。

森に異変が起きているから、最近はなにかとバタバタしているらしい。


「またなにか困った時は俺を頼るといい、毎日この時間帯にギルドにいるかならな。別にようは無くても声はかけてくれよ、いつでも助けてやるぜ」


と、カールは言ってくれた。


出会ったのが本当に今日なのか、信じられないぐらい助けてもらった。

いつでも頼っていいと言ってくれもしたし、

これからもカールには助けられるだろ。


「けど、いつまで頼れはしないな」


いつかはこの街を離れる予定だ。

それまでに、この世界で生きていくためにも、

最低限、いや、それ以上のことができる、知識をつけなければならなければならないだろう。





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