No.3:冒険者ギルド2
「こんにちは、冒険者ギルドに登録をしに来たのですが」
真ん中の受付に並ぶと、自分の番はすぐに回ってきた。
「こんにちは、ようこそネビアン冒険者ギルドへ。
私はこの受付を担当している、リアよ。よろしくね」
リアさんは青色の髪を腰まで伸ばしているとても綺麗な女性だった。
服装は青色を基調としたギルドの制服を着こなしており、優しい雰囲気を出す人だ。
「アニエスです、よろしくお願いしますリアさん」
「リアさん、ね…なんかいいわね。アニエスちゃんだけ特別よ。じゃあ待っててね」
「え、えぇはい。…わかりました」
よくわからないけれど、たぶん好印象。
僕だけ特別っていわれるのは純粋に嬉しい。
「お待たせ〜」
そういうと、リアさんは奥から筆箱ぐらいの白い箱を持ってきた。
リアさんは優しく微笑みを浮かべると、テキパキと話し始める。
「まずは、カードに自分の魔力を登録するわ」
魔力?
「純魔石に手を乗せてね。そのままでいいわ、魔力は勝手に吸い取ってくれる」
言われたとおり、魔法陣らしきものが書かれた純魔石?に手をかざす。
「……!」
そのとき感じた。身体を駆け巡るような感覚。
足から手へ。まるで流れる血液を操っている。
これが。
「魔力……!」
➖ ー ➖ ー ➖ ー ➖ ー ➖
「アニエスちゃん?」
「……はい」
僕は純魔石から手を離した。
昂る余韻に若干だとは思うが、少なくともリアの声が届かないほど、上の空ではだった。
「ふっふっふっふ!
アニエスちゃんは適正があるのね。きっと」
次に職業を選べるそうだ。
メリットはシンプル。
職業を選択することによってステータスに補正を受けることができる。それによって、成長速度、適正も変わっていく。
して、適正範囲なら職業は自由に決めることができる。
「適正範囲?」
「そ。誰しも得意不得意があるでしょ?」
「うん。でも、すこし残酷に感じる」
「それは人によるよ。アニエスちゃん」
「?」
リアさんはカウンターに前のめりなって僕をのぞいてくる。
その表情は、幼い子供を相手にする優しい笑顔だった。
「ヒトは誰しも才能がある。わたしはそう思ってる。
けど、一生かかってもその才能を開花させれずにいる。
そんな人を大勢見てきた」
「だから人によるかな?」
「……確かにそうかもしれません」
沢山の冒険者を送り出したリアさん。
その中にきっといたのかもしれない。リアさんの言葉に僕は共感した。
「…ちなみにリアさんは、どんなだったり?」
「わたしぃ?わたしはぁ……」
一息ためた後、真剣な表情をしたリアは。
こう放った。
「農家さんだって。おもしろいでしょ?」
似合わない……。
ほんとに似合わない。
似合わなすぎて…、もう。
「っくっくっく……。お腹痛いぃい」
「笑いすぎよ?でも。ようやく笑った。ふっふっふっ」
こっちにきて、ようやく緊張が解けたのがわかった。
リアさんのこの雰囲気が、今にも大好きになってしまう。
そんな気もした。
「たとえ適正は農家でもね。
努力の方向によっちゃ、ギルドで受付嬢に成れる。
アニエスちゃんには、そう教えたかったのよ」
がんばれと。そうリアさんはエールをくれた。
同じ同性なのに、ほんとうにカッコいいと思う。
「はい、勉強になります。
リアさんは頑張り屋さんだったんですね」
「そぉよ!もっと褒めたらさらに頑張っちゃうわ!」
「もちろん。すでにいっぱい頑張ってますよ」
リアさんはかっこいいけど。
やっぱりかわいい。
「はいどうぞ!これがアニエスちゃんのギルドカードよ」
こうして、僕らはギルドを出た。
この世界でようやく馴染めそうな人と出会えた。
カールに出会えて、リアさんに出会えて。
本当に良かったと感じられた。