No.15
「今がチャンスだ!足が折れているやつを集中的に狙え!」
ローグがチャンスだと味方を鼓舞する。
ウォー!と雄たけびが上がり各地で魔法やスキルが多く飛び交い始め、戦闘は熾烈さを極めていった。
だが、着実にネピアン側が押し上げ始めてはいた。
それでもマンティスはまだ50体ぐらいが生き残っており、本陣はまだ無傷だ。
すぐではなくても進行速度が下がっていくのは、確実だった。
そのときだ。
「たぁぁ!」
勢いを弱めていくネピアン側の中から、ひとりの少女が出てきた。
「なっ!」
「アニエスっ!」
攻撃が飛んでくると、鎌をいなし、怯みはせず。カウンターを狙って倒していく。
アニエスの快進撃がはじまった。
全方位から、マンティスの連携攻撃。
マンティスの下へ潜りこみ、盾を作り、回避しながら、ひたすらに斬り進む。
だが、しだいに味方の陣をアニエスは飛び出しはじめていた。
味方から切り離されていることすら気付かず、ゆっくりと敵陣の奥深くへと斬り込みに行く。
その時、急激に体温が燃えるように上昇し始めていた。
既に心臓の鼓動は破裂するかのように大きく、平常時なら異変を感じれるはずだった。
だが、それでも。気付かない。
危険信号と気づかず、ひたすらに戦いつづけた。
そして、残り数体のボスであるマンティスだけになった。
その中でも一際存在感を放つ黄金色の小柄なマンティスだ。
安全な後方より、風の魔法をちょこちょこと撃ち込んできていている。
長時間の連戦に味方全体が疲労でくたくたになっていた。
そこに追撃する、アイツは厄介だ。
きっとあのマンティスがこの群れのボス、または指揮官のような存在なのだろう。
そして、できることなら奴から先に倒したい。魔法を使えるというのも中々厄介なものだが、それともう一つ理由がある。
「取り巻きの連携がやっかい」
ボスマンティスを守るようにして、固い鎧を持つ騎士のようなマンティスがいるのだ。
奴は、マンティスウォーリア。
全身を鉄のような固そうな殻?たぶん外骨格のようなものを持っており、そして、その大きくて重い体を支えるために脚の筋肉が太く発達していた。
近づいていくと僕の方へ体を向けて大きく鎌を上げて威嚇する。
「【魂弾】」
ここまで来たら全力をだそうと決め、本気でソウルボルトを撃つ。
だがノックバック、衝撃を無効化して、何事も無かったかのように平然と立っていた。
「グヴォォォォオ!」
わずらわしいとでも言うように、耳を塞いでしまほど大声でマンティスけたたましく鳴いた。
直後、通常より大きな鎌をブゥンと音を立てながら横へ薙ぎ払う。マンティスごと巻き込みながら。
「ふ、は、迫力があるね…!」
後ろへ飛び退き、距離を取った。
速度は遅く、余裕を持って避ける。
しかし、予想以上に鎌のリーチが長かった。顔のすれすれの位置を通過していき思わず冷や汗をかく。
見た目どおり、鎧のような身体には攻撃があまり入らない。
そこらのマンティスを一撃で倒せる威力。
速度は遅く、余裕を持って避けることが出来た。
だが予想以上に鎌が長いので顔のすれすれの位置を通過していき冷や汗をかく。
二度目の攻撃が来た。
反対の鎌で同じ横薙ぎが飛んできて命を刈り取ろうとする。
全く同じ攻撃。しかし、アニエスは動きを変えた。
今度は逆に前へでて大きくジャンプをした。
迫りくる鎌を踏み台に、更に空高く飛ぶ。
「【視界遮断】」
避けられないようスキルで敵の視界を奪う。
暴れるマンティスウォーリアへ剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣は奴の目を片方斬り落とす。
アニエスは素早く背後へ回った。
マンティスウォーリアのガラ空きの背中に張り付き、剣を振り下ろす。
この時、僕の目は真っ赤に染まっていた。
力もより増幅し、俊敏性も上がって。
体が猛烈に熱くなるのを感じながら、がむしゃらに剣を振り続た。
だが、冷静さもある。
敵の背後へ回った時に戦場を確認する。一瞬、横目に。
だが、その一瞬で周囲の状況を把握した。
長時間の連戦に味方全体が疲労でくたくた。
膝をつく者、血を流し戦う者。
冒険者は重症者は少なくなく、それでもなお、武器を持ちマンティスを倒そうとしていた。
それに、自身の心の火がこれまで以上に燃えた。
「グヴァァア!」
無意識のうちに残像を残すほどの動きで剣を振るう。
その剣は、大胆で、大雑把。
だが、恐ろしく鋭い。
まるで紙を斬るように。
頑丈な奴の鎧をいとも簡単に切り刻んだ。
奴を、トリッキー動きで翻弄し、一方的に斬りつける姿は恐ろしく思えたろう。マンティスウォーリアの瞳は、震えて見えた。
だが、僕は容赦はしない。
地面に立つ。荒い呼吸を沈ませた。
そしてスキルを使う。
「【闇王化】」
光ですら吞み込んでしまうほど禍々しく、初めて使った時よりも異常な威圧感を与える剣。
目は鋭く光らせ、柄を強く握り剣は大きく構える。
奴も、凶悪な鮮血を浸らせた鎌に、
強く踏み固められた土へより一層深く脚を沈ませた。
僕は剣を振るった。
奴のガラ空きになった胴へ、真っ直ぐに吸い込ませる。
瞬間。空に剣の反射だけが残った。
風を起こす軽い衝撃に、砂埃を足元に作る。
奴を斬り倒した。
「……」
スキルの効果は消えていた。けれど、剣には大きく亀裂をつけ、蟲の体液が冷たい刃に色を与えた。
「ふんっ」
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短い沈黙の後、マンティスウォーリアの下半身がドスンと地面へ沈ませた。
他のマンティスを倒そうと目を向けるが、すでに最後のボスマンティス以外は地に伏せていた。
「おらぁぁ!」
ローグが物凄い勢いで、黄金色のマンティスに走り、バァンと固いものを殴るような音がしたと思うと、僕のほうに飛んできた。
すぐさま横に飛んだが、別に避ける必要も無く通り過ぎた。
しかし、拳一発か。
強いな。
ローグの強さに引いていると、急に力が抜けてガクッと膝から崩れてしまった。
「おい!大丈夫かアニエス!」
ローグがいきなり倒れた僕に驚いて急いで駆け寄ってきた。
戦闘時の興奮が冷めきってないのか、気分が悪いということは感じられなかった。
疲労だろう。
自然と目が閉じていきローグの大きな腕を枕にゆっくりと、意識が遠ざかった。




